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悪女と謳われる王女は、国を滅ぼそうとした暗殺王子の愛に気づかない  作者: 凪塩 未来


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外伝 第1話:悪女の休日、あるいは王子の苦悩

本編の完結、そしてモナミとミカエルの永遠の愛の誓いから少しの時間が流れた王宮。今回は、本編では描ききれなかった二人の「甘すぎる日常」や「知られざる裏側のエピソード」にスポットを当てた外伝全5話をお届けします!最強の悪女と溺愛全開の暗殺王子が織りなす、時にコミカルで、時に胸キュンが止まらない特別なショート・ストーリーの数々を、ぜひたっぷりとお楽しみください!

見渡す限りの青空が広がるロンファ王国の王宮庭園。心地よい秋風が色づき始めた木々の葉を揺らす中、モナミ・ロンファは優雅にパラソル付きのティーチェアに腰掛け、優雅に紅茶を啜っていた。


(ふう……本当に、平和というのは素晴らしいものだわ)


これまでの政治的謀略や、国内外の強硬派との水面下での神経戦が嘘のように落ち着き、現在のモナミの手元には厄介な抗議書状の一枚すら届いていない。数日前から、彼女は自分へのご褒美として「完全なる休日」を宣言し、王宮の執務室への立ち入りを一切禁止していた。


お気に入りのダージリンティーの香りを楽しみながら、モナミは隣に置かれたテーブルの上の小説に手を伸ばそうとした。


――その瞬間。


「失礼するよ、愛しい悪女殿」


いつものように窓枠からではなく、今回はなぜか庭園の植え込みの陰から、漆黒の軍服に身を包んだミカエルがヒョイと姿を現した。その端正な顔立ちは美しく整っているが、どこか切羽詰まったような、あるいは子犬が飼い主に叱られるのを恐れるかのような微妙な表情を浮かべている。


モナミは優雅にカップをソーサーに戻し、冷ややかな、しかしどこか面白がるような視線をミカエルに向けた。


「……ミカエル。あなた、今日は確かラザード王国の特使たちと重要な外交会合があったはずよね? なぜこんな時間に、私のプライベートな庭園にコソコソと忍び込んでいるのかしら」


モナミの鋭い指摘に、ミカエルはわずかに視線を泳がせた後、観念したようにため息をついた。


「いや、会合なら無事に終わらせたさ。たった十五分でね。相手の特使どもも、僕の冷徹な眼光に気圧されてそそくさと帰っていったよ」


「十五分で終わらせたって……あなたねぇ、相手は隣国の重鎮たちよ? もう少し外交的な配慮というものを覚えたらどうなの。冷酷な暗殺王子の悪評がまた広がるわよ」


モナミが呆れたように小さく息をつくと、ミカエルはスルスルと彼女のチェアに歩み寄り、その背もたれに手をかけて、ふわりと至近距離に顔を寄せた。


「世間の評判なんてどうでもいいさ。僕の関心は、すべて君に向いているんだからね。……それに、今日は『完全な休日』だからといって、朝から僕の執務室のドアをピシャリと閉ざし、一言も顔を見せてくれない君のせいで、僕の心はずっと飢え渇いていたんだ」


ミカエルの琥珀色の瞳には、嘘偽りのない深刻なまでの愛着と独占欲の色が浮かんでいた。

かつては「国を滅ぼそうとした暗殺王子」と恐れられ、誰の心をも寄せ付けなかった冷酷な男が、今やモナミに夢中になりすぎて執務中も気が散っているというのだから、人間とは分からないものである。


モナミは思わず苦笑いを浮かべ、小さくため息をついた。


「ほんの一日、少し一人の時間を満喫したかっただけよ。あなたに四六時中ベタベタされていたら、私の『冷酷な悪女』としての威厳がすっかり地に落ちてしまうわ」


「今更そんなものを気にする必要がどこにある? 君は僕の前でだけでいい。世界で一番無防備で、愛らしい表情を見せてくれればね」


ミカエルはそう言うと、モナミの拒絶を許さない手つきで彼女の隣のチェアに腰を下ろし、その細い体を自分の腕の中へと自然に引き寄せた。

心地よい温もりと、彼の纏う微かな夜露とハーブの香りが鼻腔をくすぐる。モナミは心の中で「まったく、この男は……」と呟きながらも、結局その広い胸にそっと頭を預けた。


「……勝手な人ね。でも、そんなに私に構ってほしいなら、今日の午後くらい、私のティータイムにつきあってもらってもいいけれど?」


「喜んで。君と過ごせるなら、世界のどんな外交よりも価値があるさ」


秋晴れの穏やかな庭園で、二人は甘い紅茶の香りに包まれながら、誰に邪魔されることもない至福の時間を分かち合うのだった。

外伝第1話「悪女の休日、あるいは王子の苦悩」をお読みいただきありがとうございます!


本編が無事にハッピーエンドを迎え、平和な日常が訪れたあとの甘すぎる一コマを描いてみました。いつもは「冷酷な悪女」として毅然としているモナミが、完全な休日にのんびりティータイムを楽しもうとする姿と、それに全力でかまってほしがるミカエルの少しギャップのある(そして溺愛全開な)やり取りを楽しんでいただけたなら幸いです。


世界中から恐れられた暗殺王子が、恋人の休暇にやきもきしてしまうような、そんな微笑ましい日常の裏側――次回以降の外伝でも、二人のラブラブでちょっと刺激的なエピソードをお届けしていきますので、どうぞお楽しみに!

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