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04


日に日に日差しが強くなり、畑の苗も少しずつ大きくなってきた。


ジャモは青々と葉を茂らせ、トマルには小さな花が咲き始めている。


「私も夏支度しないと…」





リベルはヴェリタスに来ていた。


「今回も良品ですね。合計で、銀貨八枚になります。」


「ありがとうございます」


前回と同じ受付嬢が査定をしてくれた。


…今日はギルド内が静かだな。キョロキョロ周りを見てしまう。


「今日はフォルム街で季節市があるので、静かなんです。」


「……季節市?」


「夏前に普段いない商人とか、珍しい食べ物を売りに集まる日ですよ。帰りに寄ってみたらいかがですか?」


私も行きたかった…と小声で愚痴が聞こえた気がする。受付嬢は笑顔を作り直し、


「またのご利用お待ちしてますね」


と見送ってくれた。プロだな。


……季節市か。何があるんだろう。せっかくだから行ってみようかな。


フォルム街に着くと、普段から賑やかな街が、いつもより客を呼ぶ声が飛び交っている。フードをより深く被る。


あちこちに並ぶ露店に、どこから見ればいいのかわからない。


炭火で焼かれた肉の香ばしい匂いが漂ってくる。


…お腹が鳴りそう。


候補に入れておこう。と思いながら、隣のアクセサリーには目もくれず歩いていると、仕立て服の露店で足が止まった。


…庶民向けの服じゃない。貴族が着るほどいいものじゃない。


でも、一目で生地の良さがわかる服が並んでいる。触ってみると、少し使われた跡はある。


………古着かな?十分に着られそう。


「あの、このシャツとズボンください」


「はいよ。銀貨3枚ね」


掘り出し物を見つけた気分で、お金を払って店を出た。


見るだけでも楽しいな。

色んな露店を人混みの中歩く。


他にも、布や糸など、夏支度に必要なものをいくつか買った。




「あれ?お嬢ちゃんも来てたのかい?」


…ハンナさんだ。


両手にいっぱいの紙袋を抱えている。胸元には匂い袋が揺れていた。


「うちもいつもと変わり種のもの置いてるんだ。興味あったらまたおいで」


また頭をポンポンと撫でられた。


…紙袋が当たって少し痛い。


ちょうど、苗屋で質問しようと思っていたところだから、あとで寄ってみようかな。


その前にさっきの匂いのお肉屋さんに行こう。







リベルは家に帰っていた。


ハンナさんは季節市で忙しそうだったので、長居はやめた。


それでも寄ってよかったと思う。


「いいこと、教えてもらったな」


薬屋にも、苗屋にも乾燥したミントが吊るされているから、忙しい合間に尋ねてみた。


虫よけになるらしい。


…そういえば図鑑に書いてあったな。


早速今あるミントを天日干ししよう。


ハンナさんの店では、レモンバームを混ぜた蝋燭が売っていたので買ってきた。見た目も可愛い。部屋もいい香りになりそうで一石二鳥だ。


「…自分でも作れそうだな。」


また今度、図書室で調べよう。


台所のかまどには、レモンバームが鍋の中でゆらゆら泳いでいる。


時折、火加減の様子を見ながら、リベルは紙袋から男性用のシャツとズボンを取り出した。


クリーン魔法をかけ、膝丈に合うように一気に鋏を入れた。そこから、三つ折りにしてほつれが出ないように縫っていく。


…生地が分厚くなって、少し固いな。


ぐりぐり針を力任せに動かしながら、一周縫い終わった。


ベルトを通すところに麻紐を通す。


ふーっと息を吐きながら、固まった肩を回した。


作業着を脱ぎ、肌着の上から袖を通した。


「………楽だ」


肩が軽い。動きやすい。


袖を少し捲り、麻紐を結ぶ。


大きめのシャツは、お尻が隠れる長さだ。


「部屋着の完成…!」


…これだよ。家の中での楽な格好は。


鏡の代わりに窓の前でくるくる周りながら、自分の姿を見る。


…うん。いい出来だ。


一人で頷いていると、レモンバームの香りが強くなってきた。そろそろ火を止めても良さそうだ。


煮出したレモンバームを染み込ませたシーツは、今庭先で風に揺れている。


明日には新しいシーツで眠れるだろう。


古いシーツはまた雑巾にしよう。




いつもの縁側でスープとパンを齧る。


「スープが沁みる…」


キノコで出汁を取ったかいがあった。


美味しい。あとで追加でキノコも干そう。


明日は日差しよけを作ろうかな。


リベルはこのゆっくりとした時間が好きだった。








翌朝、縁側へ出ると、干していたキノコがなくなっていた。


地面には見慣れない獣の足跡だけが残っていた。

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