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07


日差しが容赦なく降り注ぐ。


風が吹いてもぬるい。


「……夏だな。」


藁でできた帽子を被り、手にはスコップと園芸用鋏を持って、畑へ足を運ぶ。


数歩後ろでは、今日も狼がついてきている。





まずはジャモを掘り起こす。


ちゃんとジャガイモだ。いい感じに育ってる。嬉しい。


次はトマル。赤く色づいた実は、張りがあって今にも弾けそうだ。…美味しそう。


ギョクネは引き抜き、…レティは株元から切り取っていく。


桶の中はあっという間にいっぱいだ。




思い返すと、本当に苦労したな。


大雨が降った日には様子を見に来て、


虫に喰われた葉を取り除いて、


土が乾いたら水をやった。


もちろん、枯れた苗だってあった。


その度に相談に行って、新しい苗を買った。


……ちゃんと育ってくれてよかったな。


桶の中の野菜をもう一度見る。


苦労した分、美味しく食べられそうだ。


時折、立ち上がっては背を伸ばし、固まった体をほぐしながら、最後の一株まで収穫していく。


ふと振り返れば、狼がトマルを口に咥えようとしていた。



「……つまみ食いしちゃダメ」


狼はピタリと動きを止め、何事もなかったように元の場所に戻ってまたこちらを見ている。


……食べられる前に、早く収穫してしまおう。


尻尾が少し下がってる気がする。






収穫した野菜を水で洗う。


「せっかく採れたから、サラダにしよう」


採れたてのトマルを切る。ギョクネとレティも一緒に皿へ盛り付ける。


支給品のパンも添えて昼食にした。


「はい、どうぞ。新鮮なサラダだよ。あとパンも。」


多めに盛ったサラダを狼はガツガツ食べる。


パンまで器用にくわえて食べ始めた。


意外にも狼は肉ばかり食べるのかと思ったけど、野菜も普通に食べるのだ。


たまに口の周りに血がついてることがあるから狩りに行ってるのかもしれない。


リベルも口にサラダを運ぶ。


「うん。美味しい」


採れたての野菜はみずみずしい。冷えてたらもっと美味しいのに。


川で冷やしてみてもいいかもしれない。


「今度は焼いてみようかな」


火を通してみても美味しそうだ。


もう完食している狼を見て、リベルは微笑んだ。









じりじりと肌が焼けそうな日差しの中、なるべく木陰を選んで森を歩く。


リベルが持っている籠の中には、収穫したての野菜が入っていた。


森を抜けると、フォルム街へ着いた。


振り返れば、狼は森の中に引き返していくところだった。


……街へは入らないらしい。


行き慣れた苗屋のドアを押す。


「こんにちは」


ハンナさんの旦那さんはダンさんというらしい。…しばらく見ない間に肌が焼けている。


「…収穫できたから、お裾分けです…」


「…初めてなのに、上手に育てたね!


何回も来てくれて…頑張ったね。


とっても美味しそうだ。もらっていいのかい?」


ダンさんが笑って籠の中の野菜を丁寧に見ている。


「ハンナと食べるよ!ありがとう」


フードの上からくしゃっとまた頭を撫でられる。


……また髪がボサボサになってそうだ。


「前にハンナに匂い袋くれただろう?羨ましかったんだ。今日この野菜自慢するよ」


そう言って、奥から小さな鉢植えを何個か持ってくる。


「お礼に、もう使わないから、よかったら鉢植えもらっていってよ」


…まるで物物交換みたいだ。


そんなつもりはなかったんだけど、ありがたく受け取った。


「初めての収穫嬉しかったんだね」


どうやらリベルは笑っていたらしい。


ダンさんが、にやにや笑ってこっちを見ていた。







すっかり日が暮れた帰り道、また森を歩いていた。


新しい苗を買って、鉢植えまで譲ってもらった。


前の種類に加えて、今までとは違う苗も買った。


狼もよく食べるし、もう少し畑を広げようかな。


気づけば森の中を早歩きしていた。


家に入り、苗を一旦畑に置いておこうと、縁側を通り、庭に向かう途中、リベルの目に飛び込んできたのは、思いもよらない光景だった。






「あーーーーーーー!!!」


生まれて初めて、こんな大きい声を出したかもしれない。


リベルはショックで膝から崩れ落ちた。


声を聞いた狼が顔を出す。




狼へ勢いよく振り返って、


「ちょっと。ねえ。薬草畑が荒れてるんだけど。」


狼に訴えた。



先日植えた薬草畑が、狼の足跡だらけになっている。


狼は自覚があるのか顔を逸らす。


「……今度から、ここから立ち入り禁止ね」


薬草畑の手前を指でなぞるように線を引く。


…狼は顔を逸らしたままだ。


「わかった?」


リベルは狼の顔を覗き込んで、念を押す。


狼は渋々頷いた。


落ち込みながら、縁側から家の中を見ると、雑に置かれた洗濯物が見えた。


もしかしたら、取り込んでくれたのかもしれない。


……怒りすぎたかな。


縁側で丸まっている狼が少し小さく見えた。


夜ご飯、ちょっと豪華にしてあげよう。






夜になると、少しだけ暑さが和らぐ。


リベルは縁側に腰を下ろし、桶に足を浸してちゃぷちゃぷと水を揺らした。


揺れる水には、魔法で作った氷がぷかぷかと浮かんでいる。


その隣では、狼が丸くなって眠っていた。


もうすぐ夏本番だ。


「……クーラーが恋しい。せめて扇風機がほしい…」


今は作れる技術がない。どうやって作ればいいのか見当もつかない。


無いものはしょうがない。


明日は湖に行って涼もう。


そう考えながら、狼の隣へごろんと寝転んだ。




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