第7話:忍び寄る影と、不器用な庇護
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今回は、モナミに長年嫉妬を向けていた女生徒たちがついに直接的な嫌がらせに踏み切るも、そこに過保護すぎるミカエルが暗殺者を引き連れて颯爽と(文字通り大げさに)現れるドタバタ溺愛回です。モナミのツンデレ具合と、ミカエルの重すぎる愛のギャップをぜひお楽しみください!
ロンファ王国の王立学園、その放課後の静まり返った中庭通路。
モナミ・ロンファが一人で歩いていると、前方の角から、どこか険しい表情をした数人の女生徒たちが現れた。それは、以前からモナミに対して激しい嫉妬と敵意を燃やしていた侯爵家の令嬢グループだった。
「ちょっと、モナミ様。あなた、隣国のミカエル殿下にあんな大々的な公開プロポーズをされて、自分がそんなに特別な存在だと思っているの?」
グループのリーダー格である女生徒が、悔し涙を堪えるような歪んだ笑みを浮かべながら一歩踏み出してきた。周囲の女生徒たちも、冷ややかな視線をモナミに向けている。
「私たちはずっと見ていたわ。あなたが冷酷な『悪女』の仮面を被って、周囲の男性たちを惑わせている姿を。そんな女が、他国の王子様の心を奪うなんて絶対に許せない。今日という今日は、あなたのその高慢な態度を少しは反省してもらうわ!」
女生徒の手には、いたずら目的か、あるいは嫌がらせ用の染料が入った小瓶が握られていた。モナミほどの洞察力があれば、彼女たちを言葉だけで完膚なきまでに論破し、その場で泣き崩れさせることなど容易い。
モナミは冷徹な笑みを浮かべ、いつもの毒舌を放とうと息を吸い込んだ。
――その時だった。
「そこまでだ」
低く、しかし圧倒的な殺気を孕んだ声が、通路の影から響き渡った。
空間の温度が数度下がったかのような錯覚を覚える中、漆黒の外套をまとった一人の男が、音もなくモナミの前に立ちはだかった。ミカエルその人だった。
「ミ、ミカエル殿下……!?」
女生徒たちは、目の前に現れた敵国の第一王子であり、恐るべき暗殺組織の首領の姿に、恐怖で足腰をガクガクと震わせた。息を呑む暇もなく、ミカエルは冷酷な琥珀色の瞳で彼女たちを見据えた。
「僕の最愛の女性に向かって、その汚い手で何をしようとしていた? 君たちのその愚かな嫉妬心とやらは、我が国の秘密組織『レギド』の刃にかけられても文句の言えないものと理解しているようだな」
ミカエルがわずかに指を動かすと、通路の天井裏や植え込みの陰から、黒装束をまとった数名の影が音もなく姿を現した。暗殺者たちの殺気が一斉に女生徒たちに向けられる。
「ひっ……! ご、ごめんなさい……! もう二度と近づきません……!」
女生徒たちは恐怖のあまり悲鳴を上げ、小瓶を放り出すと、蜘蛛の子を散らすようにその場から泣き逃げていった。
静けさが戻った通路で、ミカエルはさっと表情を和らげ、振り返ってモナミを見た。
「大丈夫かい、モナミ? 虫けらどもが君に不愉快な思いをさせていないか、今すぐ全員の家を徹底的に調査させて潰そうか?」
その過保護すぎる発言と、あからさまな溺愛ぶりに、モナミは呆れたように大きく息を吐き出した。
「……バカなの? あんな小娘たちの嫌がらせなんて、私の毒舌三言で十分返り討ちにできたわよ。わざわざあなたの組織の暗殺者たちを表舞台に引っ張り出して、どうするつもりよ」
口では呆れながらも、モナミの胸のうちは温かな甘さで満たされていた。
これまで誰も自分を守ってくれなかった。周囲の人間は恐れるか、陰口を叩くか、あるいは利用しようとするだけで、自分のためにここまで本気で怒ってくれる人間などいなかったからだ。
「君が一人で戦っているのは知っているが、僕がそばにいるときは、無理をして牙を剥く必要はないんだよ」
ミカエルは優しく微笑み、モナミの頭をそっと撫でた。
その温もりに触れた瞬間、モナミは恥ずかしさをごまかすように、そっと顔を背けながらも、その手を拒むことはしなかった。
「……勝手なことばかり言って。でも……まあ、少しだけ感謝してあげてもいいわよ」
悪女と謳われた王女と、暗殺王子の不器用で甘い距離感は、周囲のざわめきをよそに、ますます深まっていくのだった。
第7話「忍び寄る影と、不器用な庇護」いかがでしたでしょうか?
モナミなら言葉だけで相手を論破できたはずなのに、それを一歩手前でミカエルがガッツリ(しかも暗殺組織を動かす大げさな規模で)守ってしまうという、少しコミカルで甘々な展開を描いてみました。自分のために本気で怒ってくれる存在ができたことで、モナミの心が少しずつほどけていく過程がとてもお気に入りです。
二人のラブラブ(?)な日常の裏で、ラザード王国の強硬派やさらなる陰謀が水面下で動き出そうとしています。果たして次に待ち受ける試練とは……? 次回も盛りだくさんでお届けしますので、ぜひお楽しみに!




