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悪女と謳われる王女は、国を滅ぼそうとした暗殺王子の愛に気づかない  作者: 凪塩 未来


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第8話:開かれた回廊と、星空の下の誓い

第8話をお読みいただきありがとうございます!


今回は、静かな夜のテラスを舞台に、モナミが抱いていた小さな不安と、それをミカエルがどこまでもまっすぐな愛で完全に払拭する甘いロマンチック回です。ついに互いの想いが深く通じ合い、最強の絆で結ばれた二人ですが、そんな平穏を一瞬で切り裂く不穏な影が忍び寄り……?星空の下の誓いと、その直後に訪れる最大の試練の幕開けをぜひお楽しみください!

ロンファ王国の王宮、その夜の回廊は、静まり返り、月光が大きな窓から白く差し込んでいた。

昼間の騒動――ミカエルが暗殺者を引き連れて女生徒たちを追い払った一件は、瞬く間に城中の噂になっていた。「あの冷酷な悪女モナミが、敵国の王子にすっかり守られている」と、貴族たちの間でも驚きと戸惑いの声が上がっている。


そんな喧騒を離れ、モナミ・ロンファは誰にも邪魔されない夜のテラスへと足を向けていた。

夜風が純白のドレスの裾を優しく揺らす。手すりに寄りかかり、遠くの夜空を見上げるモナミの表情には、いつもの冷徹な「悪女」の仮面はなく、どこか切なさと穏やかさが入り混じっていた。


(私を囲む世界は、いつだって疑心と嫉妬に満ちていた。誰もが私を恐れ、利用しようとするばかりだったのに……)


ミカエルと出会ってからの日日を思い返し、モナミは小さく息を吐いた。彼の型破りな優しさと、自分の孤独をすべて受け止めてくれる強さに、彼女の心は完全に絆されてしまっている。


「ここで一人、何を黄昏ているのかな、愛しい悪女殿」


背後から掛けられた低い、しかしどこか甘い声に、モナミはビクリと肩を震わせて振り返った。

そこには、いつもの漆黒の装いをまとったミカエルが、月明かりを背にして立っていた。相変わらず神出鬼没な男だと呆れながらも、モナミはふっと綺麗な笑みを浮かべた。


「……また勝手に忍び込んできたのね。ここはあなたの国ではないのよ、ミカエル殿。もう少し王族としての警戒心を覚えなさいな」


「君のところへ来るのに、城の警戒心など意味をなさないさ。それに、君の姿が見えたからには、他の場所に行けるわけがないだろう」


ミカエルはふっと柔らかく微笑むと、モナミの隣へと歩み寄り、同じように手すりに手をついて夜空を見上げた。二人の距離は、触れ合ってしまいそうなほどに近い。夜の静寂と、肌を撫でる冷たい風が、妙に心地よかった。


「ねえ、ミカエル……」

モナミは静かに口を開いた。

「本当に、私と婚約して後悔しない? 周囲の人間はみんな私を『悪女』だと罵り、あなたの国でもこの縁談に反対している者が大勢いるわ。私と手を取り合うことは、あなたにとって茨の道を歩むことよ?」


モナミの瞳には、ほんの微かな不安の色が宿っていた。どれほど強がり、毒舌を吐いてみても、彼女もまた一人の女性であり、愛する人に迷惑をかけてしまうのではないかという恐れを抱いていたのだ。


そのモナミの横顔を見つめたミカエルは、ふっと息を漏らすと、迷いのない手つきで彼女の細い指をそっと包み込んだ。


「後悔など、するわけがないだろう」


ミカエルの声は静かだったが、その中に込められた決意は鋼のように強かった。

「僕が愛したのは、世間が作り上げた『悪女』の仮面を着けた君じゃない。その仮面の下で、たった一人で傷つきながらも、国を、民を守ろうともがき続けていた君の強さと優しさだ。茨の道だろうと何だろうと構わない。君の隣に立てるなら、僕はどんな敵にも、どんな運命にも背を向けてみせる」


まっすぐに見つめてくる琥珀色の瞳には、嘘や偽りなど微塵もなく、ただ純粋なまでの深い愛と執着だけが満ちていた。

モナミはその熱に当てられたように息を呑み、そして、人生で初めて、心の底から救われたような気がした。


「……本当に、あなたという人は……反則だわ」


モナミはこぼれ落ちる笑みを隠すように、そっとミカエルの胸元に顔をうずめた。

「あなたがそこまで言うなら……最後まで私に付き合ってもらうわよ。たとえ二つの国が敵に回ろうとも、私があなたを絶対に離してあげないから」


「あぁ、喜んで。の一生、君のその毒舌の独占を許そう」


満天の星空の下、悪女と暗殺王子は互いの温もりを確かめ合うように、深く抱きしめ合った。

しかし、そんな甘い夜の静寂を切り裂くかのように、王宮の回廊の遠くから、慌ただしい足音と伝令の叫び声が響き渡る――。


「一大事でございます! ラザード王国軍の強硬派が、国境付近で不穏な動きを見せているとの急報が……!」


二人の平穏な時間に、いよいよ最大の試練の影が忍び寄り始めていた。

第8話「開かれた回廊と、星空の下の誓い」いかがでしたでしょうか?


いつもは強気で毒舌を吐いているモナミが、ミカエルの前でだけ見せるふとした弱音と、それに対するミカエルの「茨の道でも構わない」という重めの愛の告白が、執筆していてとてもお気に入りのシーンです。お互いの存在が唯一無二の救いになっている二人の関係性が、ようやく完全に噛み合いました。


しかし、甘い余韻も束の間、物語はいよいよ第1部のクライマックスとなる大きな政治的・軍事的衝突へと突入していきます。強硬派の動きに対して、悪女と暗殺王子がどう立ち向かうのか――?波乱の展開が続く第9話も、ぜひ楽しみにお待ちください!

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