お茶会開催①
緩やかに心が崩壊していく様が解る。
世界は美しいと言ったのは誰か。
心が死にそうになっているのに。
世界は薄暗く、全てが無意味に動いている。
とくとくと、血が流れる。
この、呪われた血を全て身体の中から出し切れたなら。
世界は変貌を遂げ、孤独の中で蹲る者を光の中へと導いてくれるだろうか。
とくとくと、血が流れる。
お前はこの暗闇からは抜け出せないのだと。
今日も無慈悲な朝が来る。
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私、頑張ってる!
「私、頑張ってるって叫びたーい!!!」
自分の部屋に入った途端に叫ぶ。
この間気付いたけれど、この金剛の部屋、防音なんだよね。
と、いうことで。
再び。
「よくやってると思うのー!!!!!」
と叫ぶ。
あー!!
ストレスマックスだぜ。
普段より身体も動かせないから更にストレスマックスだぜ!
人前に出るのだからと、魔道士の講義はお休みにさせられたのに金剛にふさわしい礼儀作法をみっちり教えられたり、女装のセルフィス隊長と一緒にお嬢様や青年騎士の方々(しかも身分の高い)と一緒に出たくもないお茶会に出席したり。
慣れない事をしている所為でストレスマックスなのだ。
ほっと一息できるのが、洗濯の時と就寝前のこの時間帯だけって、もういじめかっての。
しかも、お茶会なんて傍から見ると遊んでいるようにしか見えないから、他の魔道士たちから「いいなぁ、金剛は。」なんて言われる始末。
くそう。
お前らもあの怖いお茶会出てみろよー。
金剛と王花候補だぞ。
注目の的で、お茶を一口飲むのにも皆の視線が痛いんだぞ。
あんなに緊張して飲むお茶の味なんて、まったく美味しくないんだからな!
あいつら、憶えてろよ!
「はぁぁぁぁぁ。」
深い溜息が出る。
自分の思慮の浅さが憎い。
もう少し単純に命が狙われると思っていた自分の思慮の浅さが。
刺客に命を狙われる。とか、飲み物に異物混入とか、総スカンとか分かりやすいやつが来ると何故か思っちゃっていたんです。ええ。
でも、いつまでたっても何も起こらない。
もしかすると、このまま何も起こらずに舞踏会くるんじゃないのか?と、思わなくもない。
…もう、ぶっちゃけそれならそれで、お茶会不参加で魔道士の講義を受けに行きたい。
どうも、あの表面だけの付き合いのお茶会は、隊長もいるとはいえ、御遠慮したい。
だって、面倒なんだもん。
…お茶会出るの止めてみませんか。って隊長に言ってみようかなぁ。
…ルシウス王子の課題の魔導書の翻訳もまだ途中だし。
はぁ。
…お茶会にこれ、持ってこうかな。
いやいや、この魔導書おおっぴらに広げてちゃダメでしょ。
普段閲覧禁止なのに。
それよりお茶会、つまらないの何とかならないのかな…。
毎日毎日話す世間話なんてないっつーの!!
…。
…。
…。
まてよ…。
そうしよう!
お茶会が楽しくないなら楽しくしたらいいじゃない!
金剛だよってアピールしているのに何もしてこない相手が悪い!
それなら、楽しくしてしまえばいい!!!
もうやめた!
暗殺者が来るならいつでも来い!
待つだけの金剛様ではないのだ!
もう面倒くさいお茶会はこりごり!
うおおおおおお!!!
心の底から吠える。
よし!
やったろ!
その日は朝から忙しかった。
朝一で洗濯機もどきを回して、全ての仕事を終える。
隊長との訓練も忘れない。
ここまではいつもの日常。
この後は隊長の仕事終わりを待つ傍ら、ルシウス王子の課題である魔導書の翻訳を始める時間だが、今日は一日を使って開催されるお茶会なのだ。
私は小走りに王宮を目指す。
既に、首都専属の現役聖職者と魔道士の皆様方がお待ちかねだ。
先日までに行われたお茶会は6地域を順番に開催されていた。
ということで、今日はこの金剛主催のお茶会を開かせていただく事にしたのだ。
今日のこの日の為に準備は万端。
今日は舞踏会の前の現役聖職者と魔道士、見習いの聖職者、魔道士の皆様を巻き込んでのお茶会という名のゲーム大会だ!
そのための日曜日開催!
事前に本来はお休みの日曜日なので、不参加でもいいよと聖職者や魔道士の皆様には伝えたのだが、内容を話した所、結構乗り気でとても嬉しい。
そうだよね。
日曜日だって、舞踏会の為に休日勤務を強いられていたもんね。
皆。
普段、首都にいないお嬢様や青年騎士の皆様への警護や雑用、皆で手分けしてやらされているんだもんね。
今日は一日、楽しんでね!
6地域主催のお茶会があるなら、首都主催のお茶会もありだろう!ということで金剛主催のお茶会!
いざ、開催です!!!
そう!
お茶会とは名ばかりの!
チームに分かれてルシウス王子の元までたどり着いてごらんなさいゲーム!!
開催です!!
「はーい、金剛主催のお茶会参加者さんはこちらで受付してくださーい!」
白い聖職者が可愛い笑顔を振りまいて、参加者を誘導している。
今日は首都勤務の現役聖職者の皆様、魔道士の皆様が地方から来たお嬢様や青年騎士の皆様を誘導してくれる事になっている。
これも一重に、ルシウス王子、バロン隊長、セルフィス隊長のお声掛けのたまものだ。
もちろん、見習いの聖職者、魔道士の皆様も実はお茶会参加者として招待している。
受付を済ませた皆様にはチーム分けのくじを引いてもらう事になっている。
聖職者見習いは聖職者見習いのボックスを。
魔道士見習いは魔道士見習いのボックスを。
地方のお嬢様はお嬢様専用のボックスを。
青年騎士の方々には青年騎士専用のボックスを。
金剛の名前とはいえ、最後にはルシウス王子の名前が記載された招待状。
断るバカはいないだろう。
もちろん、高飛車な高貴な方々によって城を追い出された一度は舞踏会に参加されたのにかえっていったお嬢様、青年騎士の方々も再度招待することも忘れない。
一度は参加してみようと、わくわくとした気持ちで遠縁を頼って首都まで来たのに幻滅して故郷へ戻られるのは今後の首都のイメージとしても芳しくない。
ということで、沢山の梟便たちに協力していただき出来る限りの招待状を送る。
優雅に独りで3部屋使っていたお嬢様を王子の名前で閉めだして、一人一部屋にしてもらう事も忘れない。
ここは首都であって、お前の所の領地ではないんだよ。と暗に示すためもある。
首都に来たからには、領地での地位は関係ないのだと解らせるのだ。
ということで、チームの人数管理もばっちりだ。
城の部屋割りだって完璧だ。
城の大清掃!という名目でこの間、まとまりつつあった勝手に占拠されていた有力者たちの部屋割を首都の王子の名目で変更させ、移動していただいた。
金でものを言おうとした若者にはルーカスの氷の説教を付けた。
理論では誰にも負けないバロン王子命のルーカスさん。
バロン王子に頼んでもらって、部屋割や管理をルーカスさんにお任せした。
有難う、バロン王子!
流石、泣く子も黙る腹黒ルーカス。
有無を言わさずに、着々と準備が進んで何よりです。
もちろん、くじでチーム分けがされるなんて真っ赤なウソ。
既にチーム分けはされている。
カードには見えない名前が記されており、その名前の人がボックスに手を入れた瞬間、そのカードが自然に手に行くように魔法がかけられている。
それも、最上の。
なんたってルシウス王子の魔法だ。
誰も解けない。
勢力の強いお嬢様と青年騎士が集まったらこのお祭りもどきの意味がない。
だが、強制的なチーム分けをされたより偶然に決まったチームだと思わせていた方が面白い。
主に、参加側もだけど、私が。
私が。
面白いというか面倒事が避けられて良い。
何度も言うが、このお茶会は私のストレス発散の為のお茶会だ。
私に面倒な事は降りかからない様、最新の注意を払って行うべきだろう。
私のお茶会なのだから!
セルフィス隊長と私は、もちろん主催者なのでチームには含まれない。
さぁ、皆さんの実力、試させて頂こう!
協賛はセルフィス隊長!
セルフィス隊長、出資、有難うございます!と、心の中で感謝する。
若干の王子の懐具合も心配しながら。
でも、お金カムバック作戦ももちろん、ある。
成功するといいな。
「金剛さん、皆様、会場に集まりましてよ。」
聖職者側のフローラ先生が桜色の髪をふわふわとさせながら、小走りに知らせにきた。
今回のお茶会は、聖職者、魔道士の上位者と先生方、、そして城で働いている方々の重役の皆様、王子を囲んでの計画だ。
毎年の舞踏会の混乱を若干迷惑に感じていた皆様だからこその意見が多々出された。
楽しもう。
舞踏会開催を楽しもう。
主に、私が!!!!
女性は頭と胸にリボンとして。
男性も胸と腕にネクタイ及び腕章として、チーム毎に色わせされたそれぞれの色を身に着けてチーム毎に集まっている。
うん!
分かりやすいし、そして可愛い!
頭のリボンはアリスみたいな少し大振りのリボンにしてある。
聖職者側の裁縫の先生が見習いの皆様と一緒に作ってくれた。
急きょなお願いなのに、練習になるからと快く引き受けてくれたのだ。
それぞれの胸には、初めての方でもわかるように自分の出身と職務のある方は職務、出身地などの簡単なプロフィールが書かれた、こちらで用意した名札を付けてもらっている。
もちろん、私の胸にも名札がつけられている。
セルフィス隊長のは、女性の名前の「セル」という名前が記されている。
相変わらず、あの光るかつらは取れない。
どうやったら、あのかつら、取れるんだろう。
今では魔道士の中にもセルのファンが出現してきている。
あの、美貌と王子の好みの体型だもんね。
わかる。
ファンになっちゃう気持ち。
とりあえず、セルフィス隊長は主賓として(なんたって本当は出資者だし)檀上で既に優雅にお座り頂いている。
もちろん王花候補なのでバロン王子の隣で。
ルシウス王子はとあるところで待機してもらっている。
(何故、私だけその場に行けないのだ。とかなんとか、最後まですねていたけど。景品なので静かに待っていてほしい。)
ざわざわと談笑をする参加者を横目にマイクらしきものを手に檀上に立つ。
さてと。
コホンと一度咳をすると、参加者さんに向け、言い放った。
「皆様こんにちは!
私が、アンドレアです!
私、そしてこちらのセル主催のお茶会に参加していただいて光栄です!
今日のお茶会は一風変わった催しを用意させていただきました。
今日は皆様にチーム毎に競い合っていただきます。
題して!『囚われたルシウス王子を救出せよ!』
皆様にはこれから課題を解いて頂きつつ、この城の何処かに囚われているルシウス王子を救出していただきます。
一番にルシウス王子を救出できた方には、何と!ルシウス王子と一緒に食事を楽しめる時間をプレゼント!
また、女性の方にはフローラ先生お手製のドレス。
男性の方にはフォルガさんお手製の魔道具が授与されまーす。
もちろん、上位入賞者の方には差異はあれど景品が付きますので上位入賞を目指して頑張ってください!
課題はそれぞれ時間制限がありますのでご注意ください。
そして、もし、その課題を時間内に解けなかった場合!
もちろん罰ゲームが用意してありまーす!
強制でーす!
途中リタイアも同様です!
ただし、身体的に気分が悪くなったりなどしたときは青い腕章を付けている魔道士や聖職者さんに声を掛けてください!
城の至る所に青い腕章の魔道士や聖職者さんたちが待機していますので、途中で抜け出すなどの行為は出来ない様になっていまーす。
なので、頑張って課題をクリアーしていってください。
異論反論、認めません!
何故なら!招待状に参加申し込みをした方は全ての事柄に同意したものとする。という注意事項の魔法が発生するからでーす。
最後に、この企画にかかったお金を出してくれた現在は遠くにいるセルフィス隊長に感謝を込めまして。
『囚われたルシウス王子を救出せよ!』ゲーム、開催でーす。」
事前にこのゲームの趣旨を説明してあった魔道士、聖職者見習いの方々の先導で、おおー!とかキャー!とかの仕込みの叫び声が上がる。
有難う。
盛り上げ隊!
有難う。
さくらの皆様。
中には本当に景品目当てに喜んでくれている方もいるようで何よりです。
「それでは、最初の課題をバロン王子から発表していただきます!」
こうして長い一日の幕が開いたのだった。




