6 ナギサ
「いらっしゃいませ!」
全体的に暗くていくつかのオレンジ色のランプでかろうじて人の顔などが認識できるような感じの店だ。
すると中年の女性が近づいてきて
「リクエストはありますか?」
「リクエストって何か音楽をかけるっていうことですか?」
店を取り仕切っていると思われるその女性はふふふと笑って
「いえ、お好みの女の子、つまり指名したい女の子はいますかっていうことです」
「あっ、私、こちらのお店は初めてなので」
「わかりました。それではこちらの席にどうぞ」
彩葉は喉元まで「こちらのお店は女子でもいいんですか?」という質問が出かかったが、ダメと言われるどころか席に案内されたので、明らかにオーケーという意味だと思われるので、余計なことは言わない方が賢明だと思った。
案内された席に座って少しすると髪型がボブの女子が現れ、
「私、ナギサです。何をお飲みになりますか?」
彩葉はメニューを見ながら
「カシス・オレンジハイをお願いします」
「承知しました」
カシス・オレンジハイは予想よりも甘ったるい感じだった。もちろんアルコールが入っているのであって、この種のお酒は少量でもけっこうほろ酔い加減になるから飲み過ぎには注意しなければならないことを彩葉は知っていた。
話し始めるといつのまにか食べ物の話になった。ナギサは気さくで話しやすい女子だ。
「私は野菜は何でも食べる人なんだけど、あのパクチーってやつは駄目なのね。だって見た目はミツバと水菜とほうれん草を足して3で割ったみたいな感じなのに、包丁で切った途端水道の塩素の匂いがするんですもの。お客さんは何か苦手な食べ物はありますか?」
「私、何でも食べられるんですけど、ただあんまり辛いのは駄目なんですよね」
「辛いのが駄目ってことはカレーは甘口とか?」
「カレーは中辛なら大丈夫です。七味唐辛子とか、ワサビとかが苦手なんですよね」
「ふうむ。そうだ、じゃあ食べ物のクイズを出すね」
「クイズですか?できるかしら?」
「大丈夫よ。長寿の人たちがよく食べていると言われている体にいい食べ物をまとめて、それぞれの頭文字をとって『まごわやさしいよ』となるんだけど、この8種類の食べ物を順番に当ててちょうだい」
「いきなり『ま』が分からないわ。うーん。豆?」
「ピンポーン」
「『ご』はごまね。
「ピンポーン。次は文としては普通は『は』なんだけど、ここでは『わ』で考えてね」
「わ?分かった!ひらめいた!『わ』はわかめ」
「そう、いい調子だね」
「『や』は野菜で、『さ』は魚ね」
「そう、そう、もうちょっとだよ」
「『し』って全然分かんない」
「ほら、鍋にあるじゃない」
「えー?鍋に?」
「好き嫌いの分かれる、あの茶色いやつ。これってヒントというよりほとんど答えなんだけど」
「あっ、椎茸ね。次は『い』ってもっと分かんない」
「ほら、昔から女性が好きだと言われてるものだよ。巨人、大鵬、◯◯◯◯◯って聞いたことはない?ただしここでの答えはひらがなで2文字だけどね」
「あっ、芋ね。最後は簡単ね。ヨーグルトでしょ」
「正解。やったね。このクイズって結構難しいのよね。お客さんはなかなか善戦しましたね」
「あー、楽しかった」




