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紅蓮隊、悪路王への対抗策を練るの事

「ダメって、どういう事だよおい!?」



金平が「八幡神」を宿した頼義に詰め寄る。頼義は嫌そうに手で振り払いながら、



「こらこら、そう突っかかるでない。唾が顔に飛ぶであろうが汚いなあ。端的に言うならば、『私』にはあの者を殺す力を持ちあわせておらぬ、という事よ」


「ああ?」



「八幡神」の答えに金平も他の二人も怪訝な顔をする。



「じゃあ何か、お前じゃあ弱っちくてあのバケモン一匹倒す事もできねえってか?へっ、ご大層な口聞く割りに大した事ねえなあ神さまよう」



自分だってあの巨人を倒すことができなかったくせに随分な言いようである。「八幡神」は金平の悪口(あっこう)も平然と受け流し、続けて言った。



「邪悪な力、鬼の力、この世ならざる(よこしま)なる存在、そのような(モノ)ならいくらでも薙ぎ払ってくれてやろうが、いかんな、アレには我が神威(かむい)は通じぬ。アレは()()()()()()()()()()()()()()()からな」


「邪悪な力じゃ無い……?じゃあ、アイツは『鬼』じゃねえって事か!?」


「そういう事になるな。まあ別段聖なる力というわけでも無いのだが。アレは『大地』そのものだ。『私』が手出しをする管轄では無いな。いわんや人間(ヒト)ごときがアレをどうこうしようなぞ、烏滸(おこ)がましいにも程があろう」


「あのあのあの!それはつまり、あの『悪路王』という存在は()()()()()()()()()()()()、という事なのでしょうか?あ、(わたくし)影道仙女(ほんどうせんにょ)と申します。陰陽寮に出仕する方術師の一人にて」



金平の前に影道仙が割り込むように入ってきて質問を重ねた。その顔は興味津々で聞きたいことが山ほどあってたまらぬ、というふうである。



「おう『鬼道衆』の生き残りどもであるな。神秘の薄れたこの時代にもまだそなたらの様な者どももおるか。いかにも、アレはこの日本(ひのもと)の大地を貫く『龍脈』そのものに人格を与えた、名付けるならば『地龍神』とでも言うべき存在よ。アレを倒そうと思ったらこの国の龍脈そのものを断たねばなるまい」


「なんだとお!?」



「八幡神」の突拍子も無い説明に金平と経範は二人して声を揃えて仰天した。手強い相手だとは実感していたが、まさか「大地」そのものが相手では確かに人間ごときが敵うはずもない。



「龍脈!それはつまり九州から瀬戸内を通り、本州を畿内から富士山に向けて貫く、この日本列島の背骨、いや『竜骨』とも言うべき大地の霊的な力の本流の事ですか!?」


「竜骨、なるほど確かにこの日本を一艘の舟に例えるならば確かに龍脈はその土台骨たる竜骨と呼んで差し支えなかろう。娘、なかなか良い感性をしておるな」


「わお、神様に褒められちゃった。えへへ」



「八幡神」に頭を撫でられて陰陽師はご満悦の様子である。



「ともすると、やはりかの者のエネルギーの出所は『()()()()()』から直接供給されていると言う事に……いやすると……」



影道仙はまた独自の言葉遣いでブツブツと独り言をしながら考え込み始める。



「かあああ!!二人だけでわかり合ったような会話してんじゃねえよ!!結局、アイツは倒せるのか倒せねえのかどっちなんだ!?」



いつもの事ながら話について行けない金平がしびれを切らして影道仙たちに食ってかかる。「八幡神」と影道仙は呆れた様に金平を見つめ、



「まったく、ホントに堪え性のない猿ですね貴殿は。動物園のチンパンジーだって『待て』が終わるまでバナナに手をつけたりはしないと言うのに」


「まあそう言ってやるな。こいつも若い身だ、堪え切れず血気に逸る年頃なのだろう。この間だって『この娘(わたし)』を想像しながら一人で……」


「わー!!わー!!何言ってんだお前はーっ!!」



何を慌てているのか、金平は顔を真っ赤にしながら「八幡神」の肩を掴んでその口を塞ごうとする。その直前、「八幡神」の瞼がゆっくりと閉じて行き、完全にその目が閉じられた。



「…………」


「…………」



「八幡神」が「彼方」へと還り「源頼義」に戻った彼女は、短い沈黙の後、みるみる顔を真っ赤に染めていく。



「金平、一人でいったいナニを……」


「してねえ!!何もしてねえよ俺は!!あの野郎なに言うだけ言ってトンズラこいてやがんだ!?とんだ風評被害だコンチクショー!!」



その狼狽ぶりがかえって怪しい。二人のやりとりをニヤニヤしながら眺めていた影道仙に金平は八つ当たりする様に話を振って場をごまかそうとした。



「俺のことはいいんだよどうでも!!で、これからどうすんだよ、どうすりゃああのデカブツをどうにかできるんだよ!?」


「ふむ、そうですね。『悪路王』の正体について情報が得られたというのは僥倖(ぎょうこう)でした。確かに今のままでは我々でも『悪路王』への対処法も打つ手が無かったでしょう。が、情報を得られたおかげでこれからの指針は立ちました。という事で頼義どのに意見具申いたしまする」



それまでの飄々としたもの言いからやや態度を改め、真面目な表情で陰陽師が頼義に言上する。



(わたくし)に『悪路王』に対抗するための腹案が一つありまする。それを実行するためにも、ここで一度我らを二手に分けて行動する必要があります。そのご許可を頂きたく」


「二手に?」


「然り。一組はこの場において留まり、『悪路王』が再び復活して進撃を開始するのを足止めする役。これには殿と(わたくし)が当たりましょう。我ら二人ならば倒すことはかなわなくとも幾らかでもその歩みを押しとどめる事で時間を稼ぐ事はできまする」


「なるほど。して、残る二人はいかに?」


「経範どの金平にはある地へ赴いて欲しいのです。そこにいるであろう()()()()のご助力をいただければ、あるいはあの巨人への対抗策が見えてくるやもしれません」


「おいさりげなく俺だけ呼び捨てにしてんじゃねえぞコラ」


「あいわかった。我らはどこへ向かえば良いのだ?」


「無視すんなコラ!」



騒ぎ立てる金平を平然と受け流して影道仙が二人に行き先を告げた。



「常陸国の中央に位置する霊峰、筑波山です」

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