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『フールの大冒険 ~聖なるマップを手に、異世界でまだ見ぬ両親を探します~』  作者: ☆☆アダム☆☆


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4/20

第4話 はじめての町



【聖なるマップ】


羊皮紙に浮かんだ文字を。


私はもう一度、ゆっくり読んだ。


「聖なる……マップ」


波の音が響く砂浜。


さっきまで何も書かれていなかった紙には、今、この世界の地図が広がっている。


山。


森。


川。


海。


そして、たくさんの町や国。


その上に浮かぶ、いくつもの光。


【☆1】


【☆2】


【☆3】


遠くには。


【☆5】


そして――


【???】


【???】


【???】


【???】


四つだけ。


星とは違う、不気味な印がある。


「……これ、何なんだろう」


「分からないでぷ」


緑は大きな本を開いたまま、難しい顔をしていた。


さっきから何度もページをめくっている。


「その本にも載ってないの?」


「ないでぷ」


「何でも載ってそうなのに」


「何でもは載ってないでぷ」


緑は少しむっとした。


「本は、知らないことを減らすための物でぷ。全部知った気になるための物じゃないでぷ」


「……なるほど」


ちょっと格好いい。


「緑、頭いいね」


「当然でぷ」


「褒めるとすぐこれでぷ」


黄色が呆れた。


「黄色よりは賢いでぷ」


「今なんて言ったでぷ!?」


「事実でぷ」


「喧嘩しないの」


私は二匹の間に入る。


赤はというと。


少し離れた場所で、倒したブラックファングを眺めていた。


「……」


「赤?」


「こいつ」


赤が真剣な顔で言った。


「焼いたら食えるでぷ?」


「やめなさい」


「もったいないでぷ」


「さっき殺されかけた相手だよ!?」


「だから食べて勝利を実感するでぷ」


「どういう文化なの!?」


この世界。


まだ来たばかりなのに。


分からないことが多すぎる。


でも。


少しだけ。


楽しい。


◇◇◇


「それで」


私は聖なるマップを見る。


「この光ってる☆1は何?」


地図の端。


私たちの現在地らしい場所から、それほど遠くないところで。


【☆1】


が点滅している。


「押してみるでぷ?」


赤が指を伸ばす。


「待って!」


私は羊皮紙を頭上へ逃がした。


「さっき緑が、分からないものには触るなって言ったでしょ!」


「言ったでぷ」


「でも気になるでぷ」


「私も気になるけど!」


見るだけなら。


大丈夫かな。


たぶん。


……たぶん。


私は恐る恐る。


【☆1】


へ指を近づけた。


「フール」


緑が言う。


「変だと思ったら、すぐ離すでぷ」


「うん」


ちょん。


触れた。


その瞬間。


【☆1】


が光った。


「うわっ!」


私は指を引っ込める。


文字が現れる。


【旅人の短剣】


【☆1】


【現在地から約3.2km】


【取得可能】


「…………」


「…………」


「…………」


四人で。


文字を見つめた。


黄色が最初に口を開く。


「お宝の場所が分かるでぷ?」


「……みたい」


黄色の目が。


輝いた。


「フールちゃん」


「なに?」


「その紙、俺にくれないでぷ?」


「絶対やだ」


「一生大切にするでぷ」


「私が大切にする!」


緑は。


笑っていなかった。


「フール」


「?」


「これ、人に見せないほうがいいでぷ」


その声に。


私も羊皮紙を見る。


「どうして?」


「もし、この地図が本当に物の場所を示してるなら」


緑は周囲を確認してから。


声を落とした。


「欲しがる人間は、いっぱいいるでぷ」


「……」


確かに。


☆1があるなら。


☆5もある。


それに。


四つの【???】。


何かは分からない。


でも。


もし。


とんでもなく貴重な物だったら?


「盗まれる?」


「それだけなら、まだいいでぷ」


緑の言葉に。


背中が少し寒くなった。


私は。


すぐ羊皮紙を畳んだ。


服の内側。


絶対に落とさない場所へしまう。


「必要な時だけ出す」


「それがいいでぷ」


黄色が残念そうに呟く。


「見せびらかしたかったでぷ」


「なんで黄色が!?」


◇◇◇


私たちは。


☆1の場所へ向かうことにした。


理由は簡単。


【旅人の短剣】


今の私に。


必要だから。


「木の棒よりは強いでぷ」


赤が言う。


「比較対象が悲しいよ」


砂浜を離れる。


そこから。


景色が変わった。


木々。


見たことのない花。


青い葉。


赤い実。


空中をふわふわ飛ぶ。


透明なクラゲみたいな生き物。


「何あれ!?」


「ミズクラゲ鳥でぷ」


「クラゲなの? 鳥なの?」


「ミズクラゲ鳥でぷ」


「答えになってない!」


少し進むと。


道が出てきた。


土の道。


馬車が通った跡。


人の足跡。


そして。


遠く。


石造りの壁が見えた。


「あれ?」


「町でぷ」


「町!」


私は。


思わず走り出した。


「フール! 待つでぷ!」


三匹が追いかけてくる。


近づくほど。


大きくなる。


高い石壁。


開かれた門。


その上では。


色とりどりの旗が風に揺れていた。


門の向こう。


たくさんの屋根。


煙突から上がる煙。


そして。


人の声。


「すごい……」


この世界で。


初めて見る町。


門の上には。


大きな文字。


【ポルト】


「ポルト……」


私は。


一歩。


町へ入った。


そして。


目を見開いた。


「うわぁ……!」


人。


人。


人。


でも。


人間だけじゃない。


尖った耳を持つ人。


身体中が毛で覆われた人。


私より小さいのに、ものすごく太い腕をした人。


角の生えた女の人。


普通にゴブリンも歩いている。


「すごい!」


「何がでぷ?」


赤には。


普通の景色らしい。


「いろんな人がいる!」


「いるでぷ」


「角生えてる!」


「生えてるでぷ」


「あの人、尻尾ある!」


「あるでぷ」


「すごい!」


「フールちゃん、田舎者みたいでぷ」


黄色が言った。


「異世界人なの!」


道の両側には。


店。


店。


店。


肉を焼く匂い。


甘い菓子。


見たことのない果物。


武器。


鎧。


宝石。


薬。


空中で勝手に回っている瓶。


喋る花。


「買ってくれ!」


と叫んでいるキノコ。


「……あのキノコ喋ってるよ?」


「喋るキノコでぷ」


「そのまま!」


向こうでは。


男がカードを掲げている。


「火炎カード! 本日限り赤B三枚!」


別の店では。


小さな石が空中に浮いていた。


「魔法石だよ! 旅のお供にどうだい!」


あっちも見たい。


こっちも見たい。


「フール!」


緑に服を掴まれた。


「寄り道すると迷子になるでぷ!」


「もうちょっとだけ!」


「駄目でぷ!」


「お菓子!」


「後でぷ!」


「肉!」


赤が反応する。


「肉!?」


「赤まで行くなでぷ!」


楽しい。


何もかも。


初めて。


昨日まで。


私は。


おばあちゃんと暮らしていた。


それが今は。


知らない世界の。


知らない町を。


三匹のゴブリンと歩いている。


本当に。


冒険してるんだ。


そう思うと。


胸が。


少しだけ高鳴った。


◇◇◇


「ところで」


町の中を歩きながら。


私は聞いた。


「短剣ってどこにあるの?」


「地図を見るでぷ」


「ここで出して大丈夫?」


緑が周囲を見る。


「人が少ない場所で見るでぷ」


私たちは。


大通りから一本外れた。


細い路地へ入った。


誰もいないことを確認。


羊皮紙を。


ほんの少しだけ開く。


【旅人の短剣】


【残り約180m】


「こっち」


進む。


【約90m】


さらに進む。


【約30m】


「この辺……」


私は。


顔を上げた。


「……ここ?」


目の前に。


店。


たぶん。


武器屋。


看板には。


剣の絵。


ただし。


建物が。


ものすごく古い。


壁にはヒビ。


看板は斜め。


扉も。


今にも外れそう。


「ここに☆1?」


黄色が嫌そうな顔をする。


「潰れかけでぷ」


「失礼だよ」


その瞬間。


ギィィィ……。


扉が。


勝手に開いた。


「ひっ」


暗い店内。


そして。


奥から。


低い声。


「……客か」


「…………」


私たちは。


顔を見合わせた。


赤が。


私を見る。


「フールが先に行くでぷ」


「なんで!?」


「装備が欲しいのはフールでぷ」


「さっき守るって言ったじゃん!」


「買い物は戦闘じゃないでぷ」


正論。


腹立つ。


「……行くよ」


四人で。


店へ入った。


中は。


外よりさらに暗かった。


壁いっぱいに。


剣。


槍。


斧。


盾。


見たことのない武器まである。


そして。


店の奥。


巨大な男が。


椅子に座っていた。


「……」


大きい。


ものすごく。


大きい。


私の倍近い。


太い腕。


黒い髪。


額には。


一本の角。


「いらっしゃい」


声は。


意外なくらい静かだった。


「何を探している」


「あ、えっと……」


私は。


聖なるマップを出さずに。


店内を見る。


光っている物。


……ない。


どうやって探せばいいの?


すると。


服の中の羊皮紙が。


ほんのり暖かくなった。


「?」


店の隅。


古い樽。


その中に。


何本もの中古の短剣が入っている。


近づく。


そのうちの一本。


触れた瞬間。


胸元の羊皮紙が。


トクン。


脈打った。


「これ……」


錆びてはいない。


でも。


派手でもない。


茶色い革の柄。


短い刃。


どこにでもありそうな。


普通の短剣。


「おじさん」


「おじ……」


男の眉が。


ぴくっと動く。


「……それ、いくらですか?」


「八赤B」


「八?」


私は。


黄色を見る。


黄色が前へ出た。


「高いでぷ」


「中古だが手入れはしてある」


「五赤Bでぷ」


「七」


「四」


「なぜ下がった」


「交渉でぷ」


「六」


「三」


「帰れ」


「五でぷ!」


「最初にお前が言った額だろう」


黄色が。


にやりと笑った。


「交渉成立でぷ」


「……」


巨大な男が。


しばらく黄色を見つめる。


「お前」


「なんでぷ?」


「商人に向いているな」


「当然でぷ」


黄色が。


ものすごく嬉しそうだった。


五赤Bを払う。


「はい」


私は。


短剣を受け取った。


ずしり。


木の棒とは。


全然違う。


「……武器」


少し。


怖い。


これは。


本当に。


誰かを傷つけられる物だ。


「持ち方」


店主が立ち上がった。


「え?」


私の手を。


短剣ごと軽く直す。


「力を入れすぎるな」


「こう?」


「そうだ」


「ありがとう」


「抜き身で歩くなよ」


「……鞘ないです」


店主。


「……」


私。


「……」


店主が。


深いため息をついた。


「待ってろ」


奥へ行き。


古い革の鞘と腰帯を持ってくる。


「これを使え」


「いくら?」


「いらん」


「え?」


「初心者が抜き身で歩いていたら、周りが迷惑だ」


「……ありがとうございます!」


腰へ。


短剣を装備する。


その瞬間。


胸元。


聖なるマップが。


熱くなった。


「!」


こっそり。


羊皮紙を見る。


【QUEST CLEAR】


『装備を手に入れよ』


そして。


【旅人の短剣】


【☆1】


【初心者用武器】


【耐久性:普通】


【特殊効果:なし】


「特殊効果……なし」


ちょっと悲しい。


「☆1でぷから」


緑が小声で言う。


「これからでぷ」


赤が笑う。


「うん」


そうだ。


最初から。


すごい武器じゃなくていい。


これが。


私の最初の一本。


私は。


短剣の柄を握った。


「大事にする」


その時。


店主が。


こちらを見ていた。


正確には。


私ではない。


さっき。


ほんの一瞬だけ開いた。


羊皮紙。


「嬢ちゃん」


「?」


店主の声から。


さっきまでの穏やかさが消えていた。


「今の紙」


私の身体が。


固まる。


緑も。


黄色も。


赤も。


黙った。


「……何のこと?」


「隠さなくていい」


店主は。


声を落とした。


「奪うつもりはない」


「……」


「だが」


男の目が。


鋭くなる。


「それを人前で見せるな」


緑が。


私の前へ半歩出た。


「知ってるでぷ?」


「いや」


店主は首を横に振る。


「同じ物かどうかも分からん」


「じゃあ、なんで?」


私が聞く。


店主は。


少し考えてから。


店の入口へ向かった。


外を確認。


扉を閉める。


カチャ。


鍵。


「……?」


戻ってくる。


「昔」


店主が言った。


「似たような物を持った二人組を見たことがある」


心臓が。


跳ねた。


「二人?」


「ああ」


「どんな人!?」


思わず。


店主へ近づく。


「男と女だ」


「人間?」


「そう見えた」


「名前は!?」


「知らん」


「どこへ行ったの!?」


「知らん」


「いつ!?」


「昔だ」


それだけ。


でも。


胸が騒ぐ。


男と。


女。


似たような物。


まさか。


そんな簡単に。


お父さんと。


お母さん?


「その人たち」


私は聞いた。


「何してたの?」


店主の顔が。


険しくなった。


「逃げていた」


「……え?」


「追われていたんだ」


さっきまで。


外から聞こえていた町の喧騒が。


急に。


遠く感じた。


「誰に?」


店主は。


しばらく答えなかった。


そして。


自分の左手を見る。


「黒い服を着た連中だった」


緑の耳が。


ぴくっと動いた。


「……まさか」


「知ってるの?」


緑は。


答えない。


店主が続ける。


「全員じゃない」


「え?」


「俺が見たのは一人だけだ」


男は。


左手の甲を指差した。


「そこに」


短い沈黙。


「数字があった」


「数字?」


私は。


何も分からなかった。


でも。


三匹は違った。


赤から。


笑顔が消える。


黄色が。


金の袋を握る。


そして。


緑が。


小さな声で。


その名前を言った。


「……TIME」


「タイム?」


初めて聞く。


言葉。


その瞬間。


胸元が。


熱くなった。


「熱っ!」


羊皮紙。


勝手に。


動いている。


「フール!」


取り出す。


聖なるマップが。


光っていた。


世界地図。


四つの。


【???】


そのうち。


一つが。


トクン。


「……え?」


トクン。


まるで。


心臓みたいに。


脈打った。


そして。


地図の上に。


新しい文字が。


ゆっくり。


浮かび上がった。


【NEW INFORMATION】


【TIME】


「……」


誰も。


喋らない。


私は。


その文字を見る。


TIME。


お父さんと。


お母さん。


似たような羊皮紙を持っていた二人。


左手に数字を持つ者。


まだ。


何一つ。


つながってはいない。


ただ。


一つだけ。


分かった。


この世界には。


私の知らない何かがある。


そして。


聖なるマップは。


私より先に。


それを知っている。


トクン。


【???】が。


もう一度。


脈打った。

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