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第3話:Fランクの依頼と、神に愛されたパーティー

「ねえ、本当にいいの?」


王都から少し離れた街道。

後ろから、フィリアが恐縮した様子で俺の背中を見つめていた。

彼女の腰には、昨日俺が直したばかりの『魔銀の長剣』が輝いている。まるで意思を持つかのように、淡い光を放ちながらフィリアの魔力を引き出していた。


「もちろん。俺も当面の生活費が欲しいし、ちょうどBランク指定の『鉱石採取』の依頼なら、道案内も兼ねて手伝えるからね」


「Bランク指定なのに、Fランクのレイルくんが受けても大丈夫なの……?」


「大丈夫、大丈夫」


冒険者ギルドでは本来、ランク制限より上の依頼を受けることはできない。

だが、昨日ギルドマスターが俺たちの様子を見て、「特別に許可するから行ってこい」と半ば追い出すように依頼書を手渡してくれたのだ。周囲の冒険者たちが、昨日あの剣を見て畏縮していたのを俺は見逃さなかった。


今回の依頼先は『黒竜の爪あと』と呼ばれる危険度高めのダンジョン入り口だ。

珍しい鉱石『ミスリル鉱』が採れるらしい。


「レイルくんは、どうしてあんなすごい付与術が使えるの? 私、王立の魔導学院に通っていたけれど、あんな一瞬でアーティファクト並みの武器を修復するなんて聞いたことがないわ」


「うーん……そうかな? まあ、ただのコツみたいなものだよ。壊れた回路を元の正しい形に繋ぎ直しただけだし」


「ただのコツで世界を揺るがすような剣を作らないでよ……」


フィリアは呆れたように苦笑した。

しかし、彼女の瞳には確かな信頼の色が浮かんでいる。俺を「無能」扱いせず、普通に接してくれるこの時間が、なんだか心地よかった。


ダンジョン入り口にて

黒竜の爪あと、その入り口付近。

そこには、見慣れた、いや、見たくもなかった金色の背中があった。


「――おい、なぜ入れないんだ! 俺たちはSランクだぞ!」


勇者ゼクスだ。

黄金の獅子のメンバーが、ダンジョンの結界の前で立ち往生している。

彼らの手には、ボロボロになった聖剣や、錆びた武器が握られている。昨日の今日でここまで追ってきたらしい。


「あ、あれは……『黄金の獅子』……!」


フィリアが警戒するように足を止めた。

俺も立ち止まり、静かにゼクスたちの様子を観察する。


「お前ら、いい加減にしろよ! 門番、俺たちが誰だか分かってるのか? 魔王討伐に向かう勇者パーティだぞ!」


「Sランクだろうが何だろうが、規定の装備点検をクリアしていないパーティは通せねぇ。あんたたちの武器、完全にただの鉄塊になってるじゃないか。死にに行くようなもんだ」


門番の屈強な戦士が、呆れたように鼻であしらう。


「な……っ! お前ら、レイルの奴がどこに行ったか知らないか!? あいつが王都のどこかで、俺たちに呪いをかけたんだ!」


ゼクスは周囲を見回し、やがて俺の姿を見つけた。


「……レイル! お前、こんなところにいたのか!」


ゼクスは鬼のような形相で、俺に向かって歩み寄ってきた。

背後でミレーヌやエルナが「やっぱりあいつの仕業よ!」とヒステリックに叫んでいる。


「待てよ、お前が俺たちの装備を呪ったんだろ? すぐに元に戻せ! さもなければ、王都追放だけじゃ済まないぞ」


「……何言ってるんだ、ゼクス。俺はただパーティを辞めただけだよ。呪いなんてかけてない」


俺は冷静に言い放った。

事実、呪いなどかけていない。ただ、彼らの本来の低すぎるステータスを覆い隠すための「神級バフ」の供給を止めただけだ。彼ら自身の技量が追いついていないのが悪い。


「とぼけるな! レイルのくせに、俺たちを見下す気か!」


ゼクスが折れた聖剣を振り上げようとした瞬間だった。


――キィン……!


フィリアが前に出て、その折れた長剣の鞘に手をかけた。

凄まじい殺気が周囲の空気を凍らせる。


「……そこまでです」


フィリアの凛とした声が響く。

ただの冒険者である彼女が放つ圧力ではない。俺が付与した魔力が彼女の中で共鳴し、Sランクパーティの威圧感を完全に凌駕していた。


「な、なんだお前は……その剣、どこで手に入れた!?」

ゼクスが息を呑む。


「私の剣です。そして、この剣を直してくれたのは、あなたが『無能』だと切り捨てたレイルさんです!」


フィリアが強い瞳でゼクスを睨みつける。


「彼のおかげで、この剣は伝説の武器になりました。……あなたたちが彼を追い出したのは、パーティの歴史上、最大の失態でしたね」


ゼクスたちはその言葉に言葉を失い、青ざめた顔でその場に立ち尽くした。


レイルたちの次のステップ

俺たちはゼクスたちを横目に、堂々とダンジョンへと歩みを進めた。


「レイルくん……私、ずっとあなたについていくわ」

フィリアが嬉しそうに微笑む。


「……ありがとう。じゃあ、まずはこのダンジョンで最高の鉱石を採取しようか」


彼らの傲慢さに構っている暇はない。

俺の力は、俺を必要としてくれる人のために使う。それが、本当の冒険だ。

第3話・完

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