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『フールの大冒険 ~聖なるマップを手に、異世界でまだ見ぬ両親を探します~』  作者: ☆☆アダム☆☆


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12/17

第12話 小さな家族


「ここ?」


「地図が正しけりゃな」


夕暮れのアデュー。


華やかな中心街から。


少し離れた場所。


カードを模した大きな看板も。


魔法の光も。


ここには少ない。


並んでいるのは。


古い家。


細い道。


洗濯物。


夕飯の匂い。


子供たちの声。


私は。


王子様にもらった地図と。


目の前の家を見比べた。


「……小さいね」


「家なんて寝られりゃ十分だ」


オラクルが言う。


「俺なんか昔は橋の下――」


止まった。


「何?」


「何でもねえ」


「今、橋の下って」


「聞き間違いだ」


「言ったよね?」


「猫の聞き間違いだ」


「私、猫じゃないよ」


「俺が猫だ!」


何それ。


「それより」


オラクルが。


家を見る。


「行くぞ」


「うん」


扉。


こんこん。


「はーい」


中から。


聞き覚えのある声。


扉が開く。


「あ……」


市場のお姉さん。


私を見る。


目。


丸くなる。


「あなた……!」


「こんにちは」


私は。


ぺこり。


「さっきはカード、ありがとう」


「こちらこそ!」


お姉さんの顔が。


明るくなる。


「本当に、あんなにたくさん……」


その時。


家の奥。


「おねえちゃーん!」


小さな男の子。


走ってくる。


その後ろ。


もっと小さな女の子。


「おきゃくさん?」


「そうよ」


二人とも。


服は古い。


何度も。


縫い直されている。


でも。


元気そう。


「あ!」


男の子が。


私を見る。


「カードのお姉ちゃん!」


「私?」


「今日、お姉ちゃんが言ってた!」


「いっぱいお金くれた人!」


女の子も言う。


「お金のお姉ちゃん!」


「その呼び方やめて!」


オラクル。


吹き出す。


「金持ちみてえでいいじゃねえか」


「よくない!」


「俺なら喜ぶ」


「オラクルはそうでしょ!」


お姉さんも。


くすっ。


笑った。


「どうぞ。狭いですけど」


「いいの?」


「もちろん」


家へ。


入る。


◇◇◇


本当に。


小さな家だった。


机。


椅子。


古い棚。


小さな台所。


壁には。


家族の絵。


子供が描いたみたい。


四人。


お父さん。


お母さん。


お姉さん。


弟。


妹。


「……」


私は。


少しだけ。


その絵を見た。


「お父さんとお母さん?」


弟が。


頷く。


「うん!」


「お父さん、すっごく強かったんだぞ!」


妹。


「おかあさん、おりょうりじょうず!」


「……そうなんだ」


胸。


少し。


痛い。


羨ましい。


私には。


お父さんの顔も。


お母さんの顔も。


分からない。


声も。


知らない。


好きだった食べ物も。


怒った時の顔も。


何も。


「フール」


オラクル。


小さい声。


「ん?」


「突っ立ってねえで座れ」


「……うん」


気づいてた?


分からない。


でも。


聞いてこない。


それが。


少しありがたかった。


「ご飯、食べていきませんか?」


お姉さんが言う。


「え?」


「今日いただいたお金で、久しぶりにちゃんとした食材を買えたんです」


台所。


鍋。


ぐつぐつ。


いい匂い。


「肉!」


思わず。


言った。


「はい」


赤。


また。


思い出した。


――お腹いっぱい……食べるでぷ。


私は。


笑った。


「食べたい」


「俺も」


オラクル。


即答。


「オラクルは遠慮しようよ」


「何でだ!」


「いっぱい食べそうだから!」


「猫は小食だぞ!」


「絶対嘘!」


◇◇◇


「おいしい!」


肉。


野菜。


スープ。


パン。


豪華じゃない。


でも。


温かい。


「おかわり!」


オラクル。


皿。


出す。


「三杯目だよ!」


「猫は小食なんだ」


「どこが!?」


弟と妹。


笑ってる。


お姉さんも。


笑う。


「いっぱいありますから」


「ほら!」


「黄色のお金のおかげだからね!」


言ったあと。


少し。


止まった。


「黄色?」


弟が聞く。


「友達」


「どんな人?」


「ゴブリン」


「ゴブリン!?」


弟。


目が輝く。


「強い!?」


「うん」


「怖い!?」


「全然」


妹。


「かわいい?」


「……」


黄色。


思い浮かべる。


金袋。


にやにやした顔。


「たぶん」


「たぶん?」


「本人に言ったら調子に乗るから」


もう。


本人には。


言えない。


でも。


不思議。


前より。


少しだけ。


笑って話せる。


「三人いたの」


私は言う。


「赤と、緑と、黄色」


「色?」


「服の色」


「名前は?」


「赤、緑、黄色」


弟。


「そのまま!」


「私も最初そう思った!」


笑う。


私も。


笑う。


三匹との時間。


なくなってない。


ちゃんと。


私の中にある。


「フールさんは」


お姉さんが。


向かいから聞く。


「ご家族は?」


「……」


少し。


静かになる。


「おばあちゃんがいる」


「ご両親は?」


「探してる」


「え?」


「この世界にいるんだって」


お姉さんの手が。


止まる。


「だから」


私は。


胸元。


聖なるマップのある場所へ。


触れる。


「会いに来たの」


「一人で?」


「最初は」


私は。


オラクルを見る。


「今は一人じゃない」


オラクル。


肉。


食べながら。


「俺を巻き込むな」


「一緒に行くって言ったじゃん!」


「報酬次第だ」


「言ってない!」


「今決めた」


「泥棒猫!」


弟と妹。


また笑う。


お姉さんは。


私を見ていた。


優しい。


でも。


少し悲しそうな目。


「会えるといいですね」


「うん」


「きっと」


私は。


頷いた。


「会う」


絶対。


◇◇◇


食事が終わった。


本題。


「それで」


私は。


お姉さんを見る。


「聞きたいことがあるの」


「何ですか?」


「今日、市場で」


私は。


少し考える。


「黒いフードの人、見なかった?」


お姉さんの顔。


ほんの少し。


変わった。


「……黒いフード?」


「うん」


オラクル。


それを見逃さなかった。


黄色い目。


細くなる。


「知ってるな」


「オラクル」


「何ですか?」


お姉さんが聞く。


「今、一瞬だけ目ぇ逸らした」


「……」


空気。


変わる。


弟と妹。


不安そう。


私は。


オラクルの腕を引く。


「怖がらせないで」


「聞いてるだけだ」


「顔が泥棒なの!」


「生まれつきだ!」


私は。


お姉さんを見る。


「無理に話さなくてもいいよ」


「……」


「でも」


白紙のカード。


地下牢。


黒い染み。


「危ない人かもしれない」


「……」


お姉さん。


弟。


妹。


見る。


そして。


「今日だけじゃありません」


「え?」


「何日か前から」


声。


小さい。


「家の近くで、黒いフードの人を見ています」


私と。


オラクル。


顔を見合わせた。


「何日?」


「三日……くらい」


「何かされた?」


「いいえ」


「話しかけられた?」


首を振る。


「ただ」


「?」


「見ているんです」


「誰を?」


お姉さん。


自分。


指差す。


「私を」


ぞく。


嫌な感じ。


「王子様じゃなくて?」


「え?」


「あ」


しまった。


お姉さんの顔。


赤くなる。


「王子様も来ていたんですか!?」


「えっと」


オラクル。


にや。


「来てたぞ」


「オラクル!」


「フード被って物陰から――」


私。


オラクルの口。


塞ぐ。


「むぐっ!」


「何でもない!」


「……」


お姉さん。


さらに。


顔。


赤い。


「そう……ですか」


「知り合いなんだよね?」


「……少しだけ」


王子様と。


同じ答え。


「王子様、あなたのこと心配してたよ」


「え?」


「フール!」


オラクルが。


私の手を外す。


「そういうの勝手に言うな!」


「なんで?」


「こういうのは面白くなるまで黙って見るもんだ!」


「最低!」


お姉さん。


困った顔。


でも。


少しだけ。


嬉しそう。


「王子様は」


手。


膝の上。


ぎゅっと。


「優しい方です」


「じゃあ――」


「でも」


続ける。


「私には、この子たちがいます」


弟。


妹。


「王宮で暮らすような人とは、住む世界が違います」


「……」


「私は」


二人を見る。


「この子たちを置いて、どこかへ行くことはできません」


その言葉。


胸。


刺さる。


家族。


一緒。


お姉さんにとって。


一番。


大事。


「置いていけって言われたの?」


「いいえ」


「じゃあ」


私は。


首を傾げる。


「王子様に聞いた?」


「え?」


「弟と妹も一緒じゃ駄目なのって」


「……」


お姉さん。


黙る。


「聞いてない?」


「……はい」


「じゃあ分からないよ」


「でも、王族ですよ?」


「うん」


「そんな簡単に――」


「分からないことを」


私は言う。


「分かったつもりになっちゃ駄目なんだって」


おばあちゃん。


緑。


今なら。


少し分かる。


「聞いてみないと」


お姉さん。


私を見る。


長く。


「……不思議な子ですね」


「よく言われる」


「俺は馬鹿だと思ってる」


「オラクル!」


◇◇◇


「話、戻すぞ」


オラクル。


机。


指で。


とん。


「黒フードだ」


「そうだった」


危ない。


恋愛の話で。


忘れるところだった。


「最後に見たのは?」


「今日です」


「どこ?」


「市場から帰る時」


「何か持ってた?」


「……」


お姉さん。


考える。


「カード」


「!」


「白い?」


私が聞く。


「……たぶん」


「何も描いてなかった?」


「遠くて」


お姉さん。


首を振る。


「そこまでは」


「どっちへ行った?」


「西です」


オラクル。


立つ。


「西区か」


「分かるの?」


「市場の西側は倉庫と古いカード工房が多い」


「行こう!」


「待て」


「何?」


オラクル。


窓。


見る。


外。


暗い。


「子供が夜の倉庫街を走り回る時間じゃねえ」


「でも!」


「急いで罠に突っ込むな」


「……」


緑。


また。


思い出す。


焦らない。


考える。


「分かった」


私は。


座り直した。


「明るくなってから?」


「王子にも情報を回す」


「うん」


「兵士を使った方が早い」


オラクル。


こういう時。


ちゃんとしてる。


変な感じ。


「何だよ」


「何でもない」


「言え」


「ちょっと格好いいと思っただけ」


「……!」


オラクル。


止まる。


「何?」


「もう一回言え」


「やっぱりなし」


「おい!」


◇◇◇


「ありがとう」


私たちは。


家を出る。


お姉さんが。


見送る。


弟。


妹。


手。


振る。


「お金のお姉ちゃーん!」


「フールだよー!」


「猫ー!」


「俺には名前なしか!」


オラクル。


怒ってる。


私は。


笑った。


温かい家。


小さい。


でも。


あそこには。


家族がいる。


私も。


いつか。


お父さんと。


お母さんと。


あんなふうに。


同じ机で。


ご飯。


食べられるかな。


「……フール」


「何?」


「止まれ」


オラクル。


急に。


声。


低い。


私は。


足を止めた。


「どうしたの?」


返事。


なし。


オラクルの耳が。


動いている。


右。


左。


後ろ。


「……誰かいる」


「え?」


振り返る。


暗い道。


誰も。


いない。


「気のせいじゃ――」


「違う」


オラクル。


私の前へ。


出る。


その時。


胸元。


熱。


「!」


聖なるマップ。


私は。


服の中。


少しだけ開く。


【QUEST UPDATE】


『盗まれた白紙のカードを取り戻せ』


【手掛かり:2/?】


「増えた……!」


そして。


新しい表示。


【TARGET DETECTED】


「え?」


【距離――】


数字。


出ない。


文字。


乱れる。


【ERROR】


「何これ?」


オラクル。


「どうした」


「近くにいるみたい」


「何が?」


私は。


答える。


「白紙のカード」


直後。


屋根。


カッ。


小さな音。


オラクル。


見上げる。


「上だ!」


黒い影。


屋根から。


屋根。


跳ぶ。


「いた!」


フード!


「待て!」


私は。


走り出す。


「フール!」


「追う!」


「だから待てって――」


オラクルも。


追ってくる。


細い路地。


暗い。


影。


速い。


「止まれ!」


当然。


止まらない。


角。


曲がる。


「こっち!」


聖なるマップ。


点滅。


【TARGET】


【23m】


「二十三!」


「何が!?」


「距離!」


【19m】


【16m】


近い。


「オラクル!」


「ああ!」


オラクル。


壁。


蹴る。


樽。


飛び乗る。


窓枠。


屋根。


「先回りする!」


「そんなことできるの!?」


「誰だと思ってやがる!」


「泥棒!」


「正解だ!」


速い!


私は。


地上。


走る。


【11m】


【8m】


「近い!」


角。


曲がる。


行き止まり。


「……え?」


誰も。


いない。


壁。


高い。


左右。


扉。


「消えた?」


聖なるマップ。


【3m】


「三メートル?」


目の前。


壁。


「……壁の向こう?」


私は。


近づく。


古い。


カード工房。


看板。


壊れている。


扉。


閉じてる。


「ここ?」


屋根から。


オラクル。


降りる。


「見失った」


「この中かも」


「何で?」


地図。


見せる。


【1m】


「一メートル」


「……」


オラクル。


短剣。


抜く。


「下がれ」


「うん」


扉。


手。


かける。


鍵。


「閉まってる」


「任せろ」


オラクル。


細い針。


取り出す。


鍵穴。


かちゃ。


かちゃ。


カチ。


「開いた」


「……」


「何だ」


「やっぱり泥棒なんだね」


「今さら!?」


扉。


ゆっくり。


開く。


ギィィ……。


中。


真っ暗。


古い机。


壊れた棚。


大量の。


捨てられたカード。


床。


壁。


何百枚。


「……」


誰も。


いない。


【TARGET】


【0m】


「ゼロ?」


「目の前ってことか?」


「でも」


ない。


白紙のカード。


どこにも。


「地図、壊れた?」


「んなわけ――」


その時。


聖なるマップ。


表示。


変わる。


【TARGET LOST】


「……消えた」


「何?」


【追跡不能】


【原因:???】


「また?」


そして。


一瞬。


別の文字。


【手掛かり:3/?】


その直後。


奥。


カタン。


「!」


私たち。


同時に。


振り返る。


壊れた机。


その上。


一枚。


カード。


「……」


白。


真っ白。


「フール」


「うん」


近づく。


でも。


触らない。


緑。


教えてくれた。


分からないものには。


むやみに触らない。


「これ」


白紙のカード?


王宮から。


盗まれたもの?


分からない。


オラクルが。


目を細める。


「裏返すぞ」


「気をつけて」


短剣の先。


カード。


そっと。


ひっくり返す。


裏。


文字。


一つだけ。


書いてある。


【西】


「……西?」


私が読む。


その瞬間。


カード。


ボッ。


「うわっ!」


黒い炎。


一瞬で。


燃える。


「下がれ!」


オラクル。


私を引く。


カード。


灰。


床へ。


落ちる。


「……」


残ったのは。


黒い灰。


だけ。


「何だったの?」


「知らねえ」


「西って」


オラクル。


工房の奥。


見る。


「方角か」


「それとも場所?」


「分からん」


「……」


分からない。


だから。


調べる。


その時。


外。


兵士の声。


「いたぞ!」


「西区だ!」


「フードの人物を発見!」


私と。


オラクル。


顔。


上げる。


「外!」


走る。


工房。


飛び出す。


遠く。


大通り。


黒いフード。


走っている。


兵士。


追う。


そして。


その先。


馬から飛び降りる。


王子様。


「止まれ!」


剣。


抜く。


フードの人物。


一瞬。


振り返る。


手。


白い何か。


握っている。


「カード!」


私が叫ぶ。


王子様。


追う。


オラクル。


笑う。


「ようやく尻尾出しやがった!」


聖なるマップ。


強く。


光る。


【QUEST UPDATE】


『盗まれた白紙のカードを取り戻せ』


【TARGET LOCK】


【逃走中】


「行くよ!」


「おう!」


私たちは。


王子様たちを追って。


夜のアデューを。


走り出した。

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