【第十一話】旅の始まりはいつだって幸から始まる。
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~童話に隠された“世界の滅び”の真実とは?少年が辿り着く先に待つものとは何か。誰もが知る物語の、誰も知らない謎を追うファンタジー譚、開幕!~
朝日が窓のガラスを通り、ベッドの僕を照らす。
「もう、朝か」
首元にある水晶のネックレスが朝日を攪乱する。
「僕は、この水晶を知っている」
ノタはゆっくりと、水晶を握る。
ノタはいつもの緑のローブに着替え、内ポケットに手を入れる。
「あ――」
ノタは首元にかかる水晶のネックレスへ目線を移す。
忘れてた、ネックレスにしたんだった。
ノタはバッグを持ち、ドアノブに手をかける。
大きく息を吸い、小さく吐いた。
扉を勢いよく開けると、廊下の風が冷たく出迎えてくれる。
「さて、旅の続きを始めよう」
ノタは受付まで穏やかに歩いていく。
「ありがと」
ノタは鍵をそっと受付のテーブルの上に置いた。
「……! 良い旅を」
宿の外へ出ると、昨日の夜とは違い、朝のせいか路上には静寂が包まれていた。
手持ちの小さな地図を開き、方向を確認しながら進む。
道に生える草や、街道の街灯に目が入るようになった。
「どこまでも赤いな」
少し肌寒い朝の赤い街中を、一人歩く。
日が頂点に近づくにつれて、通りの人の数も増えていった。
「そこ兄ちゃん、サンドイッチなんか買っていかないか?」
香ばしい香りと多少の空腹に連れられて、店の方へ足並みを向ける。
「ほう、これは美味しそうだな」
こげ茶色になるまで焼けたパンに、生野菜や乾燥肉を入れ、甘い血肉ソースで味付けされている。
「僕に一つくれないか?」
「あいよ! 銅貨五枚だよ」
銅貨を店のおっちゃんに手渡すと、その場で調理が始まった。
無駄のない繊細な動きで、あっという間にサンドイッチが完成した。
「へい! 祝福を」
待ちきれず、その場で食らいつく。
口に入れると、バサバサしたパンにソースが絡みつき、唾液とソースで乾燥肉がほぐれていく。食い終わりには、野菜が口の中のギトギト感を消してくれた。
「うまいな、これ」
ノタの顔が自然と笑みに溢れる。
ノタは上機嫌で、そのままアインヘル中央諸国の国境を目指す。
国境の検問に着くと、そこはフラッド神聖国とはまた別の形の城壁があった。
「お兄さん、財布、落としましたよ」
声をかけられ、後ろを振り返ると、いかにも怪しそうな誰かが僕の財布を持っていた。
僕は財布を落とすはずはない。
財布はバッグにしっかりとしまっている。
「気を付けてくださいね、ここらは盗みも多いんで」
どうも、怪しい気がする。
ノタの目が、少し細まった。




