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そっちかよ! ユウリのドタバタ転生記 〜神様、『太さ』スキルって何!?〜  作者: エフピロ


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9/11

第9話 期待

 引き続き、ユーリくんとクラウディアに「御使の聖女」について聞いていく。わからないことだらけだ。


「リリアみたいな聖女がいるのに、別枠で聖女ってややこしくないの?」


「むしろ逆ね。リリアたち神殿の聖女は、御使の聖女様を真似て、その一片ほどの奇跡を起こす者と言われているわ。御使の聖女様は本当にごく稀にしかご降臨されないから、普段は神殿の聖女が及ばないながらその役割の一端を担っているの」


 うーん、なんか私すごい強キャラ扱いなの?

 ぜんっぜん中身伴ってないのに。


「そんなすごいって言うけどさ、前の帝国の聖女さんはそんな変なスキルでどうやって国を救ったの?」


「大昔のことだし、他国のことだし、詳しくはわからないな。過去数百年で御使の聖女様のご降臨は何度かあったとされている。しょうもない話や、真偽がわからないような話もあるけどね。一番有名なのは、『オルレーンのドラゴン』の話かな」


 ……私が「しょうもない話」の最新話になるオチ、あると思います。


「そうね、他国の話だけれど、この国でも皆が知っている逸話ね」


「オルレーン国を苦しめる、邪悪で、とてつもなく強いドラゴンがいました。御使の聖女様は仲間と共にそのドラゴンの討伐に向かい、ひとり、ドラゴンと共に消え去りました。御使の聖女様はいなくなってしまいましたが、国には平和が戻り、繁栄しましたとさ、という話」


「相打ちしちゃってるじゃないの!!」


 やらされる方の立場になって言って欲しい。

 他人事じゃないんだぞ、まったく。


 ……やっぱりドラゴンとかいるんだ?


「ともかく、神様から祝福を授かったユウリは、御使の聖女様であることは間違いないんだ。だから、父と共に僕からもお願いしたい。どうか、頼む」


 ユーリくんが頭を下げる。

 そんなこと言われてもねえ……。


「あなた達が私だったら、どうやって国を救うっていうの? 使えるの「太さ」だけよ? あのツチノコアローで帝国倒せる?」


 言われて顔を見合わせる二人。


「それは……私は聖女ではないから」


「逃げんな」


「とても太い木を育てるとかじゃないか?」


「それでどうすんのよ」


 だめだー、話にならないー。


「だいたい、具体的に何かしてほしいことがあるわけ? 何かピンチなことあるの? この国」


 そもそも頼む頼むと言われるだけで、具体的に何かを頼まれた記憶がない。アバウトに聖女に期待しているというのだけはひしひしと感じるのだけれど。


「いやあ、帝国と長年争い続けていて、国土が百年前の二割になっちゃってるんだよね」


 頭をポリポリかくユーリくん。


 きみねそれ、ちょっと忘れ物しましたみたいなテンションで言うことじゃないでしょ。


「そう遠くないうちに決戦が行われる予定よ。負けたら、それが最終決戦になる可能性が高いわ。だから、いま御使の聖女様たるユウリがこの国に現れたのは偶然じゃないと思うの」


 いやいや時間ないんかーい。

 思ったよりピンチすぎだろこの国。


 私がなんかこう、色々慣れて使いこなせるようになって、ね? それからならワンチャンあるかもって思ってたけど、それじゃ無理ゲーすぎない?


「戦力差は?」


「あちらがおよそ二十万、こちらは四万」


 いや、無理すぎでしょ。


 そりゃ、一発逆転できそうな御使の聖女なんか出てきたら期待するよね。

 される方はたまったもんじゃないけど……。


 ゲームだなんだでその手の知識はある、はず。

 考えろ、考えろ私……!


「太さ……太さね……クラウディア、何か守りのシールドみたいな魔法を教えて? できるだけ広範囲の」


「おお、やる気になってくれたか!」


 ユーリくんが私の手を握ってぶんぶん振り回す。


「逃げていいなら逃げるけど」


 とにかくやれそうなことを試さないと。


「私も使えるのだけれど……神殿の方がそういう魔法は強いわ。行ってみましょうか」


 なるほど? 鬼に金棒、僧侶に防御魔法。これはわかる。


「そうなのね、行ってみましょう」



 こうして、私は初めて王宮の外へ出た!


 見るからにに中世ファンタジーって街並み! 石畳の道、石造りの建物。太陽、海、白壁〜ってイメージの南欧よりは、北欧に近いかな。

 まあ、部屋の窓からはちらちら見えてはいたんだけどね。


 変な話だけど、旅行に来たみたいな気分でワクワクする。


 そういえばこの国の気候ってどうなってるんだろうか。いまは夜にやや肌寒いものの、ちょうど良い感じだけれど。


 思ったよりも整然としていて綺麗なのは、ここが王宮のすぐ側だからか。貴族街とかなんだろう、きっと。


 徒歩でもそれほど時間はかからずに目的の場所に着いた。


 神殿は、想像に違わず白を基調とした石造。

 天井が高く厳かな建物がそびえ立っていた。


「魔術の得意な神官はいますか? 教えを乞いに参りました」


 クラウディアが門のそばに立っていた係の人? に話しかける。

 顔見知りのようだ。


「これはクラウディア様。教練をご希望ですか。ご予約はされていますか?」


「ないわ。でも急ぎで受けたいの。事情があって……」


「それでしたら、こちらにご記入を。いくらフォーディン公爵家のご令嬢とはいえ、神殿では平等に順番を守っていただく必要がございます」


「僕が頼んでもかい?」


「王太子様……ご無理をおっしゃらないでくださいませ。神殿が王家の命に従うのは約定に沿ってのみ。ご存知でしょう」


 なかなかカタブツな受付である。

 いや、ルール曲げて頼んでるのはこっちなんだけどね。


「じゃあ私が頼んでもダメ?」


 これは「御使の聖女」とやらのパワーを調べる良いチャンス。しゃしゃり出てみる。


「おや、あなた様は……? お初にお目にかかる方ですね。王太子様や公爵令嬢様とご一緒ということは高位の貴族様でございましょうが、同様にございます」


「そうね、初めましてですね。ユウリっていいます。御使の聖女やってまーす」


 てへっ、とピース。


「み……っ! しょ、少々お待ちを!!!」


 血相を変え、ダッシュで奥に消えていく受付の人。


「あらー」


 思った以上の反応にポカーンとする私。


「……ユウリ、今のはちょっと性格悪いですわよ」


 クラウディアに小声でダメ出しされる。


「ごめんごめん、ちょっと試してみたくなったんだけど、想像以上だったわ」


 効果ありすぎて逆に使いづらいわ、この印籠。


 待つこと一分。


「こ、これはこれは御使の聖女様! ご降臨されたとの話は伺っておりましたが、まさかお越しいただけるとは!!」


 奥からおじさんが走ってきて、勢いそのままに正座みたいに座って平伏した。

 だからその土下座みたいなポーズのまま床を滑ってきた。サッカーでゴールした人みたいに。


「ひえっ!」


 思わず後ずさってしまった。


「……どちら様?」


 クラウディアに問いかける。


「ケラー枢機卿よ、ここのトップの一人」


 おお、偉そうな感じ。


「そうなのね。どうもどうも、ユウリって言います。魔法、教えてもらえません?」


「それはもう今すぐいくらでも、ハイ!」


 話のわかるおっちゃんであった。


 ……しかしこの世界の人たち、「御使の聖女」にちょっと夢見すぎじゃない?

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