第5話 対決!
「どうした! その者はユーリの皮を被った悪魔! 捕えよ!」
王様がもう一度、号令をかける。
じわじわと包囲網を狭める衛兵たち。
「お前たち! 僕を誰だと思っているのだ!」
『ユーリくん! 王様はもうリリアに操られているわ! リリアはこの会話を聞きながら王様を操ってるはずだから、その辺にいるはずよ! スーパー王子パワーかなんかで捕まえて!』
「なんだそれは! そんなものないぞ!」
えー、ないのー?
異世界の王子様っていったら、なんかスーパーななんか、あるもんじゃないの?
「クラウディア! ユウリによると近くにリリアがいるはずだと。やれるか!」
急にクラウディアに話を振るユーリくん。
あんなか弱い女の子にそんな無茶な。
「かしこまりました、ユーリ殿下」
クラウディアが両手を広げ、そして何かを呟きながらその手を前に出す。
その両手からとんでもない量の白い炎が飛び出す!
『うわわわわ!? 焼ける! 焼け死ぬ!』
「案ずるな、彼女のこの炎は悪しき者のみを焼く審判の炎、正しき者は焼かれんよ」
そんなこと言われても、私聖人でもなんでもないから少し焼けたりしない?
しかし確かにその炎はユーリくんも私も素通りする。大広間を覆うほどの炎になったと思ったら――
「ぎゃあああああ!」
玉座の裏から転がり出るリリア!
うーん、みんな無事なのに一人だけ炎に包まれて転がってて、これほどわかりやすい「悪」がいるだろうか。
あっ、なんか別のおっさんも二人ほどのたうち回っている。
いやーねえ、王宮って。
「くっ……! ヒール!」
炎は止み、リリアは見た目焦げてもいないけれど、結構なダメージは負っているように見える。
今使っているのは回復魔法だろうか。自らを白い光で覆っている。やっぱ聖女ってそういう系の魔法、得意なんだろうか。
「ふん、代々宮廷魔術師を務めるフォーディン公爵家の中でも天才と呼ばれるこの私、クラウディア・フォーディンから逃れられるとでも?」
クラウディアがどこから出したのか扇を広げて決めポーズしてる。
悪役令嬢っぽーい。
っていうかめちゃめちゃ強かったのねこの子。
「まだまだぁ!」
リリアは立ち上がり、また何か魔法を使おうとする。
「させない!」
しかしそれよりも速く、ユーリくんが鞘ごと手にした剣でリリアの脇腹を叩く!
いやー、この子もやるねえ。
「ぐ……ヒール」
それでも回復しようとするリリア。
本当に諦めが悪い。
よし! ここだ!
ぽんっ!
私が表に出る。
「これでおしまいよ!」
もはや勝敗は決しているのに諦めないリリアが悪い!
私はリリアの前で両手を突き出し、高らかに吠えた!
「太っちょになれ!!!」
……。
何も起こらなかった。
静寂。
痛いほどの。
なんで! この流れ、初めてスキル発動するシーンでしょ!
誰かこのいたたまれない状況から私を助けて!
『これで一件落着、だな』
あっ、ユーリくんなかったことにしないで。
表に出てきてくれてもいいのよ? 私を隠して?
「あとは衛兵に任せても問題ないでしょう、殿下、ユウリ、お疲れ様でした」
クラウディア! せめて冷ややかな目で「今のはなんですの?」って言うくらいして!
と、その時。
みんなが片がついた感を出したその一瞬の隙をつき、リリアが立ち上がり脱兎のように走り出した!
毎度逃げ足速いなこいつ! そして諦めが悪すぎる!
「こら! まちなさーい!」
しかし、リリアは運が悪かった。
なぜなら私だけはまだ汚名返上のチャンスを狙っていたから……!
脇を通り抜けようとしたリリアの横っ腹にタックル!
「ぐぇ! がっ……!」
もんどり打って転がって、柱に激突するリリア。
「名誉挽回タックル、思い知ったか!」
腰に手を当ててドヤ顔で立つ私の前で、リリアは衛兵にぐるぐる巻きにされていったのであった。
……太さスキル、何にも役に立たなかったなあ。
そこからのお説教タイムはリリアには恐怖だったろう。
ぽんっ!
「リリア! あんたねえ、こんな純粋な子に罪着せるなんて許されるわけないでしょ!」
ぽんっ!
「全くだ! 自分の欲のためにこの僕を操り、愛しのクラウディアを陥れるなど!」
ぽんっ!
「だいたいね! ……」
ぽんっ!
「おまえはだな!……」
ぽんっ!
延々、私とユーリくんが激しく入れ替わりながら説教していったのだった。これ、たぶんやられる方は相当怖いと思う。見た目的に。
その後も怒りに任せて入れ替わり続けていたところ――
ぽぽんっ!!
「おおっ!?」
「んんっ!?」
なんと二人に分離した!
「ユーリ殿下!? それにユウリ!?」
クラウディアが私たちを見回して目を白黒させている。
「あー、なんか遠心力的なアレでスピンアウトしたみたいな?」
神様の言ってた「徐々に」の結末、こういうことかーい。
「何を言っているのかわからんが、少なくとも高い負荷が影響した、のだろうな……」
困惑気味のユーリくん。
なんでもいいじゃん戻れたんだし。
「まあ結果オーライっしょ!」
ちなみにちゃんと服も着ているからね? ユーリくんと同じ服。
ハダカだったら大変だった。こういうところは神様のおかげかも。
「違いない」
ユーリくんとガッチリ握手する。
「さて、それはそれとして」
『リリア!』
私とユーリくんの声が見事にハモる。
お説教はまだまだ続くのだった。




