02-01
雲一つない蒼い空が広がっている。そよ風が心地良い。
「休みって、最高」
縁側で寝転びながら乾かしている洗濯物を横目にうとうとしていた。
本当は、クリーン魔法だけでいいんだけど…。自己満足だけど、少しだけ手をかけたら、清潔感ある匂いになるんだよね。
「…ふぁ〜あ」
気持ち良すぎてあくびが止まらない。
……作業着も随分汚れたな。そろそろ新しいのほしいなあ。
お金、稼いでみるか。
今までは手が回らなかったけど、ようやく取り掛かれる。
きのこも、果実も、ハーブだってあるんだから、きっと薬草くらい生えてるよね。
「明日は薬草の本を借りてこよう」
気持ちいい風に身を任せ、目を閉じた。
翌日、また扉を開けたら司書と目が合った。驚いた表情は一瞬で、「また来た」とでも言いたげな顔になる。
「…今度は何を借りるつもりですか」
…この学校で話しかけられるのなんて初めてかも。この司書、変わっているのかもしれない。
「薬草図鑑を…」
司書は何事もなかったように踵を返した。
あれ?返事はないの?と一瞬よぎったが、気にせず探すことにしよう。
リベルも歩き出そうとしたその時、目の前に『薬草図鑑 大全集』の文字が飛び込んできた。
「期限は明後日までで良いですね?」
リベルは頷き、図鑑を受け取った。
◇
まずは家の周りを探してみよう。
桶を足元に置き、お手製の手袋をはめる。薬草らしき草はたくさんある。匂いだけでは見分けられない。それでも手掛かりくらいにはなるかもしれない。一株手に取り、鼻を近づけてみる。
…無臭だ。こっちはツンとくる。
「…臭い!!」
これは無しだな。順調だ。手も鼻も止まらない。
「…っ!!」
お手製の手袋はとても薄い。棘が刺さった。
最悪だ。調子に乗ってどんどん進めすぎた。今度は慎重に摘もう。
痛む指を気にしながら、再び取り掛かる。大きな虫が目の前を横切った。
「ぅわっ……!!」
尻餅をついた。
………虫は無理だ。慣れない…。
再び起き上がり、ついた土を払うと、ミントが目に入った。
「そういえば、生えてるんだったな」
煮出したお湯で濯ぐとほんの少しだけ香りが残る。…ついでに摘んでおこう。
「…これくらい摘めばいいかな」
中腰が続いてたために腰が痛い。大きく伸びをすると、体のあちこちがバキバキと音を立てた。
ランプに火を灯し、本を開く。ゆらゆらと揺れる火は目に優しい。ここからが本番だ。
食べ物の時もそうだった。本と照らし合わせるのは時間がかかる。姿勢を正し、取り掛かった。
「…予想以上だ」
仕分けた籠には摘んだ草の三分の一ほどの薬草が残った。
本は期限通りに返却すると、司書は何も言わず次の本を差し出した。
『薬草類似図鑑』
…何を考えてこれを渡してきたんだろう。見分けるくらいできるんだけどな。
気が進まないが、表紙をめくった。
「面白い」
これは間違える。確かに似ている。めくる手は止まらない。
「………ん?」
…本当に?
ミントと間違える薬草があるのか。急いで保管していたミントを取り出す。
…これは、かなりの数で混ざってそう。
何度も何度も本と見比べる。
「勿体ないことをした……」
司書にありがとう、と心の中でつぶやく。
まさか、ポーションの材料になる薬草だったなんて。
翌朝、薬草をめいいっぱい袋に詰めた。
大切そうに抱え、薬屋を目指して、リベルは森の中を歩き出した。




