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そっちかよ! ユウリのドタバタ転生記 〜神様、『太さ』スキルって何!?〜  作者: エフピロ


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第6話 神様、いたんですね

 と、いったわけで。


 異世界に来てしまった私、大野悠里ことユウリは、当面の衣食住を手に入れた! のだけれど。


「……これからどうしよ?」


 実際、ここにいつまでいられるのだろう。

 いつまでもニートして甘えているってわけにはいかないだろう。

 でも、私がこの世界でできることってなんだろう?


 思えばこの世界のこと、何にも知らないんだよなあ。


 王族や貴族がいる。

 聖女もいる。

 魔法もある。

 いい人も悪い人もいる。


 知ってるのこれくらい? これじゃあねえ。


 私は、ただの日本の大学生だった。それなりに学校に行って、それなりにサークルとかゼミに行って。

 いきなり死ぬとも思ってなかったし、死んだらこんなことになるとも思ってなかった。


 鏡を見る。


「ユウリ、か」


 私ではない、私。金髪美人のユウリがこちらを見ている。


 ベッドに横になる。


 クラウディアも、ユーリくんも、いきなり出てきた私のことを本当はどう思っているのだろう。

 私みたいな転生者、他にもいるんだろうか。


 そのうち帰れるのかーー帰る?

 日本に?

 死んだのに?


「ま、いっか!」


 根っからのずぶとさが私の良さである。

 明日のことは明日考えよう。

 私は布団に潜り込むと、目を閉じた。




「おお、大野悠里よ! 神の導きにより異世界への転生をーー」


「もうしとるわ!」


 スッパーン、と目の前のハゲたおじいさんの額をはたく。


 また夢の中で目が覚めた。

 ユーリが出てくるのかと思いきや、お爺さんが今更なことを言い出すから思わずツッコミしてしまった。


 ……夢になんか出すの好きね、この世界。


「いきなり神の髪を叩く奴がおるか」


 ひたいをさすりながら話すお爺さんこと、神様。


「髪ないじゃんそこ。ダジャレ言いたいだけでしょ。それより、異世界への転生なら間に合ってんの! あなたが私をあの世界に連れてきたんでしょ!?」


「ん、まだ何もしておらんが?」


「え?」


「は?」


 噛み合わない二人。


「じゃあ、なんで私は他人の中に入ったりしてたのさ」


「そんなことになっとったのか? 知らん」


 何この神様。全知全能でもなんでもないやつね。


「あー、心は読めてるからな。あまりなめるでないぞ」


 うわ、めんどくさ。


「心に留めてもしゃーないか。うわ、めんどくさ」


「思ってから声に出したらワシが二度傷つくじゃろが。まあよい。もう行き先が決まっておるならそこで良いか。本当はワシのとこに来てからになるはずだったんだがな。あとはスキル的なやつの話じゃが……」


 おっ? そんなラノベ的展開、あるの?


「なんと!」


「なんと……?」


「異世界でも会話ができる能力を授けよう!」


「……いやもうそれもできてるから。確かになんでできてるのかはわからないけど」


「なんじゃと? となると隣の神かなんかが……いやワシの縄張りじゃしな……」


 なんかブツブツいってる神様。


「なんかこう、パーっと世界救えるとか、すごい魔法とか、なんでも詳しく鑑定できるとか、そういうのないの?」


「そんなもん気軽に与えたら世界のバランス壊れるじゃろが」


 ちっとは考えろ、みたいなジト目をされた。


 でもまあ、それはそう。定番スキルの話しただけだからちょっと納得いかないけど。


「そうじゃのう。お前の特技とか長所はなんじゃ?」


「えっ? うーん、難しいこと聞くのね。ずぶといところとか?」


「それ、長所か? またスキルと言いがたいもんを……まあよい」


 神様は私の頭に手を乗せる。


「……お前には、『太さ』を授ける。ありがたく受け取るように」


「は? なんて?」


 頭の上に暖かい光を感じる。


「アディオス、アミーゴ」


 なんでスペイン語やねん、と思った瞬間、私は王宮の客間のベッドで目を覚ました。




「はぁ!? 太さって何よ! 失礼しちゃうわね! ……まさか!」


 慌てて鏡を見る。

 しかし、特にでっぷり太ったりはしていなかった。


「ほっ、そんな安直なものではないようね」


 でもじゃあ、太さって何? 今よりずぶとくなってもしゃーないし……。


 朝食のために部屋を出る。

 考えながら廊下を歩いていると、クラウディアがやってきた。


「あら、今日は早いのね、ユウリ」


「おはよう、クラウディア。また迎えにきてくれたの?」


「ええ、お知り合いもいないでしょうから、お父様にも相談してしばらくユウリの世話をさせてもらうことになったわ」


 公爵令嬢が? ほんとかいな。

 というかこの子普通にいつも王宮にいるけど、やっぱ特殊な役職とかなのだろうか。強いし。


「それは嬉しいわ、ありがとう。ところでクラウディア」


「なんですの?」


「太くなれ!」


 両手をクラウディアに向けて念じてみる。

 何も起こらない。

 うーん。


「……お世話、いらないみたいね」


 冷たい視線。


「あー! ちがうちがう、そうじゃなくて!」


 慌てて夢の中の出来事を説明する私。

 神様なんて言って信じてくれるかしら?


「……それで、私が本当に太っちょになってたら、ユウリ、今頃あなたずいぶん痛い目にあっていたかもしれませんのよ?」


 笑顔で手の先にバチバチと弾ける光を灯すクラウディア。


「はい、ゴメンナサイ」


 クラウディアをイジるのはしばらく抑えておこう。そう思った朝だった。


 朝食の場にはユーリくんも同席した。

 とってもながーい机に三人だけ。少し落ち着かないがレストランか何かだと思って気にしないことにする。


「そうだ、クラウディア。魔法教えてよ!」


「魔法? 良いですが、ユウリが使えるかはわかりませんわよ? 素質のある家系、ない家系がわかれますの」


「やってみなきゃわかんないってことね? じゃあ試してみましょ。私、この世界で何ができるのか知りたいの」


「良い心がけじゃないか。僕も付き合うよ」


 ユーリくんはクラウディアといたいだけだろー。


「ありがと、じゃあ練習できそうなとこ、教えてね」


「ああ、それなら中庭に行こうか」


 朝食を済ませ、三人で中庭に向かったのだった。

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