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24話【プレゼント】

 


 解呪の件から数日。


「ついに明日は念願のおでかけだぁ!」


 フンフンと鼻唄を歌いながらわたしは仕上がったワンピをハンガーに掛けて満足げに眺めた。


 テーブルの上には元々この家にあった籠バッグとファムが用意してくれたお金を入れた巾着袋、そしてハンカチに水筒。準備はバッチリだ。

 まぁ荷物は異空間に入れてバッグ空っぽでもいいんだけど、折角出掛けるのに空っぽのバッグじゃ雰囲気台無しなので、貴重品以外はバッグに入れて持ち歩くことにした。


 今日の内に薬草もたんまりと収集して既に異空間に保存済みだ。異空間の中は時間が止まっているので痛む心配はない。





 あの日、異空間魔法ズボズボしたのを見たファムは「一体どうやって…!?」と戦慄いた。どうやら異空間収納の魔法を使える人間はとても少なく、そのため魔法が付加された鞄もかなり高額らしい。

 現代日本を生きたわたしにとって、二次元、三次元、四次元は子供の頃から理解できていたものなので、どうやって、と言われても説明の仕様がない。

 クオンさんもファムも何度も試してみたけど使えなかったので、異空間収納魔法が付与されたバッグを使っていたのだけど、そのバッグも長い間使用したため壊れてしまったそうだ。



 要するに目に見えない次元をイメージ出来ないのが魔法を行使できない理由…なんじゃないかな?

 なのでわたしは分かりやすいように紙に書いた絵でファムに説明した。

 紙の中心に正方形を描き、その角を紙の角に向かって真っ直ぐ線を引く。その図とわたしがファムに聞かせている二次元のお話を元に説明すると、最初は頭の上にハテナを浮かべていたファムも次第に真剣になり、最終的に青天の霹靂と言わんばかりの反応を見せて「出来そうな気がします!」と見事異空間収納魔法を習得したのだった。

 その後暫くファムはまるで尊いものでも崇めるようにわたしを見ていたので、なんかお尻がムズムズしたのは別の話だったりする…。




「さて!明日は朝からお出掛けだから早く寝ないとね!」


 鼻息も荒くわたしはお布団に潜り込む。

 昔からワクワクしたり緊張したりすると寝付けない体質だったけど、その夜はスヤスヤと眠りに落ちた。どうやら成長しても子供体質はそのままのようだ。




 翌朝、気分爽快で目覚めたわたしは出発の準備をして家の外に出る。

 ツインテールに結った髪がふわりと風に揺れた。その根本にはハギレで作った白いリボン。そして左のリボンの結び目には可愛い小さな鳥のぬいぐるみ…ではなく、ぬいぐるみに似せて姿を小さくしたファムが鎮座している。

 肩に乗せたままだと目立つから、というのもあるけれど、ブローチでも良いのにと言えば「ここからなら不埒な事を起こしそうな輩がいち早く発見できます!」とファムは鼻息荒く使命感に燃えていたので、わたしもそれ以上は何も言わないことにした。


 玄関を出ると家の前にウサリス達が横に並んでいた。わたしが出てくるのを待っていたのか、嬉しそうにキュンキュン鳴いている。


「おはよう。今日はわたしお出掛けだから、みんなお留守番よろしくね」


 そう声をかけると反応するように可愛らしく鳴く。しかし一点を見詰めた瞬間、ウサリス達はこの世の終わりの様にズドーンとテンションが下がった。


「え、どうしたの?」


 わたしは膝をついてみんなに近付く。籠バッグを脇に置き、ウサリスの頭を指で撫でていると、10匹くらいのウサリス達が茂みから大きな葉にくるまれた何かをわたしの前に差し出した。


「キュウ~ン…」


 力無く項垂れるような仕草をしながらわたしを見上げる。この包みを開いていいの?と問うとしょんぼりしながらも小さく頷いた。


 わたしは風呂敷並みに大きな葉を開く。


「──!これって…」


 大きな葉の中から出てきたのは細い蔦で精巧に編まれた可愛らしいショルダーバッグだった。

 少し明るい茶色でバッグの中心には同じ素材で編まれたリボンが付いている。ショルダー紐も自由に長さを変えられるまるで売り物のような出来だ。そして何よりわたし好み!

 テレビとかでたまに特集されてた伝統工芸みたいで、もし買うなら軽く5万くらいはしそうな、そんな感じだった。それくらい素敵なのだ。


「もしかしてわたしの為に作ってくれたの?」


 この子達の手先の器用さは転生初日で既に知っていたことだけど、まさかこれほどとは思わなかった。


 ─これからは匠って呼ぼうかな。


 わたしがバッグにうっとりしているとウサリス達はその様子をソワソワしながらも見ていることに気がついた。


「貰ってもいいの?」

「! キュン!キューーン!」


 まるで突然お祭りでも始まったかの様にウサリス達は嬉しそうに一斉に跳び跳ねる。その様子がとても可愛くてわたしも笑顔で彼等を見詰めた。


「すっごく可愛い。ありがとう、みんな。大切にするね!」


 わたしは早速バッグの中身を詰め替える。ハンカチと水筒、それと紙に包んだ数枚のクッキー。それ以外の物は異空間だ。


 たすき掛けにしたバッグはとても可愛くて思わずニヤニヤしてしまう。


 その上からモスグリーンの外套を羽織り、ウサリス達にお礼と行ってきますとあいさつを告げ、つい先日転移したイデア王国のすぐ近くの森に精霊の森(ここ)へ繋がる出入り口を開いた。



 回りに誰も居ないことを確認して、わたしは初めて人間が暮らす地へと踏み出したのだった。











「次の方~」


 入国審査のための列に並ぶこと30分。ようやくわたしの順番が回ってきた。


「お嬢ちゃんひとりかい?入国希望の理由を教えてもらえるかな?」


 それまで厳しい視線で審査をしていた門兵のおじさん二人はわたしの顔を見るや、まるで孫娘でも見るかのように目尻が下がり鼻の下まで伸びた。それを見ていた調書を書いていたお兄さんが口角をひきつらせている。


「えっと…お買い物に来ました!」

「そうかぁ~。おうちは何処かな?」


 え。自宅どこって言われても…説明の仕様がない。

 仕方ないのでわたしはすっとぼけ作戦に出ることにした。


 わたしはにこにこと満面の笑顔で自分がやって来た方角を指差し「あっち!」と答える。


「あっちかぁ~って事はカイデ村かな?」

「わかんない!」


 またも笑顔で答えたわたしに、調書を取っていたお兄さんがため息をついた。


「兵長、この子くらいの年の子は自分の村の名前を知らなかったりするものなので、余りしつこく質問攻めにしないであげてください。ごめんね、君があんまり可愛いからおじさんたち心配なんだよ」


 苦笑しながらお兄さんはわたしと視線を合わせるために膝を折り、優しく頭を撫でてくれた。他人に頭を撫でられるのはなんだかくすぐったい。


「もし誰かに会いに来たのなら呼び出せるけど、どうする?」

「大丈夫です。ありがとうございます」


 子供ひとりだけの入国なのでとても心配されたがわたしはそのまま市場への道筋を聞いて手を振って検問所を出た。


「とりあえず一番に靴買わなきゃ」


 わたしの履き物が珍しいのか道行く人がチラチラと見てきて何だか居心地が悪い。そんなに変かな?



 可愛いと思うんだけどな、布草履。



ブクマありがとうございます(*´ω`*)


誤字、脱字有りましたらご報告よろしくお願いします(*^^*)


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