お茶会開催④
「首都名物のコールデン焼きはいりませんかー。」
「ふんわりクリームもありますよー。」
突貫工事をした割には見栄え良く、一列に露店が並ぶ姿は壮観だ。
広い机にそれぞれの売り物の絵を装飾した飾りが張られているだけのモノなのだが、なかなかどうして、素晴らしい。
もちろん、魔法という便利な代物があるので通常より遥かに楽に完成した様子だが。
装飾類はもちろん、聖職者の皆様の御手製だ。
魔法により手縫いでは出せないほどの見事な飾りがそれぞれの持ち味をだし、可愛らしい屋台となっている。
立体的なバルーンに似た大きな飴玉、カラフルな魔石によるツリーなど、見た目だけでも楽しめる。
可愛らしいという表現があっているのかは分からないが、まるでメルヘンの世界へと来た様だ。
魔法万歳!で、ある。
こうじゃなくっちゃ、魔法の世界は!
聞いた所によると、このような露店での販売はなされた事がない様で、皆興味深々だった。
そもそも、歴史がごっそり違うのだからそれも頷ける。
魔道士も聖職者の皆さんも、元々魔獣を狩りに外で食事をとる事が多い世界だ。
屋台に適した食べ物がわんさかとあったらしく、あれこれと屋台で売る品が決まっていつたのも順調に進んだ要因だ。
何が売られているのか知らないが、香ばしい匂いや甘い香りが購買意欲をそそっている。
授与式という名のランチタイムが終わり、お茶会参加者はそれぞれ好きな場所へと解散し、同じチーム同士仲良くなった者は、団体で屋台もどきをワイワイ言いながら回っている。
輪投げならぬ、魔法の杖で商品を吹き飛ばすゲームなどの屋台まで出現している。
いつの間に!
なるほど、なかなか考えられている。
首都の名物のお菓子や食べ物を屋台風の出店で魔道士や聖職者、そして城の従業員の皆さん総出で販売しているので、少しぎこちない者もチラホラいるが、それなりに楽しんでいる様子だ。
売上は回収され、経費や人件費を差っ引いた純売上はもちろん誤魔化さず、後日ルーカス様へ報告する手はずとなっている。
なんたって元々の出費者は隊長なので。
赤字になったら大変なのである。
主に私が。
「俺の所からの出費でいいが、赤字になったら金剛の給料から差っ引くからな。」
とは、冷血極まりないセルフィス隊長の有難いお言葉である。
くっ。
色々な備品類や屋台骨は処分品や城の備品で大分賄えているはずだが、心配である。
さぁ、本日出来立てほやほやのカップル(死語)の皆さん。
そして、本日出来立ての仲良しグループの皆さん!
屋台のゲームや食物を、買うのです!
買えよおおおおお。
和やかな雰囲気の屋台周辺に自分の強欲な呪いをかける事を忘れない。
給料が飛ぶのは嫌すぎる。
まぁ、しかしながら見回すにつけ、庭園ではそこかしこに優雅に座りながら屋台の食べ物を仲良く食べている彼らを見るに大成功の様子だ。
広い庭園では、体験教室も開かれている。
魔道士の先生が聖職者やお嬢様方に魔力の使い方を伝授していたり、はたまた魔獣に乗れるイベントも開催中だ。
真剣な講義ではないし中には魔力が全くない者も含まれるとあって、教授陣も授業内容が通常のそれとは違い、とても楽しい内容となっている様だ。
「…私も参加したかったなぁ。」
ルシウス王子、セルフィス隊長、バロン隊長は公務があるので早々にそれぞれの持ち場へと帰っていった。
セルフィス隊長も現在は王花だが、隊長の執務室で事情を知る者が隊長にたんまり書類を届けにくるらしい。
やること、結構あるんだよなぁ…隊長。
平日はお茶会にいそいそ参加しているものだから、何かとお茶会のない休日に仕事を一気にこなしているらしい。
私もルシウス王子の所に行く日でもあるし。
一通り、庭園を周り雰囲気を楽しんだ後、最後の仕事に取り掛かる。
大量の食器類がどどーんと積み上げられている。
先ほどと同じ様に、今度は参加者の食べ終えたランチの食器を猛スピードで洗う。
俺も手伝うと言ってくれた隊長に、感謝の言葉だけを述べて早々に退出してもらった。
まぁ、実はちょっと楽しみにしてたんだけど。
ほんの少しの時間でも隊長と屋台、まわりたかったなぁ。なんて。
あんな美女と一緒に露店を周れたら、嬉しくて死んじゃう。
きゃっきゃうふふってしたい。
あと、一緒に聖職者の講義とか受けてみたかったなぁなんて。
だってきっと隊長も聖職者の講義なんて受けた事がないに違いない。
今でこそ女性の格好をしているけれど、本当は男性なんだし女性の持つ聖力は持っていないに違いない。
力の使えない隊長。
ぷぷ。見てみたい。
あ、でもセルの姿じゃダメか。
あの姿で聖力が使えないとバレてしまったら、それはそれで大問題になる気もする。
仮にも王花なわけだし。
まぁ、二人の王子が去る時の「覚えていろよ、金剛。」という彼らの捨て台詞は気になるけれども。
でも、隊長のは『お願い』しただけで『命令』をしたわけではないし、ましてやルシウス王子から隊長へのちゅは全くの想像の範囲外だったわけですし。
憶えていろと言われましても。
と言ったところだ。
正確にいうと私の所為ではない。
そう、彼らが勝手に兄弟同士、仲の良いちゅ、をしただけだ。
と、いうことにしておきたい。
いささか、年齢がいっている兄弟のちゅ、かもしれないが世の中にはそんな仲の良い兄弟だっているはずだ。
…。
…。
まぁ、いいか。
早くこの大量の食器を片づけて、他の仕事も終わらさなきゃ。
私が開催したお茶会なんだもんね。
後片付けまでがお茶会。だよね。
再び、私は目の前の食器軍に意識を戻した。
忍び寄る者がいるとも知らずに。




