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25話【市場】

 

 てくてく。キョロキョロ。


 今のわたしに擬音が付くとすればそんなとこだろうか。

 初めて見る異世界の街並みはとても風情があって素敵だった。

 煉瓦造りの家もあれば木材で出来た家や漆喰や土壁の塗られた家もある。

 町の中は人通りがそこそこあり、馬車が通ることもあった。至るところにプランターに植えられた花や花壇、街路樹などがあって緑が多い。


 わたしはキョロキョロと街並みを眺めながら、門兵さんに教えられた多目的広場に向かった。


 広場へ出ると沢山の出店や露店等がひしめき合っていた。その様子にわたしはワクワクして思わず笑顔になる。


「ファム!スゴいね!」


 小声で興奮を伝えるとファムもそんなわたしの様子に嬉しそうに「そうですね」と返した。



「おや、お嬢ちゃん。アンタもしかしてサクラ国から来たのかい?」


 ショルダー紐をぎゅっと握りしめ気合いを入れるわたしの背後から、少し嗄れた声が聞こえて振り返った。


 ─ん?わたしの事?サクラ国ってなに?日本ぽいな。


 とりあえず回りを確認したけどお嬢ちゃん、と呼ばれる年齢の女の子はわたしだけだったので自分を指差して首を傾げてみる。わたしに喋りかけてきたのは頭のてっぺんで白髪混じりの黒髪をお団子に結わえたお婆さんで、沢山の商品が並んだ中心に椅子を置きそこに腰かけていた。


「そうそう。アンタだよ」

「サクラ国…って何処ですか?」

「ありゃ…アンタこの国の子供なのかい?」


 否定も肯定も出来ずわたしは曖昧に笑う。

 それをどう受け取ったのか、お婆さんはにっこりと笑顔を浮かべて手招きしてきた。


「なんですか?」


 取り敢えず害意は感じなかったので近づいた。まぁ害意を感じたらファムが止めるだろうし。


「いやね、アンタのその履物さ。それはサクラ国のものだろう?もしよかったらうちの商品と交換してくれないかい?あたしゃサクラ国の物を集めるのが趣味でねぇ」


 どうやらお婆さんの中でわたしはサクラ国とやらに繋がりのある子、と断定されてしまったようだ。

 サクラ国っていうまるで日本との繋がりを感じる国の名前も気になるけど、それよりこんなちゃちな布草履を何かと交換してもらうのは心が引ける。


「いいけど…これあげちゃうとわたし裸足になっちゃうから…靴を買ってからで良いならお婆さんにあげるよ」

「それなら…ホレ。子供用の靴なら何足かあるから、この中から選びな。それなら良いだろう?」


 おばあさんは後ろから木箱を出してわたしの前に置く。殆ど痛みのないショートブーツが六足程入っており、その中の一足がサイズぴったりなのを見て、お婆さんは満足げに微笑みうんうんと頷いた。


「本当に良いの?何だか等価交換になってないと思うんだけど…」

「小さいのに難しい言葉を知ってるねぇ。それにね、価値を決めるのはあたしで、あたしが満足したのならそれで等価なんだよ」


 お婆さんは幸せそうにニコニコと笑ってわたしの布草履を受け取った。


 ─あぁ…なんかお年寄りを騙した気分だよ…。


 満面の笑顔のお婆さんとは逆に私は表面上にこやかに笑いつつも、釈然としないままお婆さんに手を振って別れた。



「ファム…わたし詐欺師みたいだね…」

「何を言っているんですか。…それにあの老婆がティア様の履物に興味を持っていたのは確かなのですから、そこまで気に病まれる事はないと思いますよ」

「そうかな…?」

「そうですよ」


 ファムに気にするなと諭され、わたしは気分を切り替えるために露店で買い食いをすることに決めた。


 ─さっきからいい匂いがするんだよね~。


 先程から辺りを漂うスパイシーなお肉の焼けた匂いがわたしの口を肉に染めて行く。

 フンフンと鼻をひくつかせてその屋台の前までやって来た。

 背伸びをして覗き込めばジューシーなお肉が串に刺さって炙られていた。思わずゴクリと唾を飲む。


「お?嬢ちゃん食べるかい?」


 厳つい見た目だけど気の良さそうなおじさんがニッカリと笑いかけてきた。思わず返事をしそうになってハッとする。

 そうだ。まずは確かめないといけないことがあるのだ。


 わたしはバッグの中からお財布を出すフリをしながら異空間から巾着袋を取り出す。そしてその中から一枚の銀貨を出して尋ねた。


「おじさん、わたしこのお金しか持ってないんだけど…使えますか?」


 そう。この世界は数十年に一度、お金を新しく作るのだ。偽造防止だとか理由は色々あるみたい。


「ん?あぁ、前期の硬貨だなコリャ。もちろん使えるが、これから買い物するなら今の硬貨に変えてもらった方がいいと思うぞ」

「どこに行けば変えてもらえますか?」

「両替なら職業別組合(ギルド)で出来るが…嬢ちゃん、この街は初めてなのか?」

「はい」


 正直に答えるとおじさんはわたしに串肉を1本差し出した。そして「おじさんの奢りだ」とウインクしてきた。厳ついおじさんのウインク…中々迫力がある。

 するとおじさんの後ろからひょっこり朗らかな雰囲気のおばさんが顔を出した。おじさんと同じ50歳前後の風貌なので、二人は夫婦だと思う。


「アンタ。この時間ならまだ客も遠いから、連れていってあげたらどうだい?こんな小さい子をひとりで行かせるもんじゃないよ」


 おばさんはにっこりと笑って「うちの旦那はこんな顔だけど、子供が大好きなのさ」とバシーン!とおじさんの背中を叩く。


「ほら行っといで」

「すまねぇな。あとはまぁボチボチやっといてくれ」


 おじさんは屋台から出てくると「こっちだ」と歩き出す。わたしはおばさんにお礼を言っておじさんを追いかけた。


 わたしは肉をハムハムと頬張りながらおじさんについて行く。おじさんもわたしの歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。


「お肉美味しい~」

「そうだろそうだろ!うちの畜産農場で育ててるから味はお墨付きだぜ」

「おじさん、おじさん。お金両替したらまた買いに行きますね」

「おぅ!」


 おじさんは終始ニコニコと笑い、わたしを目的地まで導いてくれた。


「ここが職業別組合(ギルド)だ」


 たどり着いた所には煉瓦造りの立派な大きな建物があった。


 おじさんに連れられ建物の中に入るとカウンターが有り、若い女の人が二人座っている。

 その片方の受け付けに歩いて行くと、おじさんがわたしの代わりに説明してくれた。


「かしこまりました」


 受付嬢の柔らかな声にほっとすると、おじさんは「じゃあな」と足早に帰ってしまった。お礼を言う暇もなく。


 ─まぁ良いか。あとでまたお肉買いに行くし。


 頭も出ない高さのカウンターを爪先立ち覗き混むと、ハッと気が付いた受付嬢のお姉さんが慌てて出てくる。


「こちらへどうぞ」


 にっこりと笑ってわたしをカウンターの中へ入れてくれた。中では数名の人がお仕事をしていたので邪魔にならないか心配だ。


 四人掛けのソファーに座らさせて待っているとさっきのお姉さんが両替用のトレイと書類を持ってやって来た。


 わたしは巾着袋の中のお金を全部トレイに移して目の前で金額を確認してくれるのをじっと待っていた。


 結果、小金貨3枚、銀貨28枚、白銅貨6枚、青銅貨8枚、日本円にして11万8,680円に両替出来た。


 ─結構あるな。


 思わずニンマリと子供らしからぬ笑みを浮かべてしまい慌ててポーカーフェイスに戻る。ヤバイ。ほっぺたピクピクする。




サクラ国のお話はいずれ(ФωФ)


屋台のお肉って美味しいですよね~(^q^)

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