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預かりもの 〜拾って、磨いて、返す、辺獄の回収屋〜  作者: ウォーレン・コールドウェル
第二章 開けて悔しき浜の箱

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憶えておく

――風の便り

「飯炊きの連れが、よそ者の行き先と潮の具合を、根掘り葉掘り訊(き)いとったよ」

「日が傾いたら、そのよそ者と腕を吊(つ)った若いのが、石へすっ飛んでったで」

「戸を閉めとっても聞こえたよ。若いのが、あんたまで沈むぞ、って怒鳴っとった」

「夜には、外れの箱の人まで水へ入ってったそうな。隣のかみさんが戸の隙間からこっそり見とったそうな」

 夜が明けた。


 坂の上へは戻らなかった。

石の見える砂に座ったまま、ひと晩を越した。


 沖の端から日が昇ってくる。


 婆さんの座っていた石の頭に、貝が二つ並んでいる。

ゆうべ上に向けたままの白い面に、朝日が差している。


 婆さんの沈んだあたりの海も、同じ光の下にある。

どのあたりだったのかは、明るくなっても見分けがつかない。


 気がつくと、膝の上で右手を握りこんでいた。

ゆうべ、細い手首が抜けていった手だ。

指をほどくと、掌(てのひら)に爪の跡が赤く残っていた。


 山からついてきた唄(うた)も、まだ背中で鳴っている。


 水の際(きわ)に若い漁師が座っていた。

着物は乾いている。

一度は家へ戻って、また下りてきたらしい。

こっちの裾は、ゆうべの潮をまだ吸って重い。


 目は、石の頭の貝に向いている。


 ゆうべと同じで、かける言葉は見つからない。

黙って、隣に腰を下ろす。


 若い漁師はこっちを見なかった。

目のふちが、まだ赤い。


 寄せては退(ひ)く潮の音を、二人ともしばらく聞いていた。


 やがて、若い漁師のほうから口をひらいた。


「いつまでいる」

「あと一日か、二日だ」

「……そうかい」


 若い漁師はそれきり黙って、寄せてくる潮を見ている。


 岩場のほうで波が岩に当たって、それから岩が鳴った。


「崖の下じゃ、あんたの手が止めるまで、岩のほうが先に鳴ってたな」


 吊(つ)っていないほうの指が、砂をひとつ掻(か)いた。


「杭(くい)のとこで、屋根のかけらが腕に当たった。

……けど、腕のほうが先に折れてた。

あれも、あの岩と同じだろ」


 あの日、杭(くい)まで退(さ)がらせれば跳ねる材は届かないと踏んでいた。


 自分の掌(てのひら)へ、目が落ちた。


「あの崩れを起こしたのは、こっちの手だ」

「知ってる」


 若い漁師は、吊(つ)った腕の板の間から覗(のぞ)く指を少しだけ曲げた。


「……何で折れたか分からんままなのが、いちばん腹が立ってた」


 波が一つ、寄せて退(ひ)いた。


「骨は、まっすぐつくとさ。日にちはかかるが、元どおりになるってよ」

「よかった。……網は」


 こっちが訊(き)くと、若い漁師は左の掌(てのひら)を開いて、また握った。

指の付け根が固く盛り上がっている。


「それまでは、左で引く」


 二人とも、そのまましばらく動かなかった。


 浜に人が出て、網を広げはじめる。

そこで腰を上げた。


 網を繕(つくろ)う清(せい)のところへ行く。

山へ発(た)っているあいだ、石の婆さんを見ていてくれた。


 繕(つくろ)う手は、止まらない。


「留守のあいだは、助かった。

……石の婆さんの名を、知らないか」


 指が一度止まって、また動きだした。


「知らん」

「誰なら知ってる」

「……さあねえ」


 話は、そこで切れた。

戸口ではないから、閉める戸も無い。

背中を向けられて、それで終いだ。


 うしろで、誰かが砂を踏んだ。


 若い漁師が立っていた。

清(せい)の背中を、まだ見ている。


  ◇


 昼を過ぎるころには、若い漁師が小屋の並びを一軒ずつ叩いていた。

右腕は吊(つ)ったまま、左の拳(こぶし)で戸を叩く。

返事があれば名を訊(き)き、無ければ次へ行く。


 こっちは、その少しうしろを付いて歩く。


 一軒目は、戸が細く開いた。


「婆さんの名を知らねえか」

「知らんよ」


 二軒目は、戸を開けずに声だけが返ってくる。


「あの婆さんの名だ」

「……そんなもん、聞いたことがねえ」


 三軒目では、年寄りが戸口まで出てきた。


「婆さんだ。石の上の」

「石の上の婆さんは、石の上の婆さんだろ」


 その戸が閉まったところで、若い漁師の横へ並んだ。


「腕がそれじゃ、きついだろう。

こっちは、端から回る」

「……あんたは来るな」

「来るなとは」

「俺が訊(き)いて回る。

……あんたに訊(き)いてもらったんじゃ、意味がねえ」


 手を貸せば、ゆうべ手首を掴みきれなかった借りが、少しは返せる気がしていた。


 ――それも、こっちの都合か。


 それに、石の婆さんの話になると、この浜の戸は閉まる。

山へ発(た)つ前に、頼んで回ったときもそうだった。


 頷(うなず)いて、その場を退(さ)がった。


 小屋の並びのなかほどで、干した網の陰に腰を下ろす。

ここなら手は出さずに、戸を叩く背中を見ていられる。


 七軒目で、戸が半分だけ開く。


 源(げん)という年寄りの家だ。

こっちが頼みに来たときは、戸も開けなかった。


 名は知らん、と源(げん)は言った。

それから、こう続けた。


「昔は、網を繕(つくろ)っとったよ。

あの人の繕(つくろ)った網は、目がよう揃っとったな」

「それは、いつまで」

「……さあ。気がついたら、石の上だ」


 こっちの知っている婆さんも、いつも膝を抱えて沖を向いていた。

小屋まで運んでも、自分の足で石へ戻って、また膝を抱える。


 網も持たず、桶も持たない。

浜へ来た日から、ずっとだ。


 ――持たなくなった日が、どこかにあったってことか。


 戸を叩く音だけが、浜の端から端へ移っていく。

日が傾くまで、それは止まらなかった。


 端まで回り終えるころには、顔を出した家はみな訊(き)き終えていた。


 あとは一度も誰も出てこなかった家だけが、残っている。


 若い漁師は、その戸をもう一度叩いていく。


 はじめは「婆さんの名を知らねえか」と訊(き)いていた。

二度目は「あの人の名だ」に変わっている。


 日暮れ前に、いちばん端の小屋を叩く。

誰も出てこない。


 叩いた手を下ろして、そこにしばらく立っている。


 網の陰を出て、そばまで歩いた。


 舟溜(ふなだ)まりのほうで、沖から戻った舟を上げている。


「後ろを支えろ」

「手が足りねえ。誰か呼んで来い」


 網の脇にいた者が、手を拭いながら駆け下りていく。

船底が砂を鳴らした。


 若い漁師の目が、舟の後ろで止まった。


「……とも」


 ぽつりと口をついて出た。

言ってから、若い漁師は自分の口へ手をやった。


「いま、なんて言った」

「……とも、って」

「舟の、後ろのことか」

「うしろ……ああ」


 舟溜(ふなだ)まりで、また誰かが「後ろだ」と声を張った。

若い漁師は、その声を背に聞いたまま、石のほうへ顔を向けた。


「……餓鬼(がき)のころだ。ちょうど、ああやって舟が上がってた。

石の上に婆さんがいて、そのうしろで、誰かが、とも、って言ってた。

……舟に言ってるんだと思ってた」


 口のほうが、先に覚えていたらしい。


「呼んでたのは」

「覚えてねえ」


 若い漁師は来た道を七軒目まで引き返していく。

こっちも少し離れてあとに付いた。


 七軒目の戸を、また叩く。

さっきより早く開いた。


「なぁ……源(げん)さん。

もしかして、婆さんは、トモってんじゃねえか」


 源(げん)は、しばらく黙っていた。


「トモ……ああ。トモだ」

「さっきは知らんと言ったろ」

「知らんかった。言われりゃ、そうだ。

……昔はみんな、そう呼んどった」


 それから、思い出したように言い足した。


「トモの繕(つくろ)った網は、目が揃っとった」


 若い漁師は何も返さなかった。

源(げん)に頭をひとつ下げて、戸口を離れる。


 その目が小屋の並びの先へ向いた。

石の頭が、ここからでも見える。


 足が、そっちへ下りていく。

潮はまだ裾を越えていない。


 貝の並んだ石の前に立つと、左手を膝について少し腰をかがめた。


「トモ」


 返るものは無かった。


 二度は呼ばなかった。

二度呼べば、返事を待つことになる。


 浜へ上がってくるまで、こっちは声をかけなかった。


 若い漁師はこっちの前まで来て足を止める。

目のふちが、また赤い。

それでも、まっすぐこっちを見ている。


「……昼に叩いた戸を、もう一回まわる」

「今度は、何を訊(き)く」

「訊(き)かねえ。言う(・・)んだ」


 それから一軒ずつ、トモだった、と言って歩いていった。


 砂を踏む足は、昼よりも速い。


 告げて回った最後に、若い漁師は浜の外れへ足を向ける。


 今度は、その横に並んで歩いた。

日が暮れかけて、潮が満ちはじめている。


 箱の男は外れの砂に座っていた。

ゆうべ、石の前まで水に入ってきた男だ。


 膝に箱を乗せて、その上に両手を軽く重ねている。


 若い漁師がその前で足を止めた。

目が、膝の箱から石のほうへ動いて、また箱へ戻る。


「……箱は、婆さんのか」


 箱の男が、首を横に振った。


「いや」


 膝の箱を、両腕で抱え込む。


「……これは、向こうのだ」


 初めて会った日に、どこから戻ったのかと訊(き)いたときも、この男は「向こうからだ」と答えた。


 男の目は、箱に落ちたままだ。


「……取りに来る、と言われた」


 言い直しは無かった。

おととい、ここで箱の話をしたときは、言うたびに先と後が入れ替わっていた。


 若い漁師は、少しのあいだ黙っていた。


「石の上の婆さんな、トモってんだ」


 男の腕がほどけて、手が箱の上へ動いた。

紐の結び目を指の腹でひとつ撫(な)でる。


 その指先を、目で追った。

日ごとに右へ寄っていく結び目だ。

いまは箱を回りこんで、左の膝頭の外にある。


 指は、紐を解(ほど)きはしなかった。


「……トモ」


 訊(き)き返す声ではなかった。


 男が箱を片腕へ持ち替え、空いた手を砂について立ち上がった。


 波打ち際(ぎわ)を、石のほうへ歩いていく。

若い漁師があとに付いた。

こっちは少し離れて歩く。


 石の前の水の際(きわ)で、男が足を止めた。

若い漁師はその二歩うしろで止まった。


 石の上に、貝が二つ並んでいる。

波が寄せて石の裾を濡らし、また退(ひ)いていった。


 男は、その二つを見ていた。

こっちにも、若い漁師にも、顔は向けない。


「……いま、帰った(・・・)」


 石へ向けた声だった。


 男が屈(かが)んで、空いた手で水の際(きわ)の貝をひとつ拾った。

指で砂を落として、石の上の二つの横へ置く。


 若い漁師の左手が、吊(つ)った腕の袖をつかむ。


 しばらく、そのまま動かない。


 それから、二歩の間を詰めて、男の隣に立った。


  ◇


 暮れのうちに、浜の歩き方が変わった。


 石のそばの砂にいると、桶を提(さ)げた二人が通りかかった。

前に見たときは、二人とも石の手前で向きを変えて、遠回りしていた。


 今日は、片方が石の脇をまっすぐ通っていく。

戻りも、同じところを通る。


 もう一人は、いつもどおり石の手前で向きを変える。


  ◇


 日の沈みきらないうちに、坂を上がった。


 連れの楽々森彦(ささもりひこ)は火の脇に座っていた。

二人ぶんの粟(あわ)が、まだ炊いてある。


 起きたことを順に話した。

崖の下でのことも、掴めなかった手首のことも話す。

婆さんの名が分かったことも、箱の男のことも、順のまま話した。


 楽々森彦(ささもりひこ)が、火から顔を上げた。


「箱の男は」

「石のほうにいる。箱は、持ったままだ」


 頷(うなず)きが、ひとつ返ってきただけだった。


 それから、この男は火の底のほうを見ていた。


「名は」

「トモ、だと」

「……そうかい」


 繰り返しはしなかった。

一度だけ、口の中でその音を確かめた顔をした。


「俺は、その人を知らねえ」

「こっちもだ」


 腿(もも)の上で、楽々森彦(ささもりひこ)の指が拍を刻みかけて、途中で止まった。


「知らねえまま、憶(おぼ)えとくことはできるかい」

「できる」


 口に出したとたん、背中のすぐうしろで鳴っていた一拍が、ふっと離れた。

荷をひとつ下ろしたように、背中が軽くなった。


 山で聞いた唄(うた)だ。

社(やしろ)の奥にいた温羅(うら)の唄(うた)に、里の者たちが鉄を打つ拍で応えていた。

あの日から、その拍が耳ではなく背中で鳴る。

海まで下りても、波の音にまぎれなかった。


 拾ったものは、持ち主へ返す。

そうやって食ってきた。

山で拾ったこの唄(うた)も、返すつもりでいたが、返せないまま、ずっとうしろについて回っていた。


 温羅(うら)には、「唄(うた)は、返すもんじゃねえよ、回収屋」と笑われたことがあった。

あのときは、何のことか分からなかったが。


 山の拍を、胸のうちでなぞってみる。

打つ数まで、そのまま出てくる。


 もう、うしろから唄(うた)は鳴らない。

こっちが、憶(おぼ)えている。


 火のほうへ向き直って薪を足した。

控えの薪は、まだ平たい岩の上に積んである。


 濡れないように積んでくれたのは、この男だ。


  ◇


 その晩、浜の小屋にいつもどおり灯が入った。

戸も、端から順に閉まっていく。


 坂の上から見下ろすと、水の際(きわ)にもう一つ小さな火が見えた。


 坂の上の火を離れて、浜へ下りた。


 若い漁師が水の際(きわ)で火を焚(た)いていた。

流れ着いた木を、片手で器用に組んである。


 その火から少し離れた砂に、腰を据(す)える。


 若い漁師が、火越しにこっちを見た。


「そんな端でいいのか」

「ここでいい。じきに発(た)つ。火の前に座ると、腰が上がらなくなる」


 若い漁師はそれ以上は言わなかった。

燃えさしを一本、片手で奥へ押しこむ。


 戸が一つ開いて、年寄りが一人出てきた。

清(せい)だ。

箱の男の年を言い合っていた三人の一人でもある。


 砂を払って火の前に腰を下ろす。

誰にも、声はかけなかった。


 しばらくして、もう一つ戸が開く。


 出てきたのは源(げん)で、手ぶらではない。

乾いた薪をひと抱え、火の脇へ下ろした。


 若い漁師が顔を上げると、源(げん)が顎(あご)で薪を指した。


 若い漁師は、その薪を一本取って火へ足す。


 誰も、口を開かなかった。


 石のほうから、箱の男が歩いてくるのが見えた。

片腕に箱を、もう片方の腕に流れ着いた木を二、三本抱えている。


 こっちは立って、火の脇の砂を掌(てのひら)で払った。

座る場所をひとつ空ける。


 火の明かりの外へ引き返して、元の砂に座り直した。


 焚(た)き火の際(きわ)まで来て、箱の男は足を止めた。


 火の脇へ木を置いて、こっちが払っておいたところに腰を下ろす。

箱は、膝の上にある。


 火のまわりに座る者が、四人になった。


 若い漁師が、年寄り二人のほうへ顔を向ける。


「……この人は、箱を開けねえ。

預かってるんだ」


 清(せい)が、男の顔をしばらく見ていた。


 それから、男の運んできた木を一本取って火へ足す。


 木が、ひとつ爆(は)ぜた。


 貝を置いた石は、灯の届かないところにある。


 それでも、白いものが三つ、暗がりに浮いていた。


  ◇


 明くる朝、浜の裏手で流れ着いた木を拾い集めた。


 浜へ来た日に薪を頼んで、余分はねえと断られた家がある。

鍋を借りたのも、その家だ。


 その戸口の脇へ、拾った木を積み足す。

三日もすれば乾く。

使うかどうかは、あの家が決めればいい。


 声はかけない。

こっちは置いて、退(さ)がる。


 浜へ下りた。

潮は引いて、石は裾まで乾いて出ている。


 桶を提(さ)げた者が二人、石の横を通っていった。

暮れに向きを変えていたほうも、今朝は同じところを通る。

桶の水が、石の裾へ少しこぼれた。


 石の脇に、箱の男が座っていた。

石を背もたれにして、膝に箱を載せている。


 男の前で、足を止めた。


 膝の箱の結び目は、ゆうべからまた右へ寄って、いまは右の腿(もも)の付け根にある。


 男の顔に貼りついた一枚は、崩れていない。

頬から顎(あご)へ、掌(てのひら)の幅だけずれた縫い目も、崖の下で手を離したときの形のままだ。


 いつもなら、拾って、磨いて、返す。


 縫い目へ伸びかけた指を、握りこんだ。

崖の下で、男はこの一枚ごと持ちこたえた。


 ――この一枚は、本人に置いていく。


 目が、膝の箱へ落ちた。

顔を上げて、男に言った。


「また……会うまでな」


 男がこっちを見た。

それから、頷(うなず)いた。深くはない。

一度だけだ。


 石の脇を離れた。


 水の際(きわ)で、若い漁師が待っている。

左手を出してきた。


「あんたが来る前から、トモは石の上にいた」

「ああ」

「あんたが行っても、名は残る」


 その手を取った。

折れているほうではない、左の手だ。


「どこへ行く」

「南へ」

「遠いのか」

「遠い」

「……トモってのは、忘れねえでくれ」

「ああ……憶(おぼ)えとく」

「……ついでだ。俺のも訊(き)いてけ」


 ――訊(き)いていなかった。一度も。


「あんたは」

「――浜の、楫(かじ)だ」

「……楫(かじ)」


 握った手が、一度きつくなって、それから離れた。

浜の者に手を出されたのは、この浜へ来てから、これが初めてだ。


 それ以上は何も言わずに、坂のほうへ歩きだす。


 石の脇で、箱の男が、浜のほうを向いて座っている。

箱の下には、楫(かじ)の手拭いが敷いてある。


 石の上には、貝が三つ、並んでいた。

――浜のあの石はね、桶を提(さ)げた者が、みな手前で向きを変えとったそうな。

いまじゃ向きを変えんで、そのまま脇を抜けていく者もおるんだと。

石の裾には、ときどき、こぼれた水の跡が残っとるよ。

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