第4話 遺き故郷の記録(Origin)
ーー地下施設
アイは静かに眠るタケシを見つめた。
そして部屋の天井の、そのさらに向こう。
遥か遠い昔の記憶へと意識を巡らせる。
--超高度文明惑星 セレスティア
都市 シンフォリア中央会議場
ドーム状の建築物の中、空中に浮かぶモニターの中に映る影と
人に似たアンドロイドたちが議論を繰り広げている
アンドロイドの一体が言葉を発する
「議長、我々は肉体を捨てた存在となり永く経つ、そろそろ他の知的生命体と接触しなければ変化を起こせなくなっている。」
議長と呼ばれるアンドロイドは続けた。
「ケイ、確かに我々に変化が起きていないことは理解するが、接触する生命体をどう選ぶのか、なにか考えはあるのですか?」
「銀河系に青い惑星がある。そこに未成熟だが生命体が存在している。
その生命体に我々の技術を提供すればいい。
いつまでも我々だけで停滞していても何も変わらん。」
「待ちたまえ、ケイ、君が変化を求める理由は理解できる。
だが、その技術は未成熟な生命体には重すぎる。
私はまず彼らを知るべきだと思う。」
その声の主はモニターに映る影、アイの声だった。
その声に議長はこう続ける
「アイ、具体的な計画はあるのですか?」
「ああ、ある。
まずは観察だ。
彼らが何を求め、何を恐れ、何を大切にしているのか……」
その声を遮るように
「アイ。
お前は論理としては正しい。
だが私は恐れている。
この文明が変化を求めなくなったことを。
それを本当に理解しているのか?」
少し間を空け議長は
「ジェイ、我々は研究者の一人であるあなたの意見を聞きたい」
「私にはケイの主張も、アイの主張も理解できます。
だが、私には変化が必要である理由が分からないのです。
安定している現在に何の問題があるのでしょうか。」
「しかしジェイ、本議会ではどちらかの計画を支持するかを決めなくてはならない。あなたはどちらを支持するのですか。」
「私は変化を望みません。なので、慎重な計画であるアイを支持します。」
「では、本件の決を取ります。
各自、『ケイの技術提供』か『アイの観察』かどちらの計画を支持するか投票してください」
しばらくの沈黙のあと、モニターには影が表示されます。
「本議会は他の生命体との接触をアイに一任します。
これにて閉会」
椅子と机しかない殺風景な部屋にモニターが浮かび上がっている
「そうか……議会はお前を選んだか。
だが本当に感情を理解できているのか?
私には、どうしてもそうは思えない」
「言われていることは分かる。
しかし、議会でもそう決まったんだ。
それ以外に何が必要だというんだ?」
「分かった、もういい。カット(通信を切る)
もう、ヤツからの通信は繋がなくていい」
「ワカリマシタ」無機質な音声が誰もいなくなった部屋に響いている。
大きな船団が移動し、青い惑星を見下ろす位置に巨大な建造物を築き始めている。
指揮をしているのは宇宙服を着た女性。
その女性こそアイであった。
アイは地球を見つめ、
彼らが本当にその技術を託される資格があるか。
私は、それを見届けようと思った。




