もっとハッピーなものが見たいわ
「いや、夢の中を歩くのはいいんだけど、なんかもうちょっと楽しいものを期待してたんだけどね」
「いま思い出しただけでも身震いするわ。黒い影が大勢で走ってきて、おーいって呼んでくるだよ。呼ばれてもいけないって、マジで」
「こう続けて怖いのが来ちゃったら、商品として出したときどうなのかなぁ」
「まあ、今回もこの夢の中を歩くシールを使って寝てみるわけだけど……夢だからね、自分の夢を好きなように選べたらなーって思うわ」
「それじゃ寝てみますか」
「……」
「……ん? おっ、今回は明るい。明るいって言っても全体的に灰色、空も灰色。曇りって感じじゃないの、なんか灰色でどっかの住宅街みたい」
「日本のどっかにこんなところがあるのかな。まあ、わたしも日本全土を歩いたわけじゃないからわからないけど、とりあえず歩いてみますか」
「……しばらく歩いているけど人がいないわね。まったく見当たらない。道路に出ても車一台すらも通らない」
「えーっと、暑くもなく寒くもない、風もない、無風ってかんじ。物音もしない。匂いもしない、けど、なんか張り付くような空気を感じる」
「ん? 虫? いまブーンって聞こえた」
「ブーンって空のほうから聞こえた。なんか遠くからこっちに近づいてくる感じ」
「空を見てみるけどなにもない、けど音だけがブーンって、遠くからだんだんと音が大きくなってきて、そう、まるで飛行機がそこを飛んでいるみたいに」
「さっきからそれがずっと一定間隔で鳴ってるわ。うるさーい! 耳がおかしくなりそう」
「近くに喫茶店があるから入ってみる……」
「……いま店内だけど人が何人かいるわ。三人ほどカウンターに座ってて、店員がひとりで接客をしているみたい」
「ちょっと、なに? お客さんがなにか食べてるけど、皿からはみ出してるっていうか、テーブルの上にぶちまけられたっていう感じで、液体がたらたらたれて、その物体がうごめいている。よくわからないけど、元はなんの生き物だかわからないけど。やばい、あとなんか血なまぐさい」
「店員が屈んで何かを取り出そうとしている。えっ? 誰かの髪の毛をつかんでひっぱり、包丁を……」
「あーーーーーーーー!!!!」
ジリリリリリリリリリリン。
「……は? 覚めた? ……なにいまの? あーやばぁ、人の首切ってそれを出してるよね。なんなのよ、もう」
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