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花縁高校演劇部 春の自主公演 「バラの贈り方」

キャスト

土方与一 木戸雄馬

土方佐一 山口星羅

土方愛菜 最澄君津

斉藤実弥 大久保桜

相原歩美 岩倉ふゆ

イナ   伊藤愛

テナ   松尾水月

土方与一(幼少期) 足利花音

幼稚園長 空海月乃

注意!劇っぽくキャラ同士の会話で話を進めたいのでセリフ多めです。それと一回で完結させたいので文字数多めです。ご了承ください。

ピース1

二つのスポットライトが一人の男子。土方与一を照らす。後ろにはダンボール作りのベットに机、テレビが置かれていて、ベットに腰をかけ、スマホで電話をしている。

与一「あーはいはい、もう散々聞いたって。よく惚気をそこまで喋れるな。俺も神社で縁結びのお守り買っときゃよかったかなー。」

与一のスマホから声が聞こえる。親友の斉藤実弥の声である。

実弥「そういえば、与一は神様に何をお願いした?」

与一「俺は...」

実弥「もちろん俺は歩美との関係が末長く続くことだよ!そういえば昨日水族館に行ったとき...」

与一「あーごめん回線がー」

実弥「はあ!?ソフトバンク光にしとけ...」

ブツッ、プープー。騒がしかった部屋に静寂が訪れる。そしてベットから手を伸ばし机の上の写真立てを持ち上げる。

与一「何をお願いしたか...ね...」

写真立てを置いてベットに横たわる。暗転後、二つの声が反響する。

イナ「起きて、起きて与一。」

再びスポットライトがつく。明るさは先程より少し暗めになっている。

与一「ん...なんか声が...」

テナ「起きたな。人間。」

スポットライトが消えて全照。蛍光灯が与一と、斎服のようなものを着た二人の男女を照らし出す。

与一「え...うわぁ!?ど、どっから入ってきた。」

テナ「落ち着け人間。」

与一「落ち着けるか!空き巣か!?お前ら!」

イナ「いいえ、私たちは精霊です。」

与一「せ、精霊...?嘘だ!精霊とかって、もっとちっこくて可愛いかんじのものだろ!」

イナ「人と一緒です。歳を重ねれば、可愛げなんてなくなるんです。」

与一「oh...じゃなくて!」

テナ「信用できないのなら、お前が今日神社で願ったこと、それを寸分違わず当ててやろう。なにせ、私たちはその神社の精霊だからな。」

テナが机の上のりんごをひょいと取って口に入れる。その間にイナが椅子に座って話し始める。

イナ「あなたのお願い事。それは"父さんとまた仲良くなれますように"。当たりましたか?」

与一「な、なんで...」

イナ「言ったでしょう?私たちはあの神社の精霊だと。これで信じてもらえましたか?」

与一「い、いや、なんで精霊が俺のとこにくるんだよ。いたとしてもそういうのは人前に姿を現さないものだろ。」

テナ「精霊の仕事。それはなるべく多くの人間の願いを成就させること。つまり、私たちは君の願いを叶えるためにこの地に降臨したというわけだ。」

与一「そんな話聞いたことないけど...」

テナ「当然だ。願いが叶い終わったら私たちの記憶は消去させて貰っているし、私たちのことは誰にも話すことができない。それが精霊の力だ。」

与一「じゃ、じゃあ、お前達が父さんとの復縁を摩訶不思議なパワーで達成してくれるってことか?」

イナ「いいえ。あくまでも私たちの仕事はあなたのサポート、あなたが何にもせずに解決させてあげるほど私たちは甘くありません。」

与一「そんな...俺、あんなこと願っておいてなんだけどなんで険悪な雰囲気になってるか分かってなくて。」

テナ「それも含めてのサポートだ。今全てを話すには、時間が足りない。また明日、君の前に姿を現そう。」

与一「ちょっとま...あっ...」

バタン!と音を立てて机に突っ伏したまま寝てしまう。すうすうと寝息を立てて寝ているのを確認した二人は舞台からはけて、そのまま暗転する。

ピース2

照明が再び点くと、舞台は家から学校へ変わり、ガヤガヤとした学生の声のSEが鳴る。

与一「なあ、学校にまで着いてくるの?」

イナ「安心してください。他の方には私たちの姿も見えませんし、声を聞くことはできません。」

与一「そういうんじゃないんだけど...」

実弥「よっ!おはよ、与一!」

歩美「おはよー。」

与一「おお、二人ともおはよう。」

沢山並んだ椅子を持ってきて与一の机の周りに置いて座る。そしてニヤッと笑って口を開く。

実弥「与一。お前昨日お父さんと仲直りできますようにって頼んだんだろ?」

与一「えっ、なんで...」

テナ「私の力を使ってな。マインドコントロールというやつだ。彼はなぜ自分がそのことを知っているのか不思議に思うことすらない。私は君の願いを叶えるため彼にも協力を仰ぐことにしたのだ。元より人助けをするような性格で助かった。あんまり改変しすぎると不自然になってしまうからな。」

与一「思ったよりお前ってやばいやつ...?」

テナと話していると歩美が首を傾げて話しかけてくる。

歩美「何一人ごと言ってるの?」

与一「ああ、いや、ごめんごめん。」

歩美「今日は実弥がとってもビックな作戦を持ってきた。与一と父親、大復縁作戦!」

与一「大復縁作戦?」

実弥「ふっふっふっ、ではお話しよう。プロジェクトCについて!」

与一「大復縁作戦じゃねえのかよ...で、何をするんだ?」

実弥はガタッと椅子から立ち、歩きながら話し始める。

実弥「ふふ、死神さ。」

与一「死神!?」

実弥「そう!最近知った知識なんだけど、どうやら死神って言うのは死者の願いを聞いて、悔いがある人の魂を浄化するためにそれを叶えるってのがあるらしいのよ。」

与一「ほんとかよ。まあでも、精霊がいるんだし有り得なくもないか...?」

テナ「彼は中々に学のある者のようだな。確かに死神は死後、我々精霊が助けれなかった人を助けるのだ。」

与一「へー。」

歩美「それで、どうやって仲直りさせるの?」

実弥「こうやるんだよ。死神のフリをして、あなたはもうすぐ亡くなります。その前に息子と仲直りをさせましょうって!こうすれば、死の恐怖からなんで仲が悪くなっているかくらいは暴露してくれるかなって。」

与一「ちょい悪趣味じゃ...」

実弥「今のままじゃなんで険悪な雰囲気になってるかすら分かってないんだろ。それなら行動あるのみ!だろ?」

与一「...わかった。協力お願いします。」

実弥「ばっちこい!」

歩美「おー、いえー!」

イナ「ふふ、いい友達を持ちましたね。」

与一「...まぁね。ところでなんでプロジェクトCなんだ?」

実弥「そりゃもちろんしにが...」

与一「まさか"し"にがみだからCじゃないよな。」

歩美「流石にないよ。英語だと頭文字はGだし、ローマ字でもSだもん。」

実弥「.....」

与一「で、なんで...」

実弥「この作戦は失敗だ...」

与一「なんで!?」

実弥「あーごめん回線がー。」

与一「回線とかないだろ!おい逃げんなソフトバンク勢!!」

実弥と歩美が舞台袖にはける。そのまんまになった椅子にイナとテナが座って話し始める。

イナ「険悪になった要因に心当たりがないと言っていましたが、本当はあるんですよね。心当たり。」

テナ「下手に隠してもバレるのだ。そんな無駄なことはせずにさっさと話したらどうだ?」

与一「...父さんは...母さんが亡くなったことをずっと引きずってて、俺は父さんにまた笑顔になってもらいたいから色々なことをしたんだけど、多分それが空回っちゃったんだと思う。でも、それでも俺は、あの人に何かをしたい。だから知りたい。父さんが何を欲してるのか、どうすれば仲直りできるのか。イナ、テナ、お願い。手伝って。」

イナ「...なら、これをどうぞ。」

与一「これは...?」

イナ「黄色のバラ。あの人のプレゼントに一番これがいい、ただの勘ですが、そう思ったんです。」

与一「わかった。ありがとうイナ。」

舞台が暗転して、暗転中に机を片付ける。そして次の役者達がスタンバイして再び照明が点く。

ピース3

舞台の左側だけ明点。そこにはスーツ姿の与一の父。土方佐一がいた。夜の風に鈴虫のSEが鳴る。佐一が動き出そうとするとき、暗転されている舞台右袖から、フードをかぶり、鎌を持った実弥と歩美が出てくる。

イナ、テナ、与一は左側の舞台袖でその様子を見ている。

佐一「な、なんだお前達!」

実弥「土方佐一さん、ですよね...。」

佐一「お前らは誰だと聞いているんだ!答えろ!」

歩美「私たちは死神です。あなたがもうすぐ死ぬ運命にあるので私たちはあなたの前に現れました。」

佐一「お、俺がもうすぐ死ぬ...?それに死神って、馬鹿も休み休み言えよ。」

歩美「ではこれから起こる未来を予想しましょう。」

佐一「み、未来?」

実弥「ええ、私には未来が見えます。今見た未来はそう、あと10年間は中日が優勝できない未来!」

佐一「おい!いくら今勝ててないからって失礼すぎるだろ!」

歩美「違います。今のは未来を見た事実なのです。」

与一「大丈夫?あんなんで...。」

イナ「かなりだいじょばないですね...。」

テナ「仕方ない、信じ込ませるところまでは力を使わせてもらおう。」

テナが舞台袖から出て催眠術をかける。それっぽいSEが鳴り、再びテナは舞台袖に戻る。

佐一「.....俺はこれから死ぬのか...?」

実弥「ええ...残念ながら。なので私たちはあなたに悔いの残らない余生を過ごして欲しいのです。」

歩美「さあ言うのです!あなたのわだかまりを!あなたに残る後悔を!」

佐一「...なあ、死神さんよ。天国とか地獄とか、死後の世界ってあるのか?」

歩美「へっ?え、えーと、あ、ありますよ。」

佐一「そこに行けば俺はまた愛菜に、妻に会えるのか?」

実弥「あーえっと、こ、後悔がない人生を送れたなら行けると思いますよ...。」

佐一「ならもう俺の人生に後悔はない。むしろ死んでからの方が希望を持てる。」

実弥「え...ええ!?いやいや、あなた自分の子供はどーするんですか!?」

佐一「与一は、いつのまにか俺より立派になっている。あんだけ利口に育って、あんだけ誠実なら、もう生きることには困らない。なんなら俺みたいか奴がいるせいで、あいつは前に進めない。」

実弥「ちょっと待ってください!自分が前に進めてないだけな癖して、何があの子は大丈夫だなんて言ってるんですか!あいつはあなたに前に進んでもらうために頑張ってるんですよ!?」

佐一「だから、その必要はなくなるって言ってるんだ!もう俺を気にする必要がなくなって与一は自由に生きられる!」

実弥「はあ!?ふざけんなよ!自分が進むことを諦めてるだけじゃねえか!」

歩美「ちょ、ちょっとやめなよ二人とも!」

実弥「...ガッカリでしょうね!与一があなたを見たら。自分はあなたに何もしてやれてないんだって感じて。」

佐一「...ああ、"すまない"与一。」

与一「...ッ!」

実弥「いい加減に...!」

与一「実弥!もう大丈夫。」

与一が舞台の前に出て、それと同時に実弥、歩美は舞台の後ろ側にはける。手には黄色いバラを持ち、少し俯いている。

佐一「与一...」

与一「父さん...その...」

佐一「...与一、"すまない"俺はもう長くないらしい。あと少しで死ぬと死神が言っている。お前はお前の人生を歩んでくれ。今までありがとう。」

与一「違う...違うよ父さん!そんなありがとう。おれは欲しくないよ!あっ、そうだ、これ!」

佐一「黄色のバラ...」

与一「これ、父さんにあげようと思って買ってきて、受け取ってもらえたらきっと笑顔になると思って、それで...それで...お願い...受け取って...。」

佐一「...もうこれ以上、お前からは受け取れない。大切なものを大切にできない奴に、それを受け取る資格はない。」

与一「.....」

与一は前に突き出したバラを引っ込め舞台の後ろ側によろけるように引っ込む。その姿を見たイナはテナの方を向いて話しかける。

イナ「...テナ。私に力をお貸し下さい。」

テナ「...わかっていますよ。それが私の仕事ですから。」

イナが舞台袖から前に出て、暗転。その後イナ、佐一、与一だけが照らし出されるようにスポットライトが当たる。

イナ「こんばんは、土方佐一さん。」

佐一「あなたは?」

イナ「私の名前はイナ。与一君に取り憑いた精霊です。」

佐一「与一に...。精霊が憑いてるなら尚のこと安心だな。」

イナ「...あなたはなぜ、あのバラを受け取らないのですか?」

佐一「...俺は貰いすぎたんだ、もちろん俺だって、学費やら、金銭面のサポートはしていた。でも一人でバイトとかができるようになってきて、そのくせ俺は成長せずにもういない人に固執して。そんな人間が、与一に何を与えれる?俺がいるだけで、与一は失う一方なんだよ。」

イナ「...では思い出してください。なぜ与一があなたにここまでしてくれたのか。あなたに与え続けてくれているのか。」

イナの手が光を放ち、暗転していた右側の舞台に反対側のスポットライトが明かりを灯す。

ピース4

佐一が舞台右側に移動して、幼い姿の与一と母の愛菜に合流する。そして与一の頭を撫でながら園長先生が口を開ける。

先生「与一君。"あれ"出してあげて。」

与一「うん!お父さん。いつもありがとう!」

佐一「黄色いバラ...与一、くれるのか!」

与一「うん、あげる!」

先生「与一君、自分で調べて父の日には黄色いバラがいいって知ったから、先生と一緒に買いに行ったんだよね。」

愛菜「まあ!偉いね、与一。」

佐一「ありがとうな。与一。パパのためにこんなにしてくれて。」

与一「ううん。パパもママも僕のことを一番近くで、ずっっと助けてくれたから!それと、これからもずっと助けてほしいから!」

愛菜「ふふっ、正直ね。安心して、私たちがあなたのことをずっと助けてあげる。だから与一も私達のことを助けてね。ほら貴方も。」

佐一「ああ、約束だ。」

与一「うん!約束!」

舞台の右側が暗転。佐一は舞台左側に戻ってきて、イナの前に立つ。

イナ「思い出しましたか。なぜ与一が助けてくれているか。」

佐一「思い出したよ。だけど、俺みたいな奴がどう助けるんだ?助けてもらってばかりな俺がどうやって助ければ...」

イナ「いい加減になさい!」

佐一「っ!?」

イナ「今与一を助けれるのは貴方だけなんです。愛菜は、もういない。だからこそ、あの日、私たちがした約束を果たすために、私は今こうしている。そして与一も!貴方も...約束を果たしなさい。」

佐一「...君は...。」

与一「...父さん。」

イナが後ろに下がり与一が佐一と同じ位置まで上がってくる。

与一「俺、母さんがいなくて正直死ぬほど寂しかった。でも、父さんがいてくれたから、俺は救われた。父さんがいてくれたおかげで、俺は今日まで生きている。ねえ、父さん、もう一度お願い。バラを受け取って。お礼をさせて。そして...」

一度言葉を切る。黄色いバラは照明に照らされてキラキラと輝き、彼の想いは花開く。

与一「また俺を...助けて...。」

佐一「与一..."ありがとう"。大切にする。与一から貰ったものも、与一のことも。」

佐一が与一を抱き寄せ、舞台は全照して、二人はその中央で涙を溢す。

歩美「なんか最後らへん。私たち要らなかったね。」

実弥「いやー最初から必要だったかどうか...。」

テナ「いいや、君たちは大いに役立った。」

実弥「うわぁ!?どっ、どっから現れた!?ま、まさか死神!?。」

テナ「ご明察。イナ...いや、愛菜。これで私の仕事は完了ですね。」

イナ「はい、本当にありがとうございます。死神さん。」

テナ「それが仕事ですから。私はこの二人の記憶を消さなければならないので、お先に。」

実弥「えっ!?俺ら何されんの!?」

歩美「はっ、離して!!」

実弥・歩美「いやーー!!」

.....

愛菜「与一、ちゃんとバラを渡せて...良かったね。」

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