第33話 逆襲のユウリ
「リリア! 息のある人にヒール!」
ロウが吹っ飛んでる隙に、私はリリアの鎖を引きちぎり、ヒールをかける。
「う……ユウリ……お姉様…………っしゃあこのクソ魔族!! ロウてめえ覚悟キメろやああああ!!!」
人の話聞いちゃいない。
ロウに飛びかかっていくリリア。恨みが強すぎる。
「エカチェリーナを……!」
ウォーレンさんの頼みを聞くまでもなく、私は間髪を入れずにエカチェリーナさんの側に跳躍し、ヒールをかける。
「ヒール! ……ヒール!! ヒールだってんだろもっと出ろよ私の魔力!!!」
脳の血管がはち切れそうなくらいヒールする。
普段のヒールの倍は強い光に包まれているエカチェリーナさん。
しかし、傷が治る様子はなかった。
……すでに、絶命していた。
死者は、ヒールでは治らなかった。
「……ウォーレンさん、ごめんなさい」
立ち上がり、他の倒れている人たちを見る。
「ヒール。ヒール。ヒール」
さっき頭を掴まれて怪我をしたブランくんの傷口が消えていくのが見える。
しかし、他に怪我の癒えるものはなかった。
「ランスくん! ブランくんを安全なところへ!」
「わ、わかりました!」
駆け出すランスくん。
「くそっ……なんてことを……」
ユーリくんが惨状に歯軋りをする。
「とにかく、いまは全員でアイツ、やっつけるわよ」
私は全員の鎖を引きちぎる。ユーリくんとウォーレンさんは怪我をしていたのでヒールする。
「エカチェリーナの仇……殺す……!」
ウォーレンさんがものすごい殺気と共にその巨体を加速させる! ものすごい速度! ヒールの効果だ。
「チッ、どうなってやがんだ!」
「ぐっ!」
ロウはリリアを蹴り飛ばし、ウォーレンさんにぶつけようとする。
「ふんぎゃ!」
吹き飛ばされたリリアがぶつかるも、ウォーレンさんは意に介さず突き進む! すごいパワーだ。
「ふん!!」
勢いそのままに、肩からロウに体当たり!
吹き飛ばされるロウ!
……と思いきや。
一メートルくらい後ずさったものの、なんとその巨体を受け止めた。
「なに!?」
ウォーレンさんが驚くのも束の間、その巨体が宙に浮く。ロウが投げ飛ばしたのだ。
こいつ、強い――
「クラウディア! リリア! ホーリーフレアを!」
遠距離範囲攻撃で弱らせたい。
「わかりました!」
「わかった!」
二人の声が同時に響く。
『ホーリーフレア!』
二人から白い炎の奔流が流れ出し、ロウを包む!
「ホーリーフレア! ライトアロー!」
私は私で、その隙にフレア砲を準備する。
と――
「がはっ……」
お腹の辺りに激しい痛みが走る。
「な……ごぼっ……」
なぜ、と言おうとしたら、口から湧き出る血の塊に邪魔をされる。
「まだ生きてんのか。案外しぶといな」
目の前にロウがいる。
炎に紛れて一瞬で間合いを詰め、私のお腹をボディーブローみたいに殴りつけたのだろう。
「ホーリーフレアね。何も変わらんなお前らは。悪しき者を焼く。正しき魔族に効くと思うか」
無傷――
何を言っているのか。
正しい? この、お前の行いが?
「ヒー……ごほっ」
ヒールを唱えたいが、上手くいかない。
目の前が急激に暗くなってくる。
立っていられなくて膝をついてしまう。
「ヒール!」
咄嗟にリリアが駆けつけて、ヒールをかけてくれる。
「邪魔すんなよ、いいところなんだからよ」
ロウは無造作にそのリリアに近づいていく。
リリア、こいつはまずい、逃げて――言葉に出せない。
「ロウ! てめぇユウリお姉様に何てことしやがる! 食らえや!」
器用にも、私にヒールをかけながらキックする。
その足はロウを捉えたかに見えたが、ロウが瞬間移動のような速さでそれをかわし、間合いを詰める。
「アイシクルランス!」
そのとき、ホーリーフレアは効かないと踏んだクラウディアが、別の魔法をロウに射かける。ナイスタイミング!
「ちっ」
ダルそうに舌打ちし、後ろに飛び下がるロウ。
翼があるからか、軽いジャンプでも三メートルほども距離を開ける。
「はあっ! とうっ!」
その着地点にユーリくんが斬りかかる!
流れるような鋭い連続技に、ロウも守勢にまわる。
「なぜ、お前如きがこんな動きをできる」
ロウは私のヒールのバフ効果を知らないはず。
これがなかったら本当にやばかった。それくらい強い。常識はずれだ。
「……ありがとうリリア。自分でやれるわ。ヒール」
私はその間にリリアのヒールのおかげでいくらか楽になったので、自分でヒールをかける。
めちゃめちゃ痛かった。自分のお腹がどんな状態だったのか見たくもないくらいやばかった。
「ぬおおおお!」
ウォーレンさんも加勢する。
私のヒールバフを受けた二人相手にも立ち回るロウ。なんなんだこの強さは。
「……ホーリーフレア、ライトアロー」
私は改めてフレア砲を準備。さすがにこれが当たれば無事ではないはず。
しかし、戦っている三人の動きが速すぎて狙いが定まらない。
「それなら……! リフレクト!」
私は、ロウに対してリフレクトをかける!
「なんだ!?」
「ぬおっ!」
それにぶつかって弾き飛ばされるユーリくんとウォーレンさん。
私は二人を尻目にリフレクトの開口部に回り込む!
「ここなら逃げられないわよ! くらえ!」
私はかまくら状のその中に向けて、フレア砲を発射!
「なんだそれは!」
ロウは体を捻ってほとんどゼロ距離射撃のそれをかわす!
器用なやつめ!
しかし、リフレクトに跳ね返ったライトアロー弾がその背中に直撃した!
ドオーン!!
すごい音と共に前方に弾き飛ばされたロウが、リフレクトから弾き出されてきて私にぶつかる。
「ぐ……なんだ今のは……!」
あれ受けてまだ動けるの!?
「ライトアロー!」
私は次の弾を仕込む。
「させるか!」
しかしロウの方が速い!
まずい!
その時だった。
ザンッ
ロウの黒い翼の片方が、切り飛ばされる。
「お前……は……!」
剣を両手で握り、鋭い攻撃を加えたのは――
「ブランくん!?」
怒りの涙に顔を濡らした、ブランくんだった。




