第十章 デート
全員身内だし、わざわざ時間を指定する必要もないだろう。それに、ここの連中は遠慮なしでテキパキ物事を進めるのが好きみたいだ。俺の格好は確かに地味だが、散歩くらいなら問題ない。
セフィーナは昨日の夜に俺の部屋に来た時と同じ格好だった。シャツに短めのスカート、それにソックス。
ファリンは見送りながら何度も俺にウインクしてきて、俺は平静を装うのに必死だった。もちろん、彼女がいたことはあるが、本当に真剣な関係には至らなかったから、親御さんとのやり取りには少し慣れていないんだ。
まあ、センターから出られただけでも良しとしよう。問題は、ここでどこに行くかだ。すれ違う人全員が興味津々の視線を投げかけてくるところを見ると、落ち着いて過ごせそうにない。ほら、また!フェブリモールは訓練中のはずなのに、わざわざサムズアップのサインを送ってきやがった。
いい歳した大人のくせに!
よし。川辺はアンネリがいるかもしれないし、それは確実に台無しだ。岩場は何もすることがないし、丘に行けば彼女が疲れる。食肉処理場方面なんてもってのほかだ。となると森しかないが、そこでも猟師や木こりに出くわす可能性はある。
でも、それくらいなら大したことない。俺は彼女の手をそっと取って、柵の門へと向かった。
外に出ると、少女は少し落ち着いて俺に寄り添ってきた。
「ニコ、タメ口でいい?」
「もちろん、聞かなくてもよかったのに」
セフィーナは何も答えなかったが、ぴくりと動いた耳が彼女の気持ちを物語っていた。
俺たちは森に入った。心地よい涼しさ、葉に遮られた柔らかな光、どこかの鳥の鳴き声。そう遠くないところから聞こえる斧の音さえ気にしなければ、なかなか快適な場所だった。
少女がもじもじし始めた。どうやら何か聞きたいことがあるらしい。言葉を選んでから、彼女は小さな声で言った。
「ねえ、ニコ、あなたの世界のこと教えて。どんなところなの?」
「そうだな、外見的にはテクガンの世界とよく似てる。少なくとも武器や技術はね。戦争もよくある。しかも相手が強かろうが弱かろうがお構いなしだ。まあ、一番の違いは――俺たちはいつも時間を引き延ばすってことかな」
「時間稼ぎをしてる? どういうこと?」
「何かをしようと決める前に長く考えるの。それから、やったとしても、正しくやったかどうかをまた長く考える。もちろん、みんながそう思ってるわけじゃないけど、あなたたちには全く当てはまらないような気がする」
「ああ、そうだと思う。なあ、お前たちはみんなお前みたいなのか?」
「それって褒め言葉として受け取っていいのかな? 俺みたいなのがたくさんいるのを見たいって思う?」俺は楽しそうに言って、少女にウィンクした。
「あ、違う、そういう意味じゃなくて! あなたはいい人よ」少女は顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。「エルフとかドワーフとか、その、私みたいな人がいるのかなって知りたかったの」
そう言い終えると、少女は立ち止まり、手を離して、俺を見上げた。俺にとって異質すぎる存在に見えてしまうんじゃないかって心配してるのか? とはいえ、こういうのを評価するのは難しいな。
「正直に言うと、エルフもドワーフも俺たちのところじゃおとぎ話や創作の中にしかいない。残念ながら、お前みたいなのもな」
少女の耳がピクリと動いた。
――残念かって?
俺はニヤリと笑って続けた。
「実はな、俺たちの世界には獣耳娘の崇拝みたいなもんがあるんだ。どころか、そういう架空の女の子を抱き枕に描いて、それを抱いて寝る奴までいるんだぜ」
彼女は驚いて小さく息を呑み、可愛らしく口元を手で覆った。そして、おずおずと尋ねてきた。
「そ、その……ニコも、その崇拝に入ってるの?」
「ああ、俺は獣耳娘は可愛くて素晴らしいと思ってるよ。だから、本物の猫娘に、しかもこんなに美人な子に会えたなんて、俺は幸運者だな」
彼女は視線を地面に落とし、耳をぴくぴくと動かした。
「なあ、セフィーナ。ひとつ気になってることがあるんだけど、個人的すぎたらすまん。俺たちの世界じゃ、猫娘はニャーとか鳴いたり、語尾ににゃをつけたりするって描かれることが多いんだが、お前からはまだ一度もそういうの聞いたことないんだよな。君たちにはそういう習性はないのか?」
少女の目が驚きで見開かれた。唇を噛みしめたが、そして突然――
「にゃあ」
なんて可愛い声なんだ。思わず心が揺れた。
「ニコ、気に入った?ただ、ずっと父さんとしかいなかったから、すっかり慣れちゃって」
「ああ、すごくいいよ。でも、慣れてるなら無理にとは言わない」
「いいの、にゃ!気遣ってくれてありがとう!」少女は温かく微笑んで、また俺の手を掴んだ。
だが、何かを思い出したように、再び距離を取った。
「ねえ、ってことは、あなた、今まで触ったことないの……」
「えっと、触ってないって何を?」念のため俺は聞いてみた。彼女は恥ずかしそうに見えたので、何の話をしているのか俺も戸惑ってしまった。
セフィーナは指で耳を指し示した。
「ああ、うん、触ってないよ、もちろん」
「じゃあお願い! にゃ!」少女は決然と言って、頭を傾けて目を閉じた。
俺は近づいて、慎重に彼女の頭に手を置き、まずは髪を撫でてみた。セフィーナは最初少しびくっとしたが、すぐに落ち着いた。
彼女の美しい絹のような髪を撫でてから、俺は慎重に耳に触れた。おお、柔らかくてふわふわだ。そして温かい。確かに猫の耳に似ているが、触った後に耳の持ち主が顔を赤らめてスカートの端を恥ずかしそうにいじり始めると、全く違う感覚だった。
「にゃ……あなたが撫でてくれると、すごく安心するの。たぶん、お父さんとここに来てから初めてだわ」
感情が高ぶったセフィーナは俺に抱きついてきて、尻尾を揺らしていた。俺に何ができる? もちろん、また撫でるしかないだろう。
「ニコ、気のせいかな、それとも……引き締まった?」彼女は俺の服の上から筋肉を触りながら言った。
「ああ、まあな」
「んー、すっごくいい」
セフィーナは俺の胸に顔を埋め、ぎゅっと抱きついてきた。かなり変わったデートだよな、正直。俺は背が高い分、彼女の頭越しに尻尾の動きを観察していた。そしてついにタイミングを見計らって、それを掴んだ。
「にゃあっ!」セフィーナが怯えたように叫び、尻尾を見ようと振り返った。「ああ、ニコか。その……いきなり掴まないでくれる? すごく敏感なの」
「敏感? どういう意味で?」
俺は尻尾を軽く握り、手の中で少し揉んでみた。唇を噛んで顔を赤らめる彼女の反応を見る限り、どうやら気持ちいいらしい。
「ニコ、お願い、誰かに見られちゃう!」
つまり、人前で尻尾に触るのは失礼なことなのか? 面白いな、まあどこの種族にも独自の礼儀作法ってもんがある。
「わかった、わかった、心配するな」
俺は彼女を放してやると、セフィーナはほっと息をつき、念のためか尻尾の先端を手に取って、無事かどうか確かめるような仕草を見せた。俺たちはゆっくりと歩き出した。
「悪い、また失礼な質問かもしれないんだが、結婚式ってどんな感じでやるんだ?」
セフィーナは得意げな顔つきで、まるでガイドになったつもりみたいだったが、勝ち誇ったような笑みを抑えきれなかった。
「簡単よ、新郎新婦が指輪を交換して、長老のところで記録してもらって、キスしていいの。それだけ! あとはお客さんを呼んでお祝いの食卓を用意すればいいのよ」
ああ、似たようなもんか。俺は無意識に何か野蛮な儀式でも期待してたんだな。
「ほら、料理なら私が作れるし、指輪はパパが用意してくれたし、あとは誰を呼ぶか……」
確かに、セフィーナは自分の結婚式のことまで考えて、夢中になっていたんだ。かわいいやつだ。
楽しい妄想から俺を引き戻したのは、シューシューという音だった。俺は彼女の肩に触れた。セフィーナは耳をレーダーみたいにピクピク動かした。
「聞こえるか?」
「ええ」
俺は指輪を回して、再び鎧を纏った。剣を抜き、盾を腕に装着して、シューシューという音の発生源を探した。すぐに見つかった。
森の奥、数十メートル先の茂みの中に、白い染みがかすかに見えた。よく見ると、それはうごめいている繭だった。上部が破れて、蜘蛛の糸の下から子蜘蛛たちが這い出してきた。いや、子蜘蛛じゃない――でかい犬くらいの大きさがある蜘蛛の化け物どもだ。
やつらが俺たちを包囲し始めていることに気づいて、俺はすぐに膝をついてセフィーナに指示した。「乗れ」。セフィーナの名誉のために言っておくが、彼女は慌てず、すぐに俺の肩に飛び乗って、脚でしっかりとしがみついた。
最初の一匹が飛びかかってきたが、それほど高く跳べなかったので、俺は飛んでくるやつを剣で簡単に斬り裂いた。悲鳴を上げて蜘蛛は弾け、血のようなものを四方八方に撒き散らした。さらに二匹が仲間の真似をして俺に飛びかかってきた。盾で身を守りながら、俺は次々とやつらを弾き飛ばした。
残りの三匹は普通に襲いかかってきた。毒牙を俺の脚に突き立てようとしたが、そこにあったのは鎧の金属だけ。逆にラッキーだった。俺にしがみついて動けなくなった蜘蛛どもは、一振りで片付けた。
だが、こいつらは俺が最初に思っていたよりも賢かったらしい。缶詰には歯が立たないと悟ったのか、一部の蜘蛛が木に登り始め、そこから上空へ飛び跳ねて、無防備なセフィーナを狙ってきた。
盾を掲げて、俺は少しずつ後退し始めた。下から近づいてくる奴がいれば剣を振り回す。もう全部に目を配るのは無理だった。
小さな空き地に出ると、上からの襲撃を心配せずに、個々の奴らに集中できるようになった。さらに数十回剣を振るって――小さな化け物どもの群れは途絶えた。
荒い息をつきながら、もう一度周囲を見回し、安全を確認してから、怯えた少女を地面に降ろした。
指輪を解除すると、また服を着た姿に戻り、少女は再び俺に駆け寄って胸に顔を埋めた。
「ニコ、すごく怖かった……」
「ああ、大丈夫だ。何があっても、お前を守るから」
「いや、あなたのことが心配だったの!」
なるほど、そういうことか。
「ありがとう、セフィーナ。なあ、もう家に帰ろうか?」
「うん、帰ろう!」
基地の近くまで戻ってきたところで、俺はやっぱり丘に行ってみることにした。麓まで歩いて行くと、セフィーナを腕に抱え上げて登り始めた。まあ、以前の俺ならこんな真似は無理だっただろうが、金貨数百枚で筋肉を鍛えられるんだから、やらない手はないだろう?
頂上まで駆け上がると、セフィーナを地面に降ろした。ここからは村も、何キロにもわたって広がる速い流れの川も、謎に満ちた森も、素晴らしい眺めが一望できた。
この景色に圧倒された彼女は、目を見開いて辺りを見回していた。まあ、ずっと鳥籠の中の鳥みたいに閉じ込められていたんだから、こんな景色を見る機会なんてなかっただろう。
それにしても、何なんだこの世界は。やっぱり俺には馴染めない感じがする。確かに彼女はあらゆる意味で可愛いけど、この短い付き合いで好きになれるわけがない。まあ、そんなこと誰も気にしないだろうし、何より「アルヴァーの自己犠牲」が何を秘めているのか知る必要がある。そのためには条件を満たさなきゃならないんだ。
少女の両手を取り、その青い瞳を見つめて、俺は静かに、だが確信を込めて言った。
「セフィーナ、俺の妻になってくれるか?」
固まった少女は数回瞬きをして、それから耳がぴくぴくと震え、微笑みながら温かく言った。
「はい」




