呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん②
こんなに早く扉を開くと思わなかった。(金剛、談)
こんなに早く扉が開かれるとは思わなかった。(隊長、談)
「隊長おおおおおおお!!!!」
無事に一通り踊れるようになり、時間も時間だったので練習を終了し便利だという理由から直接部屋に帰れる扉を出て2、3分。
閉じられたと思った扉から血相を変えた金剛が再び扉の向こうから現れた。
生首がぁぁぁぁと叫びながら。
何事かと思い、金剛を部屋へ残し金剛の部屋に入るとテーブルの上に知っている色の知っている物体がキチンと置かれているのが見えた。
「…あれは…。」
そう、あれは、俺の知っている限り、あいつの…。
テーブルの上にキチンと置かれたそれは、現王子の髪の毛で作られたであろうかつらとご丁寧に聖職者の制服が置かれている。
「…あいつ…。」
側に置かれたカードが目に入る。
しかも、他の奴にわからないように古代語だ。
「…。」
あいつ…本当に金剛の事を?
…。
カードにはこれらを身に着け来いと指定時間と場所が書かれている。
しかも、金剛へ。ではなく、愛しの王花へとある。
…。
本当に、彼女を王花にしたいのか?
…。
セルフィスは深い溜息と共に、怖がっている彼女を迎えに部屋に戻ったのだった。
*********************************
「ほ、本当に生首とかじゃ、ないですよね?」
隊長との踊りの練習を終え、シャワーでも浴びよーと気軽に扉を開けたら妙にテーブルの上が光り輝いていた。
近寄ってみると、光っていたものはっ!!
…王子の髪の生首…。
「…安心しろ、これはかつらだ。本体はない。」
「…。」
隊長の後ろからそっと自分の部屋に入る。
そーっとテーブルを覗くと、やはり光っている。
かつらだと言われても、薄暗い部屋の中で光っているそれは、とても異様だ。
…本当でも、不気味だ。
もう少し近寄ってみるべきなんだろうなぁと思っていたら、隊長が手を握ってくれた。
「!」
「…部屋の電気をつける。一緒に来い。動けるな?」
「は、はい。」
そこで待っていろ。と言わない所が隊長だなぁ。と変な所で感心する。
白い手袋が暗闇の中で綺麗にほのかな色を醸し出している。
心臓がバクバクしているのはあの、変な物体の所為か。
それとも…。
とりあえず、落ち着こう、私。
妙な所で女に戻っている場合ではないのに、なさけない。
隊長と共に部屋の出入り口まで行き隊長が電気をつけると、確かにテーブルの上には頭だけのマネキンが置かれている。
美容室とかである、あの頭だけの。
って!
あの王子!
嫌がらせか!!!!
髪を切らせたことの!!
怖いは!!
頭だけのマネキンが暗い自分の部屋のテーブルに突然置かれていてしかも、その髪の毛が薄暗く光っていたら引くわ!
あああああ!!!!
くそー。
怖がらせるための嫌がらせをしやがって!!あの野郎!
「金剛、もう大丈夫だな?」
隊長が上から屈みこんで目を見つめてくる。
「!」
ニコリと、隊長が笑った。
!!!!
「しかし、あいつも…何だってこんな変装グッズを届けに来たんだ。」
「…へ?」
「カードに書いてあるだろう?」
「あ!」
あの怪しいマネキンにばかり目を奪われていたが、机の上にはかつらと共に聖職者の衣装とカードが置かれていた。
・・・・あと、花も。
…。
もう大丈夫だなと呟き手を離した隊長がテーブルに近寄り顔に手を当てる。
「あいつ…。」
渋い顔をしている。
まぁ、そりゃそうだ。
一刻の王子がよく解らん魔道士見習いの部屋に自分の切った髪をマネキンにかぶせて聖職者の制服と花と共にテーブルに置いて逃げてったんだ。
変態としか言いようがない。
「…これ…嫌がらせじゃなくて、変装グッズだったんですね…・。」
脱力して王子の置いて行った変装グッズを改めて眺める。
カードには愛しい王花へという始まりで、この衣装を着て下記の場所にくるようにと明日の場所と時間が書かれていた。
「…。何、この、カード…。」
私をあくまで王花と呼ぶつもりなのか。
さっきは金剛!いるか!と叫んでいたのに。
どこまでも嫌味な奴!!!
「…このかつら…つけなきゃいけませんかね…。」
聖職者の制服を身に着けるのはいいとしよう。
聖職者の制服は可愛いし。
実は一回着てみたい。なんて思っていたし。
いや、だって心は乙女だもん。
何歳になっても、乙女は乙女だから。
でも・・・・。
隊長と私はじっと、その怪しげに光る髪を見つめた。
「…。」
百歩譲って、かつらをかぶって変装していくのはいいとしよう。
よく解らないが、勝手に人の部屋に入り変装グッズを置いていく変態でも一国の王子だ。
王子に会うには、やはり何かと大変に違いない。
男女と噂される、魔道士見習いの金剛が王子の元へ通っているとなれば世間体が悪いのかもしれない。
なので、変装グッズはわかる。
わかるのだが。
「…なんで、自分の髪でかつらを作っちゃったんですかね…。」
問題は、そこだ。
「私、断っていいと思いますか?」
隊長にうつろな目を向ける。
じっくりみてみると、大変いい出来だ。
そしてマネキンも高そうだ。
クリスタルのマネキンってどうよ。
透明な人の顔をしたクリスタル。
怖い以外の何物でもない。
「…どうだろうな…。」
隊長もお困りだ。
でも。
人の髪で作ったかつら。しかも、あの王子の髪。そしてきらきらしている髪を自分の頭につける勇気がでない。
「…せめて、他のかつら、なかったんでしょうか。」
茫然と二人で異様な雰囲気を醸し出しているかつらを眺める。
「…まぁ、目立つよな。」
隊長、問題はそこではありません。
目立つけど。
そう言うと隊長がおもむろにかつらに手を伸ばす。
さらりと隊長の手に渡ったそれは、やはり綺麗だ。
・・・まぁ、綺麗ですけど。
綺麗な、髪ですけど。
バサッと裏返し後ろ側を見る。
「…まぁ、よく作られてはいる。」
だから…問題はそこでもないです。隊長。
しげしげと隊長がかつらを眺めているのを、この事態を処理しきれずぼーっと眺めていたら突然、自分の部屋の扉をコンコンとノックされた。
『!!』
王子?
王子か?
「失礼いたします。王子専属部隊、隊員のルーカスです。こちらにアンドレア様はいらっしゃいますか?」
「あ!はい!」
そう、私の名前はアンドレア。
この間の王子の一見で覚えましたとも。
自分の名前を。
私の声を聞き、扉がガチャリと音を立てて開く。
扉から姿を現せたのは、スラリとした男性だ。
王子同様、黒に近い群青色の軍服を着用している。
あの制服は王子の部隊専用のものなのかもしれない。
しかも、彼は金糸だ。
知能派なのか、銀色の髪に、銀色のフレームのメガネをかけている。
かなり知的な印象だ。
そして、やっぱりイケメン。
この国の金糸の皆さんは顔で選ばれているのか?
部屋の中のセルフィス隊長を見つけてほんの少しルーカスの眼が見開かれるが、すぐさま平静さを取り戻した様だ。
「…セルフィス隊長殿もこちらにいらしたとは。失礼いたします。」
「ああ。」
隊長も何食わぬ顔で彼を迎え入れる。
慣れているんだなー。
「ルシウス王子からの伝言を届けに参りました。」
「俺は外した方がいいか?」
「いえ。その必要はないかと。」
「そうか、では。」
「ルシウス王子は明日、先ほど届けた衣装を全て身に着け指定した時間に来るようにと念を押されました。」
…やっぱり、これ、着ていかなきゃなんだ。
っていうか、かつらね。
問題は、この、かつらね。
「…一つ、聞いてもいいか?」
「ええ。」
「聖職者の制服はいいとしても、このかつらは少々目立たないか?」
「…私もそう王子に申しあげたのですが…。」
「なら…。」
「舞踏会も近いので、そろそろ六商が動く頃だとおっしゃいまして。」
何?六商って。
「…金剛だからか?」
「いえ、聖職者の制服を着て王子に会うのならば金剛様とはわかりません。」
「なら。」
「そうではなく、王子は彼女を今回の王花にするつもりの様で。」
「…。」
…な、何だろう。よく解らない話しが今私の目の前で行われている。
しかも、よく解らないけど私の話しをされているらしいのに、さっぱり読めない。
「金剛にするつもりはないと?」
「・・・さぁ、直接伺ってみればよろしいのに。御兄弟なのですから。」
え!?
「ええええええええええ!!!!?????」
ちょ、ちょっとまって。
いきなり大声を出した私を二人が注目する。
いや、だってね、今ね。
「え?…あの、ちょっと待ってくださいね。」
「どうしたんだ、いきなり大声をだすな。」
「だ、だって。王子と隊長が御兄弟?」
「それがどうした。」
「え!それがって?」
えええええええええ????
この人、っていうか、この隊長、王子なの?
隊長なのに?
え?
「…隊長…王子様…なんですか???」
え?
やだ、二人とも、そんな今更な目をするのはやめてください!
だって、誰もそんな事!
あれ?
まてよ。確かジルさんが王子は三人って…。
え?
もしかして…。
「…隊長、この方は…。」
「ああ。すまん、ルーカス。この娘は城にくる前以前の記憶がないらしい。」
「!」
「つまり、この国の一般常識的なものがほとんどわかっていないんだ。」
「あ、あの…。」
「なんだ。」
「つかぬ事をお聞きしますが、この国の王子様ってもしかして・・。三人いらっしゃって…。その中にバロン隊長も含まれたりしてます?」
「そうだが?」
やっぱりねええ!!!
隊長って!
王子様なのに隊長って名乗らないでくださいよう!
まぎらわしい!
頭、くらくらしてきた。
じゃぁなにかい?
私、王子様に色々怒られたり、一緒に洗濯したり、さっきまで一緒に踊りの稽古したりしてたわけ?
隣の部屋使って?
うそだろおおおおお!!!!
殺される。
世の中の女性に。
「…大丈夫か、金剛。」
「・・・え、えと。ちょっと思考が追い付いていませんで。」
あ、そうだった。
今の問題はそこではなくて。このかつら問題だった。
「…えーと。えーと。」
頭、働けー。
「あ、そう!このかつら、やはりつけなきゃいけないんですか?」
「そう、伺っております。」
「…。」
隊長―。と隊長に助けを求める。
「…。六商が動いているのか。」
「ええ。」
あ、また、よくわからない話しだ。
「・・ルーカス、そろそろ普段の話し方に戻ってくれないか。やりにくい。」
「いや、しかし…。」
「この金剛なら問題はない。少し、変わった奴なんだ。とりあえず、扉を閉めてお前もこっちで座れ。」
…変わっていてわるうございましたね。
「金剛、このルーカスは、俺らの幼馴染だ。」
へー。
「腹黒だがな。」
…へー…。
こ、怖い。
・・・まぁとりあえず・・・
「じゃぁ、お茶入れます。ちょっと待っててください。」
そういって、私は自分の部屋を後にしたのだった。




