7 オコワ
今夜も彩葉はガールズバー・ルナに来ている。どんな女の子がつくか楽しみだ。
「こんばんわ。オコワです」
顔立ちは普通だが、何となく全体的に威圧感のある女子だ。
何となく波長が合わないなと思いながら、適当に話を合わせて先日のナギサちゃんのように楽しく話せる女子がいないかな、と何となく辺りにそれとなく視線を巡らしていると、
「どうしてキョロキョロしているの?」
「あっ、いえ、知ってる女子はいないのかなって思って。あっ、ちょっとトイレ行ってくるね」
彩葉はトイレに行く時と席に戻る時にさりげなく辺りを見回して話しやすそうな女子を探し、とりあえずナギサが見えたので、もう少しオコワの様子を見て耐えられなくなりそうになったらナギサを指名することにした。
戻るとオコワが
「あれ、あんた、トイレに行く時カバンも持っていったの?私はそういう時持ち物は全部置きっぱだよ」
「まあ、一応貴重品とかはなくなると困るからね」
「でも大丈夫だよ」
「でも万が一無くなったらあなたも含めてこの周辺の人たちが疑われることになるし、不愉快な思いをすることになるでしょ」
「あっ、あんた日傘を持ち歩いてるんだ。邪魔じゃないの?」
「折り畳みだから邪魔じゃないし、紫外線から体を守れるし、体感温度も少し下がって楽だから。それに晴雨兼用だから、急に雨が降ってきても対応できて便利だし」
「でもそんなに紫外線とか気になるの?」
「最近は、小学生でさえ通学するときに日傘を差したりする時代でしょ?」
彩葉はうんざりしてきた。どうしてこの人は現代では常識となっていることにいちいち口をはさむのか。カバンを置きっぱにしたければそうして貴重品とかを盗まれて慌てふためいて周囲に迷惑をかければいいんだ。
日傘を持ち歩きたくなければ持たないで自分が紫外線で目や皮膚にダメージを受ければいいだけの話で、どうしてそれを押しつけるかのような言い方をするのか。
とりあえずこの場を脱出するにはナギサちゃんを指名するしかないと思った。それと同時にこういう場所でも必ずしもリラックスできる楽しいことばかりではないことが分かった。
「あっナギサちゃん呼んでくれる?」
「あたしじゃダメなの?」
「そうじゃなくって、ナギサちゃんはよくお話しする女子で、この前の続きを話すことになっているから」
オコワはブスッとした顔をして立ち去った。彩葉はああよかった、と安堵した。




