外伝 第3話:嫉妬深き王子の夜更かし
外伝第3話「嫉妬深き王子の夜更かし」をお読みいただきありがとうございます!
深夜のプライベートサロンを舞台に、国の仕事に没頭するモナミと、彼女に構ってもらえなくてすっかりすねてしまったミカエルのギャップあふれる日常を描きました。世界を揺るがした最強の暗殺王子が、恋人の仕事量に嫉妬して甘えてくるという、破壊力抜群の甘々な夜更かしエピソードをぜひお楽しみください!
ロンファ王国内にあるモナミのプライベートサロン。
深夜の静寂に包まれた部屋の中で、デスクのランプだけがオレンジ色の柔らかな光を投げかけていた。
モナミは山積みにされた外交文書の束を前に、細い眉をひそめながら羽根ペンを走らせていた。
「……まったく、先日の貿易協定の件で、ラザード王国の南部貴族たちからまた追加の修正案が届いているわ。これではこちらの利益が削られてしまうじゃないの」
一人ごちながら書類に次々と朱を入れていくモナミ。しかし、その背後――ソファのあたりから、何やらじっとりと執着の籠もった視線を感じていた。
振り返ると、ミカエルがソファに深く腰掛け、漆黒の軍服のボタンを少し外したラフな姿で、じっと她的な背中を見つめていた。その瞳には、仕事に没頭するモナミに対する複雑な感情が渦巻いている。
「ねえ、モナミ」
「なによ、集中しているんだから話しかけないでちょうだい」
冷たく言い放つモナミに対し、ミカエルはスルスルと椅子から立ち上がり、彼女の後ろへと音もなく忍び寄った。そして、そのままモナミの椅子を背後から包み込むように抱え込み、彼女の首筋に顔を埋めた。
「っ……! ミカエル、重いわよ! 動けないじゃない!」
「いいじゃないか。……ねぇ、モナミ。最近、君があまりにも国の仕事や外交の調整に熱中しすぎて、僕と過ごす時間が少し減っている気がするんだが」
ミカエルの声には、驚くべきことに微かな「すねたような」色合いが混じっていた。
世界を恐怖に陥れたはずの暗殺組織の首領が、恋人の仕事量に対して嫉妬しているというのだから、知ったら世間の貴族たちはひっくり返るだろう。
モナミは思わずペンを止め、あきれたような、しかしどこか愛おしいものを見る目で首をかしげた。
「あなたがラザード王国の内政改革を私に丸投げして、自分の執務室から抜け出してばかりいるから、しわ寄せがこっちに来ているのよ。自分の仕事の多さを棚に上げて、何を言っているの」
「それはそれ、これはそれさ。僕にとって世界で一番大切なのは、この国をいかに発展させるかではなく、君が僕の方を向いてくれる時間なのだからね」
ミカエルはそう囁くと、モナミの柔らかい頬に自分の頬をスリスペリと寄せた。
そのあまりの甘えように、モナミの冷徹な仮面は完全に融解し、彼女は小さく苦笑いを漏らした。
「……本当に、あなたという人は……。分かったわ、今日のこの書類の山を片付けたら、明日の夜は完全にあなたのための時間をあげるから。だから、今は邪魔をしないで」
「本当かい? それなら、今すぐこの書類の半分を僕が代わりに片付けてしまおう」
ミカエルは途端に目の色を変え、モナミのデスクから書類の束をごっそり自分の手元へと引きレイアウトした。その頼もしい(不純な動機に基づいた)背中を見ながら、モナミは優しく微笑み、再びペンを手に取るのだった。
外伝第3話「嫉妬深き王子の夜更かし」いかがでしたでしょうか?
普段はクールで容赦のないミカエルが、モナミの前だけで見せる「独占欲の強さと甘えん坊な一面」が、執筆していてとても愛おしいポイントでした。そして、そんな彼のペースに呆れつつも、結局は絆されて特別時間をご褒美として約束してしまうモナミの甘い関係性も、二人の揺るぎない絆を物語っています。
書類の半分をごっそり持って猛スピードで片付け始めたミカエルの微笑ましい裏側を見たところで、次はいよいよ第4話!二人の間に訪れる、さらなる特別なイベントとは――?どうぞお楽しみに!




