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悪女と謳われる王女は、国を滅ぼそうとした暗殺王子の愛に気づかない  作者: 凪塩 未来


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第2話:手下モブAの誤算と、暗殺王子の動揺

第2話をお読みいただきありがとうございます!


前回、モナミの鋭すぎる洞察力に返り討ちにされた「手下モブA」の視点から、いかにモナミが恐れられているかを描いてみました。しかし、その恐怖の裏で、ミカエル様はすっかりモナミの魅力(と孤独)の虜になってしまっている様子……。敵対するはずの二人の恋が、ここからどう加速していくのか、ぜひお楽しみください!

「だから、言ったはずだ。モナミ・ロンファという女は、ただの着飾った人形などではないと――」


ラザード王国の王城の一角、影の薄い石造りの地下室に、冷ややかな声が響き渡った。

そこに立っていたのは、漆黒の外套を羽織った秘密組織「レギド」の首領、第一王子ミカエルである。彼の眼差しは、目の前でうなだれている男――先日の潜入作戦を任された手下モブAへと向けられていた。


モブAは、名前の通りどこにでもいそうな、いや、むしろ記憶に残ることすら奇跡のような凡庸な容姿をした男だった。彼は冷や汗をダラダラと流し、石畳の床にひれ伏している。


「は、はっ! 申し訳ありません、ミカエル様! 俺もまさか、ロンファ王国の第二王女があんな化け物じみた洞察力を持っているとは……! 窓から侵入した瞬間、気配を完全に消していたはずなのに、一歩も動いていない彼女から『そこで瞬きをしたら両目をくり抜くわよ』なんて脅されるなんて思ってもみませんでした!」


モブAの情けない弁解に、ミカエルは小さくため息をついた。

そもそも、このモブAを最初に送り込んだのは、モナミの警備の隙や、城内の護衛たちの動向を探るための「捨て駒」としての偵察目的でしかなかった。本気で彼にモナミ暗殺ができるなどとはミカエルも微塵も思っていなかったが、それにしてもあまりに早すぎる露見と、情けない退散劇だった。


「……で、どうやって逃げ帰ってきたんだ?」


「ひっ……! それがですね、窓から飛び込もうとしたところを、王女殿下の護衛である近衛騎士団の猛者たちに囲まれ、さらに王女殿下本人から『こんな雑魚を送り込んでくるとは、ラザード王国の知性もいよいよ底をついたようね。掃き溜めのゴミを持ち帰れ』と、全方位を絶句させるほどの極上の罵倒を浴びせられ、気絶するかと思いました……」


モブAはブルブルと震えながら、当時の屈辱と恐怖を思い返している。

周囲の人間から「悪女」と恐れられるモナミ・ロンファは、敵対する者には一切の容赦をしない。美貌の裏に隠されたその鋭い牙は、国を脅かす者にとってまさに恐怖の対象だった。


しかし、その報告を聞いたミカエルの脳裏に浮かんだのは、怯える手下の姿ではなく、冷徹な美しさを纏いながらも、どこか切なさを秘めたモナミの瞳だった。

(あの時、彼女は一人で執務室にこもり、誰にも見せない表情で膨大な改革案をまとめていた……)


モブAには気づかれなかっただろうが、あの夜、ミカエルが単身でモナミの執務室に忍び込んだ際、彼は彼女の本当の姿を垣間見ていた。

国を憂い、誰にも頼れず、孤独に牙を研ぎ続ける孤高の王女。周囲の女生たちからは嫉妬から陰口を叩かれ、城内の男たちは彼女の美貌と権力に群がるだけで、誰も彼女の「中身」を見ようとはしない。


「……おい、モブA」

「はっ、はい!」

「お前の任務はこれでおしまいだ。二度と彼女の前に姿を出すな。命があるだけ感謝しろ」

「っ! ありがたき幸せ……!」


命拾いをしたモブAが蜘蛛の子を散らすように地下室から逃げ去ると、静まり返った部屋にミカエル一人が取り残された。

ミカエルは自分の胸元に手を当てる。そこでは、あの夜、モナミと直接対峙したときから高鳴り始めた鼓動が、いまだに静まっていなかった。


(僕が彼女を暗殺しようとしたのは、ロンファ王国を弱体化させるためのはずだった。それなのに……なぜあんなにも、彼女を一人にしておけなくなるのだろうな)


ミカエルは自嘲気味に笑った。

冷酷な暗殺組織の首領であるはずの自分が、敵国の「悪女」に完全に心を奪われている。手下の失態など、今となっては彼女と直接出会うための最高のアシストだったのではないかとさえ思えてくる。


「待っていろ、モナミ。次に会うときは、暗殺者としてではなく――僕のすべてを賭けて、君を迎えに行く」


静かな地下室の闇の中で、ミカエルは決意を新たにするのだった。

一方その頃、ロンファ王国の華やかな宮廷では、女生たちがまたぞろモナミの悪口を囁き合い、男たちが彼女の機嫌を損ねまいと怯える、いつもと変わらない日常が流れていた――表面上は。しかし、その内側で確実に、二人の運命の歯車は大きく動き始めていた。

第2話「手下モブAの誤算と、暗殺王子の動揺」いかがでしたでしょうか?


今回はモブA君に犠牲になってもらいつつ、ミカエルがどれだけモナミに本気になってしまったのかを掘り下げてみました。「悪女」として孤高を貫くモナミと、彼女の本当の姿に気づいてしまった暗殺王子。このギャップと、ミカエルの少し暴走気味な執着愛を今後も美味しく描いていきたいと思います。


次話では、モナミの日常パートや、女生たちの相変わらずの陰口、そしてそれにモナミがどう華麗に毒舌でカウンターを浴びせるのか……? 引き続きお楽しみいただけるよう執筆してまいりますので、感想や応援をいただけると本当に励みになります! 次回もお見逃しなく!

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