第4話 勝負! 謁見の間にて!
「父上! ご無事ですか!」
バァン! と扉を開けて謁見の間に入るユーリくん。
ちゃんと昨日みたいな服に着替えている。
続けてクラウディアも一礼して入る。
「おお、ユーリ! 女になったと聞いておったが、何事もないようじゃな?」
「はい、それも事実なのですが、今は私に戻っております。父上はお変わりありませんか」
「うむ。わしはどうもないが……今は、というのは?」
『……出ていい?』
「ああ」
『ふんっ!』
ぽんっ!
「な、なんと……!?」
絶句する王様。
「お初にお目にかかります、大野悠里といいます。他の世界から来たんですが、来たときに息子さんと混ざってしまったみたいで」
我ながら客観的に聞いたら意味がわからない説明だと思う。事実しかないけど。
「他の世界……」
王様、絶句する。
「私はたぶん前の世界で死にました。そうしたらたまたまユーリくんの体に魂の隙間があって、そこに入ってしまったらしいです。まあその原因を作ったのは聖女リリアなんですけどね」
「なんと? では貴様はアンデッドの魔物のようなものか! 皆の者、ひっ捕えよ!」
あら?
……いきなり風向き変わりすぎじゃない?
衛兵たちがわらわらと駆け寄ってくる。
『父上! 何を申されるか! 悪いのはリリアではないか!!』
ユーリくんが怒ってまたぽんっと入れ替わる。
見慣れた王太子を捕えるのは躊躇する衛兵たち。
「どうした! その者はユーリの皮を被った悪魔! 捕えよ!」
あー。これもう手遅れだったかな。
リリアにやられてるわこの人。
『ユーリくん! リリアがこの会話を聞きながら王様を操ってるはずだから、あの子その辺にいるはずよ! なんか王子パワーとかで_なんとか捕まえて!』
「なんだ王子パワーって! そんなものないわ!」
えー、ないのー?
異世界の王子様っていったら、ねえ?
「クラウディア! ユウリによると近くにリリアがいるはずだと。やれるか!」
急にクラウディアに話を振るユーリくん。
あんなか弱い女の子にそんな無茶な。
「かしこまりました、ユーリ様」
クラウディアが両手を広げ、そして何かを呟きながら前に出す。
その両手からとんでもない量の白い炎が飛び出す!
『うわわわわ!? 焼ける! 焼け死ぬ!』
「案ずるな、彼女のこの炎は悪しき者のみを焼く。正しき者は焼かれんよ」
そんなこと言われても、私聖人でもなんでもないから少し焼けたりしない?
しかし確かにその炎はユーリくんも私も素通りする。大広間を覆うほどの炎になったと思ったら――
「ぎゃあああああ!」
玉座の裏から転がり出るリリア!
うーん、みんな無事なのに一人だけ炎に包まれて転がってて、これほどわかりやすい悪がいるだろうか。
あっ、なんか別のおっさんも二人ほどのたうち回っている。
いやーねえ、王宮って。
「くっ……!」
炎は止み、リリアは見た目焦げてもいないけれど、結構なダメージは負っているように見える。
「ふん、代々宮廷魔術師を務めるフォーディン公爵家の中でも天才と呼ばれるこの私、クラウディア・フォーディンから逃れられるとでも?」
クラウディアがどこから出したのか扇を広げて決めポーズしてる。
悪役令嬢っぽーい。
っていうかめちゃめちゃ強かったのねこの子。
「これで一件落着、だな」
いやー、リリア諦め悪そうだからどうかなー。
ユーリくんは「ふぅ」とひとつ息をつき、クラウディアの方を見る。
そんな二人の一瞬の隙をつき、立ち上がって脱兎のように走り出すリリア! 毎度逃げ足速いなこいつ!
『やっぱり! こら! まちなさーい!』
瞬時にぽんっとチェンジし、脇を通り抜けようとしたリリアの横っ腹にタックル!
「ぐぇ! がっ……!」
もんどり打って転がって柱に激突するリリア。
「ただの平民タックル、思い知ったか!」
腰に手を当ててドヤ顔で立つ私の前で、リリアは衛兵にぐるぐる巻きにされていったのだった。
そこからのお説教タイムはリリアには恐怖だったろう。
ぽんっ!
「リリア! あんたねえ、こんな純粋な子に罪着せるなんて許されるわけないでしょ!」
ぽんっ!
「全くだ! 自分の欲のためにこの僕を操り、愛しのクラウディアを陥れるなど!」
ぽんっ!
「だいたいね! ……」
ぽんっ!
「おまえはだな!……」
ぽんっ!
延々、私とユーリくんが激しく入れ替わって説教していたのだった。たぶん見た目相当怖いと思うこれ。
その後も怒りに任せて入れ替わり続けていたところ――
ぽぽんっ!
「おおっ!?」
「んんっ!?」
なんと二人に分離した!
「ユーリ殿下!? それにユウリ!?」
クラウディアが私たちを見回して目を白黒させている。
「あー、なんか遠心力的なアレでスピンアウトしたみたいな?」
「何を言っているのかわからんが、少なくとも高い負荷が影響した、のだろうな……」
「まあ結果オーライっしょ!」
ちなみにちゃんと服も着ている。ユーリくんと同じ服。
ハダカだったら大変だった。そういう意味でも結果オーライとしか言えない。
「違いない」
ユーリくんとガッチリ握手する。
「さて、それはそれとして」
『リリア!』
私とユーリくんの声が見事にハモる。
お説教は続くのだった。




