第6話:Aランク昇格試験と、忍び寄る影
「レイルさん! ギルドマスターが呼んでます!」
朝、いつもの安宿のドアを勢いよくノックしたのはフィリアだった。
昨日の一件以来、彼女は毎朝のように俺を迎えに来てくれている。その距離感が、なんだか少しこそばゆい。
「おはよう、フィリア。もうそんな時間か」
ギルドの酒場兼受付に行くと、ギルドマスターが書類の山を抱えて待っていた。
周囲の冒険者たちは、俺を見る目が昨日までと明らかに違う。畏怖と憧れが入り交じったような視線だ。
「レイルくん、よく来てくれた。実はな、先日のミスリル鉱脈の件と騎士団からの報告を受け、ギルド本部から特例での『Aランク昇格』の承認が下りたのだ」
「Aランクですか……早いですね」
「当然の結果だよ。お前がフィリアに施した武具の技術は、もはや国の重要機密レベルだ。そこでだ、早速だがAランク昇格の『実技試験』を受けてもらいたい」
ギルドマスターが机の上に置いたのは、一枚の討伐依頼書だった。
指定された獲物は『黒竜の爪あと』の最奥に巣食う『フレイムドラゴン』。Bランクパーティが全滅することもある危険なモンスターだ。
「……これを倒せ、と?」
「うむ。フィリアと二人で、だ。もちろん、お主の腕なら問題ないはずだ」
俺とフィリアが顔を見合わせる。
フィリアは一瞬緊張した表情を見せたが、すぐに俺の目を見て力強く頷いた。
「大丈夫です。レイルくんのサポートと、この剣があれば、私、絶対に負けません!」
「ああ、一緒にやろう」
その時――ギルドの入口が騒がしくなった
「おい、どけ! 俺たちは勇者パーティ『黄金の獅子』だぞ!」
聞き覚えのある怒鳴り声が響いた。
ギルドの扉を蹴り開けて入ってきたのは、ボロボロの装備を無理やり革紐で縛り付けたゼクスたちだった。
彼らの目は血走り、完全に正気を失っている。
「レイル! お前、Aランクになるだって!? ふざけるな!」
ゼクスは剣を抜こうとしたが、錆びた刀身はカチャカチャと情けない音を立てただけで、完全に折れ曲がってしまった。
「ゼクス、もうやめろよ……俺たち、もう戦えないんだ」
重戦士のガストンが力なく呟くが、ゼクスは耳を貸さない。
「うるさい! こいつが俺たちの運命を狂わせたんだ! レイル、お前がそのクソみたいな呪いを解かないなら、ここで……」
ゼクスがナイフを取り出し、俺に向かって突っ込んできた。
周囲の冒険者が「危ない!」と悲鳴を上げる。
だが、俺が動くよりも早かった。
――キィンッ!
フィリアが間に入り、魔銀の長剣の柄でゼクスのナイフを軽く弾き飛ばす。
衝撃でゼクスは尻餅をついた。
「もうやめてください。あなたたちの傲慢さに付き合っている暇はありません。私たちは、これからの未来のために進むんです」
フィリアの冷徹な声が、ギルド内の空気を凍らせる。
ギルドの衛兵たちがすぐに駆けつけ、ゼクスたちを取り押さえた。
「おい、勇者パーティだからってギルド内で暴れるのは許されないぞ。大人しく連行されろ」
「は、離せ! 俺たちは勇者だぞ! 魔王討伐はどうするんだ!」
狂ったように叫ぶゼクスたちは、そのまま衛兵に引きずり出されていった。
彼らが失ったもの――それはレイルの神級付与ではなく、自分を支えてくれている仲間や周囲への「感謝」だったのだ。
新たな冒険への扉
「……呆れた連中だね」
俺は静かに呟き、フィリアの方を向いた。
彼女は長剣を鞘に収めると、ふっと柔らかく微笑んだ。
「レイルくん、もう大丈夫ね。……さあ、Aランク昇格試験、受けに行きましょう!」
俺たちは、王都の人々の歓声と期待を背に受けながら、新たな伝説の第一歩を踏み出した
第6話・完
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