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反逆者

「ハル」それが今の彼の名前だ。

レジスタンスの次期リーダーとも名高い彼は轟扇組に対して度重なる

反撃を行ってきた。彼の雄姿は数知れず、かの悪名高き「T」たちにさえ

決して引かずに立ち向かったという。今日も彼は抵抗運動を続けている。


「今度も奴らに一泡吹かせてやる、狙い撃つぜ……ってな」


スコープの先には轟扇組の末端構成員たちがいる、そしてその背後にあるものこそ

今回の目的である、"Secret Alchemy object"、通称「SAO」である。


「たいそうな名前を付けてはいるが所詮薬、あんな人間の心を不自然にはねさせるようなもののため

俺たちレジスタンスの仲間が犠牲になっている現状を見逃すわけにはいかない」


依然として彼は微動だにしない、構成員の声をこの遠距離から聞き取っているのだ。

得られる情報なら何としてでも得、少しでも勝率を上げるその戦法は古臭いと揶揄されることもある。

だが彼の今までの戦果をみればそれが多分にひがみや羨望の混じった意見であるとわかるだろう。


「ぬわーん、もう疲れた」

「ばっかおめぇ、そこは疲れたもぉぉんダルルォ!?」

「あー、我刃さんの口調がうつっちまったみたいだ」

「あの人もなかなか奇抜な人だからなぁ。でも上司としては最高だ、なにせ"インテル長友"だ」

「なんでもガバとして許容してくれるあたりはやさしいしな、芝田さんとは違って」


ハルは内心ほくそえんでいた。己の宿敵である我刃の情報はいくらでも欲しい。

そして警備の杜撰さも今回の仕事が楽に終わりそうなことを物語っている。

そろそろ仕事にとりかかろうとした時である、視界に新しい人影が入る。


「あっ、佐原さん!お疲れ様っす!」

「まあ、そうなんですけど。"あやねる"は今日はお休みですか」

彼は空を見上げながらそう言った。だがその表情はフードによって伺い知ることはできない。

「それになんですかこの杜撰な警備態度は、はぁこれを三枝が見たらどう思うでしょうか」


その名前を聞いた瞬間ハルの視界はホワイトアウトした。吐き気がこみあげてくる。

一体あの名前にどんな意味が…そんな思考の中彼が見た何者かは、血だまりに立ち

「こんなこと…みんな死ぬしかないじゃないか!」そう叫んでいるように見える。

酷く既視感のある光景ではあるもののまったく思い出せない。

たまにこんなことがある。

自分の過去が思い出せないことと関係あるのかすら記憶にない。

呼吸が荒い、やっと戻った視界には佐原と呼ばれた男はいなくなっていた。


「サッサと終わらしてこの違和感を調べないとな、行くぜ…トランザム!」


その後の彼は迅速だった。自分を奮い立たせるキーワードをつぶやいた彼は一足飛びに目標に近づき、

警備員たちの急所を二度打ち抜き昏倒させた。力量が違いすぎる者同士では戦いにすらならないのだ。

しかしいつもの調子が出ていない、普段なら一撃のはずだ。彼は自分が動揺していることに今更気づいた。

"SAO"こそ手に入ったもののこれ以上の戦闘は支障をきたすと判断し、即座に帰投準備に入る。

先ほどの既視感から逃げるように立ち去ろうとした彼だが、その前に立ちはだかる者がいた。


「アッヒャ!全然ゆるケツじゃんお前!俺が我刃と知ってのガバ作戦か?」


因縁を感じてからあまりにも早い対峙に驚きを隠し切れないハルではあったが、だがしかし

彼は憮然としていいはなつ。それが過去を失った己が唯一覚えている、彼を彼たら占めるその言葉を。


「知らないですよ!だって……俺が打ち倒す奴のことなんていちいち覚えてられないからな!」


そしてまた因縁の宿敵同士は激突する。幾度ともなくぶつかりそして今回も決着がつくことはないだろう。

ハルが己の過去と向き合い取り戻さない限りは。


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