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悪女と謳われる王女は、国を滅ぼそうとした暗殺王子の愛に気づかない  作者: 凪塩 未来


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シーズン2 第5話:屈服の謁見室と、甘美な勝利の余韻

シーズン2第5話「屈服の謁見室と、甘美な勝利の余韻」をお読みいただきありがとうございます!


自由都市連合の使者たちが王宮の謁見室で直面する絶望的なまでの現実と、モナミの圧倒的な政治的勝利、そしてミカエルの容赦ない殺気が見事に噛み合ったスカッとする解決編を描きました。敵を完膚なきまでに叩き潰した最強夫婦が、その後に分かち合う甘いご褒美の時間をぜひお楽しみください!

午後の陽光が、ロンファ王国の広大な謁見室のステンドグラスを通り抜け、床の上に色鮮やかな光の模様を描き出していた。

だが、その荘厳な空間に満ちていたのは、かつてのような穏やかな空気ではない。そこにあるのは、逃げ場のない絶望と、圧倒的な恐怖に支配された重苦しい沈黙だけだった。


広間の中央にひざまずいていたのは、昨日のまでの傲慢さが嘘のように青ざめ、脂汗を流す自由都市連合の評議会議長たち――ガルトを含む数名の有力商人たちだった。彼らの手元には、昨夜一晩で全資産を凍結された証拠の書類と、ラザード・ロンファ連合が突きつけた「完全隷属協定」の羊皮紙が無造作に転がっている。


玉座に似せた高貴なチェアに深く腰掛けたモナミ・フォン・ラザードは、漆黒のドレスの裾を整え、ルビーの髪飾りを揺らしながら、足元に這いつくばる者たちを冷ややかな瞳で見下ろしていた。


「……さて、自由都市連合の誇り高き評議会の皆様。我が国の経済制裁、そして金融ギルドからの贈り物はいかがだったかしら? 夜を徹して考えた結果、その羊皮紙に署名する準備はできたようね」


モナミの声は低く、心地よい響きを含みながらも、容赦のない威圧感をまとっていた。かつて「冷酷な悪女」と恐れられた彼女の美しさは、今や一国の王妃としての圧倒的なカリスマへと昇華されており、その視線を向けられただけで、ガルトたちは恐怖で全身を震わせた。


ガルトはガタガタと歯を鳴らしながら、かろうじて声を絞り出した。


「こ、これはあまりにも……! 我が連合の自治権を完全に奪い、すべての鉱山利権を貴国に差し出せなどという条件、到底飲めるものでは……っ!」


「飲めない、と言ったかしら?」


モナミの隣に控えていたミカエルが、音もなく一歩前へ出た。

漆黒の軍服を纏った暗殺王子の琥珀色の瞳には、一切の感情が抜け落ちた氷のような冷たさが宿っている。ミカエルがわずかに手を動かした瞬間、謁見室の天井の陰から、黒衣をまとった複数の影が音もなく姿を現し、ガルトたちの首筋に鋭い短剣の切先をピタリと突きつけた。


「君たちに『交渉』の選択肢が残されていると本気で思っていたのかい?」


ミカエルの低く囁くような声が、広間に冷たく響き渡る。


「我が国の慈悲によって命だけは助けてやっているというのに、まだ条件に異議を唱えるつもりかい。……それとも、今ここでこの部屋の床を君たちの赤い血で染め上げて、自由都市連合そのものを地図から消し去ったほうが早いかな?」


殺気。それはかつて大陸の闇を支配していた暗殺組織の首領が放つ、本物の死の気配だった。

ガルトは恐怖のあまり心臓が凍りつきそうになり、もはや言葉を発することすらできず、ただひたすらに床へと額を擦り付けるしかなかった。


「わ、分かりました……! 署名します! すべて、貴国のご意向の通りに……!」


震える手で羽根ペンを掴み、ガルトは血の気が引いた顔で羊皮紙にサインを叩きつけた。他の評議員たちもそれに倣うように、次々と震えながら署名を済ませていく。


モナミは冷ややかな笑みを浮かべたまま、その様を静かに見下ろした。


「よろしい。賢明な判断ね。これより自由都市連合は、我がラザード・ロンファ連合の完全なる保護下に入るわ。二度と不埒な真似を考えないことね。……失せなさい」


命からがら逃げ出すように、ガルトたちは這いつくばったまま謁見室から去っていった。

重厚な大扉が閉ざされ、再び静寂が戻ると、ピリついた空気は一瞬で霧散した。


モナミは深く息を吐き出すと、ふっと肩の力を抜いた。

「ふう……やっと片付いたわね。本当に、骨の折れる虫けらどもだったわ」


「お疲れ様、モナミ。君の冷徹な采配、今日も最高に美しかったよ」


先ほどまでの殺意が嘘のように消え去り、ミカエルは甘やかな笑みを浮かべながらモナミの背後に回り込み、その肩を優しく優しく揉みほぐした。


モナミは心地よさに目を細めながら、彼の手にそっと自分の手を重ねた。

「すべてあなたの完璧な裏工作と、あの殺気立った脅しのおかげよ。……お互いに、いい仕事をしたわね」


「あぁ。だから、今日の仕事はこれでおしまいだ。見事に敵を屈服させたご褒美を、たっぷりと僕にくれなくてはね」


ミカエルはモナミを椅子ごと自分のほうへ引き寄せ、誰もいない静かな王宮のサロンで、甘く熱い口づけを交わすのだった。

シーズン2第5話「屈服の謁見室と、甘美な勝利の余韻」いかがでしたでしょうか?


経済制裁と暗殺王子の圧倒的な武力という「アメとムチ」を完璧に使いこなし、自由都市連合を完全隷属へと追い込んだモナミとミカエル。政治的な駆け引きの爽快感はもちろん、その裏でいつもお互いを認め合い、最後には甘い時間を過ごす二人のおしどり夫婦ぶりが存分に発揮されたエピソードでした。


大陸の新たな火種を鮮やかに鎮圧した最強夫婦ですが、平和になった王宮にはまた別の穏やかで刺激的な日常が待っています。次なる展開を迎える、シーズン2第6話もお楽しみに!

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