18 縮まる2人の距離
普通はガールズバーというのは、ほとんどの場合は男性であるお客さんがお店の女子と話す場だ。それが最近はどういうわけかマスターが常に浩二と彩葉を隣り合わせに座らせるせいもあって、お店の女子も巻き込みつつお客さんどうし、つまり浩二と彩葉が語り合う場になりつつあった。
彩葉は浩二に対する認識が変化してきているので、この頃は必ずしもケンカ腰ではなく気さくな感じで話しかけることが多くなっていた。
「ねえ、シャーロックホームズが好きなこととあなたの女嫌いとは関係があるの?」
「シャーロックホームズはどういうわけか女性に対して不信感を持っていて、いろんなエピソードを読んでいると時々そんな言動があって、俺は子供の時からシャーロックホームズシリーズを愛読しているせいか女性に対して無意識のうちにややシニカルな感じになってしまうのかもしれない。
だからホームズには常に恋人という存在は皆無なんだ。ただ、女性を嫌っていて女性には冷たいようではあるけど、事件に巻き込まれそうになって救いを求めてくる女性の依頼人に対しては誠意をもって対処している、そこがまたいいんだよね」
彩葉は浩二に対する印象が自分の中で急速に変化してきているのを感じていた。気がつくと最初の頃はあんなにとげとげしかった自分が本来の自分らしく気さくな感じになってきていた。
彼女の態度が少しくだけてくつろいだ感じになってきているせいか浩二もマイルドな感じになってきていた。浩二はどうも女性に冷たくニヒルに振る舞おうと意図的にやっているようにも思われた。
そこで彩葉はこれまでになくくつろいだ感じで日常的なことを語りかけてみた。
「浩二さんでしたっけ?あなたはどんな仕事をしているの?」
「ごく普通の会社員さ」
「会社がある日ってお昼はどうしているの?社員食堂?コンビニ弁当?それとも誰かお弁当を作ってくれる人がいるの?」
会ったばかりの頃の浩二だったらプライベートなことを聞くな、とか言っただろうが、最近の浩二はマイルドな感じになってきているせいか、割と素直に反応してくれた。
「お弁当と言えばね。作ってもらったことはないけど、作るようにアドバイスしたことはあるよ」
「どういうこと?」
「聞きたい?」
ミナミちゃんと彩葉は声をそろえて
「聞きたい!」




