12 驚愕の特殊装備
「実は、東京で星の数ほどあるガールズバーの中で、唯一このお店だけにあるすごいものがあるのよ」
「えっ、食べ物とは関係ないんでしょ?」
「ジャジャーン!
ガールズバーでは女子は細長いテーブルをはさんでお客さんと対面しているのだが、何とテーブルの女子側には引き出しがあり、ミナミちゃんがそこの取手を手前に引くとガスコンロと鉄板が現れたのだ。
ミナミちゃんはちょっと誇らしげに笑顔で
「どう、驚いたでしょ。ここでは簡単な調理ならお客さんの目の前でできちゃうの。女の子はお酒を飲んでいるお客さんと談笑しながら、あくまでも簡単な料理ではあるけどお客さんの目の前で調理をしてそれを二つの皿にもってそれぞれ食べるのよ。
普通はサラダ、中華、ピザなど料理は近くの契約している料理店に注文してもって来てもらうけど、この店ではそれに加えて簡単な料理を、しかも気に入った女の子が、なかにはほとんど料理をしたことがなくて下手な女子もいるけど、そんな様子もお客さんは楽しめるという寸法なの。
ここに来るお客さんは女の子を傷つけたり意地悪なことを言うような人はいないので、完璧に調理できなくても、不器用でも失敗してもそれを話の種にして楽しく会話を盛り上げてくれるのよ。そしてこのユニークな仕組みがお客さんとの会話を更に盛り上げてくれるのよ。それにあつあつのできたてが食べられるのがいいのよね」
ミナミちゃんは手際よく餃子を作るといくつかをお皿に載せてくれた。餃子はチーズがからんで絶妙なコンビネーションを醸しだしていた。
「とってもおいしい! 感激!」
すると隣から
「女っていう生き物は餃子好きだよな」
彩葉は生き物という言い方が気になったが聞き流すことにした。
すると男は
「女って不思議な生物だよな。写真とか見て甘いものとか食べながら駄弁るのが好きなんだよな。そのどこが楽しいんだか、理解に苦しむぜ」
一般的には誰かに悪口などを言われた時には気にするな、言いたい奴には言わしておけ、と言うが、彩葉はなかなかそうできなくていつもくよくよと気に病んでしまう性格だ。何を言われても気にしないで受け流せる人はいいな、といつも思っている。
またはこんな時にガンガン反論できる人も羨ましいと思っているが、彩葉はどちらでもないしどちらかというとおとなしい方の女子だ。けれどもこの時の彩葉は餃子をほおばりつつビールを飲んでいたせいかいつもと違っていた。そして思わず反論してしまったのだ。




