第10話:偽りの対立と、漆黒の粛清
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表向きは「二重スパイ疑惑」の芝居を打ちながら、裏ではミカエルと組織の精鋭たちが強硬派を完璧に粛清していく第1部のクライマックス回です。モナミの周到な政治的布石と、ミカエルの圧倒的な戦闘力&溺愛が綺麗に噛み合った爽快な大逆転劇を、ぜひ心ゆくまでお楽しみください!
ラザード王国軍の強硬派が国境の要塞に陣取ったという知らせは、瞬く間に両国の宮廷を駆け巡った。ロンファ王国の貴族たちの間では「やはり敵国の王子の甘言に踊らされたのだ」「悪女の謀略が戦争を引き起こした」という陰口や非難の嵐が巻き起こっていた。
しかし、当の本人であるモナミ・ロンファは、王宮の一室で優雅に紅茶を啜りながら、冷徹な笑みを浮かべていた。
「言わせておけばいいわ。愚か者たちが勝手に騒ぎ立てている間に、私たちの布石はすべて完了しているのだから」
表向き、モナミは国王や大臣たちに対して「ラザード王国の第一王子ミカエルは、我が国を欺くための二重スパイであった可能性が高い。直ちに国内の警戒態勢を最大値に引き上げ、国境の軍を動かす」という厳重な声明を発表していた。これはすべて、ラザード王国の強硬派を油断させ、罠へと誘い込むための周到な芝居だった。
一方、その頃。
国境地帯の荒涼とした夜の野営地に、漆黒の影が音もなく忍び込んでいた。
ラザード王国軍の強硬派を率いる将軍バルドは、天幕の中で不敵な笑みを浮かべ、酒杯を傾けていた。
「ははっ、見ろ! ロンファ王国の王女は我々の圧倒的な武力に怯え、あのミカエルとかいう甘ったれた王子を裏切る手筈を整えているそうだ。これで我が国がこの土地を制圧し、王位を我が物にすることも夢ではない!」
バルドを取り囲む側近たちも「さすがバルド様!」「あの若造の王子に引導を渡してやりましょう!」と下劣な笑い声を上げる。
「――そこまでだ、バルド」
低く、凍てつくような冷たさを持った声が、密閉されたはずの天幕の中に響き渡った。
バルドがぎょっとして振り返ると、そこには血の匂いを纏ったミカエルが、一片の埃すらついていない軍服姿で静かに立っていた。
「なっ……!? ミカエル殿下……なぜここに! 外の警備兵はどうした!」
「外の連中なら、すでに全員眠っている。永久にな」
ミカエルが冷ややかに告げた瞬間、天幕の隙間から幾筋もの黒装束の影――秘密組織「レギド」の精鋭たちが音もなく現れ、バルドの側近たちの首筋に鋭い短剣を突きつけた。一瞬で形勢は完全に逆転していた。
「な、ふざけるな! 私は国のためを思って――!」
「国のためだと?」
ミカエルは一歩ずつバルドへと歩み寄り、その琥珀色の瞳に殺意の炎を宿した。
「君たちがやっているのは、ただの私欲のための反逆であり、何より――僕の愛する女性を傷つけ、僕たちの未来を邪魔する最悪の愚行だ。その罪、命をもって償ってもらおう」
バルドが悲鳴を上げる暇すらなかった。
漆黒の刃が閃き、強硬派の野望は、誰にも知られることなく闇の底へと葬り去られたのだった。
翌朝、国境の要塞には「ラザード王国軍の強硬派によるクーデター未遂、および首謀者たちの粛清完了」の知らせがもたらされた。
敵国の王子自らが自国の反乱分子を完璧に排除したという事実は、両国の強硬論を完全に沈黙させ、むしろ平和的統合への強力な推進力となった。
王宮のテラスでその報せを聞いたモナミは、フッと誇らしげな笑みを浮かべた。
(やるじゃない、ミカエル。……さて、綺麗に掃除が終わったことだし、そろそろご褒美を考えなくてはね)
悪女と謳われた王女と、暗殺王子の最大の危機は華麗に打ち破られ、物語はいよいよ甘く熱い結末へと突き進んでいく。
第10話「偽りの対立と、漆黒の粛清」いかがでしたでしょうか?
国境の危機という最大のピンチを、二人の阿吽の呼吸と圧倒的な実力で鮮やかにひっくり返す展開を描いてみました。いつもは周囲から「悪女」と恐れられ、孤独に戦っていたモナミが、自分のために本気で動いてくれるミカエルと並び立ち、共に勝利を掴み取る姿は執筆していて本当に胸が熱くなるポイントでした。
これで第1部の大きな政治的ハードルや敵対勢力は綺麗にクリアされましたが、ここから先は二人の甘々すぎる関係や、未来に向けた新たなエピソードが待ち受けています。果たしてどんな展開が待っているのか――?次回からの展開もどうぞお楽しみに!




