シーズン2 第1話:新時代の足音と、不穏な使者
本編、そして外伝を通じて描かれてきたモナミとミカエルの物語が、ついに新たなステージへと突入します。「悪女と謳われた王女」モナミ・ロンファと、「暗殺王子」と呼ばれたミカエルが結ばれ、両国に真の平和が訪れてから数年――
表面上の平和が定着した一方で、大陸の裏側では新たな巨大貿易都市の利権や、魔導技術の革新を巡る不穏な影が蠢き始めます。妻となり、さらに貫禄と美しさを増したモナミと、彼女を溺愛しつつも国家の裏の守護者として容赦なく牙を剥くミカエル。
二人を待ち受ける新たな陰謀と、さらに深化していく甘く刺激的な夫婦の絆を描く「シーズン2」全15話の幕開けです!
春の柔らかな陽光がロンファ王国の王宮執務室を照らし出していた。
最高級の特製インクと上質な羊皮紙に囲まれたデスクの向こう側で、モナミ・ロンファ――改めモナミ・フォン・ラザードは、優雅にカップを傾けながら、手元の分厚い報告書に鋭い視線を走らせていた。
(……ふう。大陸横断鉄道の敷設計画に伴う南部鉱区の利権配分、それに伴う旧貴族派閥の残党の動き。相変わらず、平和な表面の裏で下劣な虫どもが蠢いているわね)
結婚を経て、彼女の纏う雰囲気にはかつての孤高の「悪女」としての鋭さに加え、一国の王妃としての揺るぎない気高さと深みが加わっていた。美しく結い上げられた黒髪に揺れるルビーの髪飾りは、彼女の不敵な笑みと相まって、一目見る者に圧倒的な存在感を植え付ける。
「おや、そんな難しい顔をして、愛しい妻の美しい眉間にシワが寄っているよ」
いつものように音もなく部屋に現れたミカエルが、モナミの背後に回り込み、ふわりとその肩に手を置いた。漆黒の軍服に身を包んだ彼は、かつての冷徹な暗殺組織の首領としての残虐さを潜めているが、モナミに向ける琥珀色の瞳はとろけるように甘い。
モナミは小さく息をつき、手元の書類をトントンと机に揃えた。
「あなたのせいでね、ミカエル。南部鉱区の利権を巡って、隣接する自由都市連合から妙な使者が派遣されてきたわ。表向きは『商業同盟の強化』だけど、裏では我が国の魔導鉱石の利権をごっそり奪い取る算段よ」
ミカエルはふっと冷ややかな笑みを浮かべ、モナミの首筋にそっと顔を寄せた。
「自由都市連合の商人どもか。欲深い連中は、いつの時代も痛い目をみないと分からないらしい。……どうする? 僕がその使者どもの首をいくつか並べて、二度と国境を跨げないようにしてやろうか?」
物騒すぎる解決策をサラリと口にする夫に対し、モナミはあきれたように小さくため息をつきながらも、その頬を優しく指先で軽く突いた。
「相変わらず過激ね、あなたは。今はもう昔のような血なまさい政争の時代じゃないの。暴力で抑えつけるのではなく、政治と経済の圧倒的な力で、あの下劣な商人どもを完膚なきまでに叩き潰すわよ」
モナミの瞳に宿る冷徹で鮮やかな野心の色を見て、ミカエルは満足げに目を細めた。
「さすがは僕の最愛の妻だ。君のそういう、すべてを掌握しようとする気高いところがたまらなく好きだよ」
「知っているわよ。……さあ、その使者たちが今日の午後、王宮の謁見室にやってくるわ。夫婦揃って、あの強欲な商人どもに現実の厳しさを教えてあげましょう」
新時代の扉を開いた最強の夫婦は、新たな陰謀の足音を笑い飛ばすように、堂々と次なる戦場へと歩みを進めるのだった。
シーズン2第1話「新時代の足音と、不穏な使者」をお読みいただきありがとうございます!
本編・外伝を経て、夫婦となったモナミとミカエルが迎える新たなステージ「シーズン2」が、いよいよ開幕いたしました。平和な王国の裏で蠢く新たな利権の影と、それを圧倒的な政治手腕と相変わらずの溺愛パワーでねじ伏せていく最強夫婦の姿をお届けしてまいりました。かつての「悪女」と「暗殺王子」が、今や国の中心で堂々とタッグを組む姿に、胸を高鳴らせていただけたなら幸いです。
自由都市連合からやってくる強欲な使者たちを相手に、モナミの知略とミカエルの容赦ない抑止力がどう炸裂していくのか――。全15話にわたる壮大で甘美な新章の行方を、これからもぜひたっぷりとお楽しみください!




