シーズン2 第6話:春の庭園と、午後のティータイム
シーズン2第6話「春の庭園と、午後のティータイム」をお読みいただきありがとうございます!
自由都市連合との一件を乗り越え、束の間の平和なティータイムを楽しむモナミとミカエルの甘い日常を描きました。その穏やかな時間は長くは続かず、東方の海から新たな使節団の影が忍び寄る――次なる波乱の幕開けとなるエピソードをぜひお楽しみください!
自由都市連合との一件が片付いてから数日後。ロンファ王国の広大な南庭園は、春の訪れを告げる色鮮やかな花々と、やわらかな陽光に包まれていた。
白亜のガゼボ(西洋風東屋)にしつらえられたティーテーブルの席で、モナミ・フォン・ラザードは優雅に紅茶のカップを傾けていた。純白のドレスの裾に繊細な刺繍が施され、その気品ある佇まいは、数日前に強欲な商人たちを震え上がらせた「冷徹な王妃」のものとは思えないほど穏やかだった。
「ふう……。先日の件ですっかり書類仕事が増えてしまったけれど、こうして庭でお茶を飲む時間はやっぱり心地いいわね」
モナミが小さく息をつきながらカップをソーサーに戻すと、向かい側に座っていたミカエルが、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。漆黒の軍服を脱ぎ、ラファなシャツ姿の彼は、手元に置かれた焼き菓子を一つ摘み、モナミの皿へとそっと乗せた。
「そうだね。あの虫けらどもが持ち込んだ騒動も完全に鎮まったし、これからはしばらく平穏な時間が続きそうだ。……もっとも、君が美しすぎるせいで、庭の蝶たちまで君の周りを離れようとしないけれどね」
「相変わらず、お世辞が上手なこと。……で、その甘い言葉の裏で、また何か企んでいるんじゃないでしょうね?」
モナミが細い目を細めて疑いの視線を向けると、ミカエルは無辜の笑みを浮かべて両手を軽く上げた。
「心外だな。僕はただ、愛しい妻とこうしてのんびりティータイムを楽しみたいだけだよ。ほら、ラザード王国から新しく届いた特製のローズヒップティーだ。君の好みに合うと思ってね」
ミカエルが自らポットを手に取り、モナミのカップに温かいお茶を注ぎ足した。ふわりと漂う華やかな香りに、モナミの警戒心も自然と解けていき、彼女は満足げに小さくうなずいた。
「……まあ、お茶の淹れ方だけは合格点をあげてもいいかしら。味も悪くないわ」
「それは光栄だね。王妃様に褒められたとなれば、宮廷の専属シェフもうかうかしていられないな」
他愛のない冗談を交わしながら、二人は穏やかな午後のひとときを満喫していた。かつてはお互いに腹を探り合い、命を狙い合っていた関係が、今や世界で一番信頼できるパートナーとして同じテーブルを囲んでいる。その奇跡のような変化を、モナミは心の中で密かに噛み締めていた。
だが、その平穏なティータイムを遮るように、ガゼボの小道を急ぎ足で歩いてくる一人の近衛騎士の姿が目に入った。騎士は二人の姿を見つけると、少し息を切らせながら恭しく一礼した。
「失礼いたします、王妃殿下、ミカエル殿下。――東方の海域に位置する『オルトリア王国』の使節団が、急遽国境を越えて入国を申請してきたとの報せが入りました」
オルトリア王国。
その名前を耳にした瞬間、モナミの美しい眉がわずかにぴくりと動いた。
東方の海上交易を牛耳るその国は、大陸中央の政治とは一線を画す「独自の魔導造船技術」を持つことで知られていた。
モナミは紅茶のカップを静かに置き、冷徹な政治家の表情へと一瞬で切り替えた。
「オルトリア王国……。あそこは確か、我が国の魔導鉱石の輸入ルートに強い関心を持っていたはずね。何の予告もなしに、急にどういう風の吹き回しかしら?」
ミカエルもまた、穏やかな笑みを消し去り、琥珀色の瞳に鋭い光を宿らせた。
「ふむ、自由都市連合の件が片付いた途端に、今度は東の海から新しい波風がやってくるというわけか。……どうやら、僕たちの平穏なティータイムはここまでみたいだね、モナミ」
不穏な使者の来訪という新たな予兆を前に、モナミは不敵な笑みを浮かべ、立ち上がった。
「上等じゃない。どんな手を使ってきても、我が国の優位を揺るがせることなど絶対に許さないわ。行きましょう、ミカエル。新しい獲物を迎える準備の時間よ」
シーズン2第6話「春の庭園と、午後のティータイム」いかがでしたでしょうか?
穏やかな庭園でお茶を飲みながら、夫婦水入らずの甘い時間を過ごす二人から一転して、新しい政治的脅威である「オルトリア王国」の名前が飛び出すという緊迫の展開をお届けしました。日常の甘さと、シリアスな政治劇が絶妙にミックスされたこの世界観を楽しんでいただけたなら幸いです。
東方の海からやってくる使節団の真の目的とは一体何なのか――?次なる展開を迎える、シーズン2第7話もお楽しみに!




