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バトル・オブ・ミカワシマ

―――ふう...一時はどうなることかと思った。

 ここはJR三河島駅の男子トイレだ。三河島は以前、住宅街としてある程度栄えていた。

だが、十数年前から突然人口が急減少し、今ではすっかりゴーストタウンと成り果て、ゴロツキどもの巣窟となっててしまった。

 ここのトイレは妙な臭いがする、そうこの臭いは精子、精液、ザーメン、ザー汁、きんたま汁、赤ちゃん製造ミルク...  まあそんなことはどうでもいい、さっさと家に帰ろう。三河島の治安は荒川区内でも最悪だ。我々轟扇組の力をもってしても、支配しきれないほどで、暴力事件、強姦事件などはザラに起こる。最近では"男が襲われる妙な事件"も発生していると聞く。そう思って公衆トイレから出た矢先のことだった。

 「デデンデンデデン...」背後から妙に甘えた声が聞こえた。佐原はとっさに"kimiomosiroine" "ジュッセンパイヤー"と妙な落書きがスプレーで吹き付けられた壁を勢いよく蹴り、後ろにいる声の主と距離をとった。さすがは轟扇組時期リーダーを狙う男だ。反応が素早い。

振り向いて相手の姿を確かめる。黒っぽい靴、黒っぽいズボン、黒っぽいジャケットを身に纏ったその姿にはどこか見覚えがあった。

―――こいつは確か、永遠のヒラ組員...錬土術の使い手...そう土井だ!二週間前から姿が見えなくなっていたあの土井だ!何故こんなところに...?

 瞬間、「アアアッショイ!」という掛け声とともに土井の強烈なタックルが繰り出される。

「ンアーッ!」佐原の体は吹き飛ばされ、十数年間閉ざされたままであろう八百屋のシャッターに打ち付けられた。佐原は直ぐに立ち上がり、反撃しようと身構える。しかしそこに土井の姿はない。

佐原は放置され続け所々アスファルト舗装がはだけて土がむき出しになった道の中央に立ち、周囲を見回す。その時だった!

「トイショイ!」という掛け声とともに佐原の背後のむき出しの地面が盛り上がり、土井がその姿を現す。

佐原は素早く反応し、背後へと回し蹴りを繰り出す。「モグーーーーッ!!」土井は回し蹴りをいなし、そのままむき出しの地面から地中へと潜った。

―――落ち着け...奴が地中から繰り出す攻撃は強力だが...決定的な弱点が在る!

 土井の弱点、それは、潜行からの奇襲を行う際、どうしても掛け声が出てしまうことだった。この掛け声は、仲間内で"鳴き声"と揶揄され、

これこそがいつまでも昇格できない理由であり、"永遠のヒラ組員"と呼ばれる所以であった。

 佐原は肩の力を抜き、目を見開き、耳を澄ました。これは、池袋ジュニアサッカースクール出身のファイター特有の戦法で、"一回休み(ローカルルール)"と呼ばれる戦闘スタイルだ。一見すると無防備に思えるこの状態だが、佐原の集中力は極限まで高められ、

ありとあらゆる攻撃に対し、正確無比なカウンター攻撃を繰り出すことができる。

 「シャオラァッ!!」特有の鳴き声とともにまたしても佐原の背後の地面が盛り上がる。地中から現れた土井は両手に土をひとつかみずつ持っていた。土井はおもむろにそれらを頭の上へ掲げる。「ゴルディオンハンマー...」なんということだ!次の瞬間土は黄金に輝く巨大な槌へと変貌し、

不意打ちとして全く意味を成さない奇襲攻撃を仕掛けようとする。

―――イキますよ...性浴翼蛮崩天刃!!

 佐原の必殺技が放たれる。まったく足が上がりきっていないが勢いは一級だ。全力の一撃が土井のみぞおちにめり込み、土井は吹き飛ばされた。

―――どうして突然組織を裏切ったんですか?

「....」

―――恥ずかしくないのかよ?

「....」

土井は何も語ろうとはしない....

 「ア ッ ス の 可 愛 い 下 僕 を よ く も か わ い が っ て く れ た ア ス ね . . . ! 」

妙に甲高い調子外れなクソデカヴォイスが静寂を切り裂く。声の主は黄色いTシャツを着た、小太りの男だった。

―――何者だお前は!

佐原が問う。「アッスはファッキンアス太郎、巷ではアッシを[アスタロス]と呼ぶ輩もいるらしいアスけどね?ところでそいつはお前の部下アスか?なかなか面白い技を持っていたけど、結局のところは唯のワンチャンス狙いのなり損ないだったアス。もうそんな雑魚に用はないアス。さっさとそいつを連れて帰るアスね!」

挨拶ともに土井をけなすと、すさまじい跳躍力でジャンプし、アス太郎は三河島のゴーストタウンに消えていった。

―――ファッキンアス太郎...またしても我々轟扇組の支配の妨げとなる要因が増えてしまったな...

そう呟くと佐原は土井を放置して駅へと戻っていった。


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