第39話
ようやく物語が動き出す……かもしれません!
先輩は涼しげな顔で、器用に指でスティックをくるくる回している。この人、こういう事は無駄に覚えが早いんだよな。
「で、それがどうしたんですか?」
「とうとう、バンド組むのか?」
「ふん、決まっている」
先輩は、今度は表情に少しだけドヤ感を滲ませて、埃かぶった机の方を指差した。
「ティータイムにしようと思ってな」
「「おい」」
オッサンとハモってしまった。
俺らどんだけあの作品が好きなんだよ。名作だとは思うけどな!
「……冗談だ」
「いや、先輩本気だったでしょ。奥の棚から見慣れないティーセットらしきものが見えてますよ。どうせ一挙放送とか観たんでしょ?」
「昨日……天使にふれただけさ」
「無駄に名言っぽいな。おい……」
「ともあれ、バンドはやらねばならんのだがな」
「……は?」
「このままでは廃部になる」
「マジですか」
「マジだ」
「仕方ないですね。じゃあ、ここは大人しく……」
「待て。諦めるな」
「いえ、そもそも諦める程の愛着もないのですが……」
「俺もない」
「ないのかよ」
「廃部になると、この部室で自由気ままな時を謳歌できなくなる」
「教室で青春を謳歌すればいいのでは?」
「それは俺とお前には無理だ」
「しれっと人の青春、全否定しやがったな」
いや、確かに彼女はいないけれど!仲間達と熱い青春とか過ごしていないけれど!それどころか友達も少ないし、未だに義理の姉に悶々としているけど……最後のは関係ないか。
こちらのそんな心情を察してか、先輩は少しだけ語気に熱を込めた。
「なあ、与。ここで一つ……青春に花を添えてみないか」
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