表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/40

第39話 天と地と

「ハッハァ! どうした! もう疲れたのか!」


 その後のロウの攻撃は熾烈を極めた。


 基本的に強いモードで攻撃してきて、攻撃を受ける瞬間だけ無敵モードになる。

 運よく強いモードの時に攻撃が当たっても、すぐに無敵モードになると傷が治る。


「ハァ、ハァ、ハァ……チートを使いこなし始めるとか、厄介キャラね」


 メインで戦っていないとはいえ、私も息が上がってきた。


「ユウリ、ぜぇ、ぜぇ、どうする」


 ユーリくんも肩で息をしている。

 私のヒールが使えれば、五分五分以上に戦うこともできるのだろうけれど、長期戦を覚悟すると副作用が怖くて使えない。


「私が前に出ます」


 唯一、一人で圧倒できるのは蘭さんだけだった。蘭さんの光の薙刀は強いロウであっても受けられない代物らしく、避けるため近づけない。


「ガァッ!!」


 それでもロウは、無敵モードで斬られながら近づくという無茶をしてくる。そして近づいたら強いモードになって襲いかかる。


「させないわよ! リフレクト!」


 そしてそういう時には私がリフレクトで守る。


「このままじゃジリ貧ね……」


 戦えてはいる。いるのだけど……こちらは消耗していっている。

 リリアと蘭さんのヒールでケガは治せているものの、体力と魔力の消耗はどうしようもない。

 ロウが本当に疲れないというのなら、そのうち限界が来る。

 一般の兵士の援軍が来たところで、私たちが戦えなくなったら強いロウには蹂躙されて終わりだろう。


「さっきからお前のそれウゼェんだよ!」


 ロウの矛先が私に向く!


「リフレクト! リフレクト! もひとつリフレクト!」


 高速で動くロウをリフレクトで包むのは困難だったが、自分を守って、その上でロウの移動する直線上に置くことはできる。


 ぼむん


「チッ!」


 ロウはリフレクトにぶつかって跳ね返される。


「ライトアロー! ていっ!」


 自分を守るリフレクトを消し、そのロウに向けフレア砲を撃つ。

 直撃! ……しかし直前に無敵モードになっていたようで、ロウの傷はみるみるうちに治る。


「……埒が開かないって、まさにこういうことですわね」


 クラウディアも、魔法を撃つ頻度が下がってきている。残りの魔力が乏しいのだろう。


「ユウリお姉様! 私ももうすぐ魔力がなくなりそうです!」


 ヒール要員のリリアが叫ぶ。


「くそ〜……」


 何か、何か手はないか……。


 とはいえ私に使えるのはあとはサークルくらい。

 ロウは飛べるので、瓦礫に巻き込むこともできない。

 あれで頑張って数キロメートル押し戻したところで、焼け石に水だろう。


 だからと言って諦めるという選択肢はなかった。


「ハァっ!」


 白い翼をはためかせ、蘭さんが空中へ飛び上がる!

 黒い翼のロウがそれを追う!


「おお……」


 ウォーレンさんが感嘆のため息を漏らす。

 夕暮れに差し掛かった太陽を背景に見るその空中戦は、もはや、神話の中の世界だった。


「蘭さん! あまり遠くに行かないで! リフレクトが届かなくなるから!」


「わかりました! ていやぁ!」


 蘭さんの気合い一閃!

 上空から光の薙刀を、投げ槍のようにロウに投げつける!


「グォッ! ガハッ!」


 ロウは体を貫かれ、勢いのまま落下し、地面に串刺しになる!

 しかしやはり無敵モードなのか、ダメージはなさそうだった。ただ、貫かれた状態なので身動きには困っている様子。


「ライトアロー! ライトアロー!」


 私はフレア砲を連射。ロウの体の半分を吹き飛ばす。

 しかし、やはりすぐに回復する。

 光の薙刀も元々ライトアローだからか、蘭さんの手から離れしばらくすると薄れて消えていく。


「いてぇな、クソが」


 そうは言うものの、ロウはピンピンしている。


 ……今の串刺し状態、使えるかもしれない。

 私は着地した蘭さんに駆け寄る。


「蘭さん、一か八か、賭けてもいい?」


「はい、何か策を思いつきましたか」


「ええ。崖の下にロウを串刺しにできます? 三分後くらいに」


「……やってみましょう」


 バサッと翼を翻し、蘭さんが飛び立つ。


「ユーリくん! 私の手を斬って!」


「な……何を!?」


「軽くでいいから! ヒールするの」


「わ、わかった」


 サッと、切先で私の腕に傷をつけるユーリくん。


「ヒール」


 すぐに、私はその傷を治す。

 よし、これで身体能力強化はオッケー。


「クラウディア、いい? 私が崖から飛び降りたら、みんなを連れて逃げて」


「えっ、飛び降りるって、なぜ」


「いいから。フゥ……森羅万象に宿る聖なるマナよ――」


 私は息を整えると、サークルを唱え始める。


「ユウリお姉様、サークルではあいつは……!」


 私は詠唱を続けながら、大丈夫だと一つ頷く。


「皆さん! ユウリが何かをします! 撤退の準備を!」


 クラウディアが声をかけて回る。

 幸い今はロウは蘭さんにかかりきりで、空中を飛び回っている。

 これなら撤退はできるだろう。

 何せこの岬の先端から出るには狭い和室の扉を通るしかないから、一人ずつになる。順番に通るには時間がかかるのだ。


「……神の護りよ、来たれ!! サークル!!!」


 私はいつも以上に気合を入れて光を集める。

 バスケットボールより大きいくらいのサイズの光の玉ができあがる!


「蘭さん!」


 ちらりと私を見た蘭さんは、一段と加速してロウに迫る!


「……太郎、こんなことしかできぬ母で、ごめんね」


「グアッ……何度やっても、無駄だって言ってんだろうが!」


 蘭さんの光の薙刀が、その胸を貫く。

 そのままの勢いで、二人は崖下に落ちていく!


 私は崖のフチからそれを眺める。

 二百メートルくらいあるだろうか、とんでもなく高い崖。


 落下点を確認。

 助走のため十歩ほど下がる。


「悠里さん!」


 蘭さんの声。真ん中くらいまで戻ってきたのだろうか。


「いっけええええ!」


 私はダッシュして、光の玉を持ったまま崖から飛び降りる!

 目標は、ロウ!


 自由落下でどんどん加速する! 光の玉をその中で私は抱える!


 半分……もうちょい……今!!!


「弾けよ!!!」


 私は真っ逆さまになりながら、下に向かって光の玉を放り投げた!

 ビカッ!!! と、光の玉が弾け、ものすごい光が辺りを満たす!


「グアッ! なんだ!?」


 ロウの声が聞こえる。

 よーし、そのままそこにいろよぉ!


 そう、私は天地反転サークルを放ったのだ!

 下に向かって広がるサークルで、ロウを押し潰してやろうと考えたのである!


「よし! リフレクト! リフレクト! リフレクト! リフレクト!」


 目が眩んで見えないので、私は着地対策のリフレクトを適当に放りまくる!

 あとはまあ、運が良ければ死なないだろう!

 身体を丸めて耐ショック体勢をとる。


 ……痛くないといいなぁ!


 がしっ!


 そんな私の足を、誰かが掴む。


「悠里さん!」


「蘭さん!?」


 なんと自由落下する私に追いついて、掴んでくれたらしい。

 さすが蘭さん、助かった!


「また無茶を……!」


 そのまま引っ張り上げられる。

 逆さになったまま下を見ると、いい感じにロウの上にサークルが広がっていく!

 お料理に使うボウルみたいな感じで、ガンガン地面を削っているのが見える。


「よーし、そのまま行っちゃえ!」


 崖の上まで戻ると、まだユーリくん、クラウディア、リリアが残っていた。


「ユウリ! 大丈夫でしたか!」


 クラウディアが駆け寄ってくる。


「大丈夫大丈夫、蘭さんのおかげでね!」


 下を見ると、サークルが結構な広さになっている。二百メートルくらい?

 半球形だから、深さも百メートルくらいかな。


 あっ、サークルの片側、この岬の下を削り取ってる。


「みんな、逃げて! できるだけ遠くに! ここ崩れるかも!?」


 よく聞くと、バキ、パキというサークルに巻き込まれた瓦礫の音にまじってゴゴゴゴゴという不穏な音が聞こえてくる。


「えっ!」


 慌てて和室を通って向こう側へ向かう三人。


「さて、蘭さんは私を持って飛んでもらえますか?」


「わかりました」


 蘭さんに掴んでもらって、中心点の方へ行く。


「ぐがががががが……!」


 ずっと押し潰されながら、それでも生きているロウ。

 なんてやつだ。


 そろそろ深さ三百メートルくらいになっただろうか。


「そろそろいいわね。バイバイ、ロウ! あの世でエカチェリーナさんに土下座しな!」


 私は上空からフレア砲を発射する!

 放たれたライトアローが光の玉に命中!


 再びすごい光に満たされる!


「蘭さん! ここから離れて!」


「はい!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!


 サークルが消え、下支えがなくなった岬が、ものすごい音を立てて崩壊していく!

 岬よりも深い穴に、すっぽり埋まっていく。

 その振動によって、サークルでできた穴のフチの瓦礫たちも流れ込む。

 ものすごい音と土煙。


 私と蘭さんは、穴がすっかり埋まったのを見届けると、みんなの元へと飛んで戻ったのだった。


   *


「ユウリ!」


「ユウリお姉様!」


「オラン様!」


 みんなは新たな崖のフチのあたりにいた。待っていてくれたのだろう。


「見ての通り、カタは付けたわ。……完璧ではないけど」


「……あの大崩落、ユウリがやったのですか?」


「ええ。サークルを逆さにして大穴開けて、そこにあの崖全部飲み込まれていったわ。ロウはその下敷き。生きているとしても、出てくるまでは相当長い時間かかるでしょうね」


「ユウリ様。ありがとう」


 ウォーレンさんが頭を下げる。


「な、親父。御神体、怒らせるとやべーだろ?」


「うむ……オラン様の逸話に勝るとも劣らぬ所業であったな。これは色々と考えねばならぬな」


 皇帝がアゴを指でなでる。

 なんか、嫌な予感がするけど。


「さ、帰りましょ!」


 やっと、やーっと、私のスペシャルお気楽異世界ライフが始められる!

 私はクラウディアとリリアの手を取って、坂道を下りはじめた。


「先に行ってください。私は、少し残ります」


 蘭さんは一人、崖の方を向いて正座をする。


「……わかりました」


 それ以外にかける言葉が見つからない。

 二百年に渡る親子の因縁は、外から推し量れるものではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ