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第4話:ミスリル鉱脈と、失われた神級付与

「……うわぁ、凄い……!」


『黒竜の爪あと』ダンジョンの奥深く。

松明の明かりに照らされた岩壁を見て、フィリアが歓声を上げた。

そこには、青く輝く『ミスリル鉱』がこれでもかというほど詰まっている。


通常、このランクの鉱石は、数時間かけてツルハシを振るってようやく数個採れるかどうかという代物だ。

しかし、ここにあるミスリル鉱は、まるでレイルたちの来訪を歓迎するかのように、表面に浮き出ている。


「Bランクの依頼にしては、ちょっと採れすぎじゃないか?」

俺が苦笑すると、フィリアは呆れたように頬を膨らませた。


「レイルくんがここに来る途中、ただ素手で触っただけで岩肌が脆くなって、採掘しやすくなったのよ? もはやただの鉱石採取っていうレベルじゃないわ」


「そうかな? ちょっと力を込めただけなんだけど」


俺は地面に転がっていた鉄製のナイフを取り出し、軽くミスリル鉱の塊を削る。

すると、スッと豆腐のように刃が入り、綺麗な結晶がボロボロと剥がれ落ちた。


「(……【概念付与:超硬度・自動剥離】を込めておいたから、これなら誰がやっても簡単に採取できるはずだ)」


フィリアは手際よく鉱石を袋に詰めていく。

ふと、彼女が真剣な表情で俺を見つめた。


「ねえ、レイルくん。私、王都に戻ったらギルドの昇格試験を受けようと思うの。あなたが直してくれたこの剣なら、絶対に合格できるから」


「それは素晴らしいね。応援するよ」


「だから、その……もしよければ、私と、その……ずっと一緒に組んでくれないかしら?」


真っ直ぐに向けられた彼女の瞳に、少しだけ照れが混ざっている。

『黄金の獅子』からは役立たずと罵られた俺を、必要としてくれる人がいる。その事実が、素直に嬉しかった。


「ああ、もちろん。俺でよければ、これからもフィリアのサポートをするよ」


その時だった。


「――ガアアアアッ!」


暗闇から現れたのは、巨大な鎧をまとった魔物、アイアンゴーレムだ。

本来ならBランクパーティが数人がかりで挑む強敵である。


「た、大変……! レイルくん、下がってて!」

フィリアが魔銀の長剣を構え、一歩前に出る。


「大丈夫だよ、フィリア。そのまま、思いっきり振ってみて」


「えっ……でも!」


「いいから、やってみて」


フィリアは一瞬戸惑ったものの、意を決して剣を大きく振り下ろした。


――ズォンッ!


彼女が剣を振るうと同時に、神級の加護が発動し、剣の軌跡に不可視の衝撃波が伴う。

アイアンゴーレムは鋼鉄の鎧ごと、真っ二つに両断されて光の粒子へと変わった。


「……うそ……一撃……?」


フィリア自身が一番驚いている。彼女の手元の長剣は、まるで何事もなかったかのように静まり返っていた。


「見事だったよ、フィリア」


俺は微笑みながら拍手を送る。

俺たちは安全かつ迅速に依頼を完了させ、大量のミスリル鉱を抱えて王都へ戻ることになった。


一方その頃――王都・冒険者ギルドの受付

「どういうことだ! なぜ俺たちのランクが下がるんだ!?」


勇者ゼクスが、ギルドの受付で怒鳴り散らしていた。

彼らが腰に下げているのは、ボロボロになった鉄屑同然の剣だ。Bランク以上の依頼を受ける資格すら失われていた。


「規定ですので。装備の点検をクリアできないパーティには、Sランクの依頼はお出しできません」


「ふざけるな! 俺たちは魔王を討伐する勇者だぞ!」


「勇者様だろうが何だろうが、ギルドの規則は絶対です。……それより、レイル様は先ほどBランクの鉱石採取依頼を一人で、いえ、同行者と二人で達成されました」


職員の冷たい言葉に、ゼクスは顔を真っ赤にする。


「なんだと……? あの無能が、Sランクの俺たちより上の依頼を……!?」


彼らの表情は、嫉妬と恐怖で歪んでいた。

自分たちの強さが、全てレイルの「見えない支え」のおかげだったと、ようやく気づき始めていたのだ。

第4話・完

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