↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『フールの大冒険 ~聖なるマップを手に、異世界でまだ見ぬ両親を探します~』  作者: ☆☆アダム☆☆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/14

第10話 盗まれた白紙のカード


「さて」


王子様が私を見る。


「君には色々と聞かなければならないようだ」


「……はい」


逃げ道。


扉。


王子様。


呼び鈴。


無理。


完全に。


捕まった。


「まず」


王子様が腕を組む。


「どうやって王宮へ入った?」


「……普通に」


「入れるはずがない」


「ですよね」


「正直に答えなさい」


「……」


私は。


そっと視線を逸らした。


床。


天井。


窓。


「透明になりました」


「……何?」


「カードで」


王子様が。


黙った。


「アデューの市場で買った、透明になれるカードを使って……」


「……」


「ごめんなさい」


私は。


頭を下げた。


しばらく。


何も聞こえない。


怒られる。


絶対。


怒られる。


「……ふっ」


「え?」


王子様が。


笑った。


「ははっ」


「なんで笑うの?」


「いや」


口元を押さえている。


「王宮へ忍び込んだ者が、ここまで素直に侵入方法を白状したのは初めてだ」


「嘘ついても仕方ないし……」


「変わった子だな」


少し。


空気が柔らかくなった。


でも。


まだ終わってない。


「それで?」


王子様が聞く。


「友達を助けに来たと言ったね」


「はい!」


私は。


一歩前へ出る。


「オラクルっていう猫なんです!」


「猫?」


「二本足で歩く灰色の猫で」


「獣人か」


「泥棒です!」


「……」


「でも悪い人じゃなくて!」


「今、自分で泥棒と言わなかったか?」


「泥棒だけど悪い人じゃないの!」


「難しいな」


「王宮の門で捕まっちゃって」


王子様の眉が。


ぴくり。


「何をした?」


「……」


言いたくない。


「何をした?」


「守衛さんに……」


「うん」


「銀Bを……」


「……」


「渡そうと……」


王子様。


目を閉じる。


「賄賂か」


「本人は心付けって言ってました」


「同じだ」


やっぱり。


「それは」


王子様が言う。


「自業自得では?」


「私もそう思います!」


「思うのか」


「でも!」


私は。


頭を下げた。


「助けたいんです」


「……」


「この世界で、一緒に旅してくれるって言ってくれたから」


王子様は。


しばらく私を見ていた。


やがて。


「顔を上げなさい」


「はい」


「すぐに解放するとは約束できない」


「……」


「だが事情は調べよう」


「本当!?」


「ああ」


「ありがとう!」


思わず。


笑った。


よかった。


まだ助かったわけじゃないけど。


少なくとも。


話は聞いてもらえた。


「それから」


王子様が続ける。


「今度は私の質問に答えてもらいたい」


「何?」


「市場で」


表情が変わる。


「あの女性と何を話した?」


やっぱり。


そこ。


気になってたんだ。


「弟と妹がいるって」


「……」


「両親が亡くなって、家にある物を売って育ててるって言ってた」


王子様の顔が。


少し曇った。


「そうか」


「王子様」


「何だ?」


「知り合いなの?」


「……」


少し。


間。


「一方的にな」


「一方的?」


王子様が。


窓の外を見る。


市場の方角。


「何度か見かけたことがある」


「話したことは?」


「少しだけ」


「じゃあ知り合いじゃん」


「そう簡単な話でもない」


よく分からない。


でも。


嫌な人ではなさそう。


少なくとも。


お姉さんを見ていた時の目。


怖い感じは。


しなかった。


「それで」


王子様が。


私の手元を見る。


「君は彼女のカードを買ったのか?」


「うん」


私は。


【保存のカード】を見せる。


「三銀Bって言われたけど、六銀B払った」


「倍?」


「弟と妹に、おいしいもの食べさせてほしかったから」


「……」


王子様は。


少し驚いた顔をした。


「なぜそこまで?」


「友達に教えてもらったの」


「友達?」


「ちゃんと食べるのは大事だって」


赤。


思い出す。


胸が。


少し痛い。


でも。


今度は。


ちゃんと言えた。


「もう会えない友達だけど」


「……そうか」


王子様は。


それ以上。


聞かなかった。


◇◇◇


「じゃあ次は」


今度は私の番。


「王子様に聞いていい?」


「内容による」


私は。


机を指差した。


「そのカード」


王子様の顔から。


笑みが消えた。


真っ白なカード。


何も。


描かれていない。


「これは?」


「……」


「市場でも見た気がするの」


王子様が。


私を見る。


「市場で?」


「王子様の近く」


「私の?」


「一瞬だけ」


王子様は。


白紙のカードへ視線を落とした。


そして。


ゆっくり。


手に取る。


「これは」


少し。


声が低くなった。


「王家が管理していたカードだ」


「何のカード?」


「分からない」


「王子様も?」


「ああ」


白紙。


表。


裏。


何もない。


「名前もない」


「効果も?」


「不明だ」


「じゃあ何で王家が持ってるの?」


「それが問題なんだ」


王子様は。


白紙のカードを。


机へ戻した。


「これは一枚ではない」


「え?」


「同じものが、もう一枚あった」


「……あった?」


嫌な言い方。


「盗まれた」


「!」


「数日前にな」


王子様の青い瞳が。


鋭くなる。


「王宮の保管庫から、一枚だけ消えた」


「誰が?」


「分からない」


「どうやって?」


「それもだ」


王宮。


あんなに。


警備が厳しいのに。


「泥棒?」


「可能性はある」


「オラクルじゃないよ!」


「まだ何も言っていない」


「泥棒って聞いたから!」


「数日前だ。君の友人がいつアデューへ来たかは知らないが」


「最近!」


「なら違うだろう」


よかった。


……いや。


よくない。


「盗んだ人は?」


「現在も捜索中だ」


「手掛かりは?」


王子様が。


少し考える。


「一つだけ」


「何?」


「白いカードを持ったフード姿の人物が、王宮付近で目撃されている」


「……!」


フード。


市場。


あの時。


私が見た。


白いもの。


「私」


声が出た。


「見たかもしれない」


王子様が。


勢いよく私を見る。


「どこで!?」


「市場」


「いつだ?」


「今日」


「特徴は?」


「黒っぽいフードで、顔は見えなかった」


「他には?」


「お姉さんを見てた王子様を見たあと……」


「言い方」


「その人がいた場所に、白いカードみたいなのが見えた」


王子様が。


黙る。


「ただ」


私は続けた。


「ちゃんと見たわけじゃない」


「……」


「見間違いかもしれない」


おばあちゃんとの約束。


分からないことを。


分かったつもりにならない。


だから。


見た。


とは言わない。


「そうか」


王子様が。


頷いた。


「それでも重要な情報だ」


「……」


その時。


胸元。


また。


熱い。


「……!」


聖なるマップ。


さっきより。


強い。


「どうした?」


「ちょっと待って」


私は。


迷った。


見せる?


駄目。


オラクルも。


人前で出すなって言ってた。


でも。


地図が。


何かに反応してる。


私は。


机の白紙のカードを見る。


そして。


服の中で。


聖なるマップへ触れる。


その瞬間。


頭の中に。


文字が。


浮かんだ。


【SIDE QUEST】


「……え?」


「何だ?」


私は。


周囲を見る。


何もない。


でも。


確かに。


見えた。


もう一度。


地図を。


服の陰で。


ほんの少しだけ開く。


淡い光。


文字。


【SIDE QUEST】


『盗まれた白紙のカードを取り戻せ』


「……!」


さらに。


その下。


【QUEST REWARD】


『???』


「報酬……分からない?」


そして。


もう一つ。


【真実のカード】


☆3。


光っている。


二つの表示。


白紙のカード。


真実のカード。


線。


細い。


光の線が。


一瞬だけ。


二つを結んだ。


「……つながってる?」


その瞬間。


文字。


【SPECIAL QUEST】


『真実を手にせよ』


私は。


息を呑んだ。


消える。


地図。


元通り。


王子様が。


怪訝そうに私を見る。


「何を見ている?」


「……」


どうしよう。


全部は。


言えない。


でも。


「王子様」


「何だ?」


「盗まれたカード」


「……」


「私にも探させて」


「何?」


「お願い」


「危険だ」


「でも」


私は。


真っ直ぐ見る。


「私も探してる物があるの」


「何を?」


「真実のカード」


王子様の。


目が変わった。


「……」


静か。


「今」


王子様が。


ゆっくり言った。


「何と言った?」


「真実のカード」


「なぜ」


王子様の声から。


完全に。


柔らかさが消える。


「君がその名前を知っている?」


「……」


まずい。


でも。


もう言った。


「探してるから」


「誰に聞いた?」


「それは……」


「市場で流通するようなカードではない」


「……」


「存在そのものを知る者も少ない」


王子様が。


一歩。


こちらへ。


「君は何者だ?」


怖い。


でも。


逃げない。


「フール」


「名前を聞いているんじゃない」


「私は」


言う。


「お父さんとお母さんを探してるだけ」


「……」


「そのために」


胸元。


聖なるマップを。


服の上から握る。


「真実が必要なの」


王子様は。


私を見ている。


長い。


沈黙。


そして。


「……分かった」


「え?」


「一つ、取引をしよう」


「取引?」


王子様が。


机。


白紙のカードへ手を置く。


「盗まれたカードを取り戻す」


「うん」


「そして」


私を見る。


「なぜ君が真実のカードを探しているのか。それを私が納得できる形で示す」


「……」


「それができたなら」


一拍。


「真実のカードのある場所へ、君を案内する」


「!」


やった。


言いかけた。


でも。


止まる。


まだ。


手に入るとは。


言ってない。


「見るだけ?」


「そこから先は」


王子様が言う。


「君次第だ」


その言葉。


少し。


気になった。


「どういう意味?」


「真実というものは」


王子様が。


白紙のカードを見つめる。


「知れば幸せになれるとは限らない」


「……!」


おばあちゃん。


なぜか。


思い出した。


見たものだけが。


全部とは限らない。


分かったつもりに。


ならない。


「それでも」


王子様が聞く。


「探すか?」


私は。


頷いた。


「探す」


「なぜ?」


「お父さんとお母さんに会いたいから」


迷わない。


「何が分かっても?」


「……」


そこだけ。


少し。


怖かった。


でも。


「分からないまま諦めるよりいい」


王子様が。


ほんの少し。


笑った。


「そうか」


◇◇◇


その頃。


王宮。


地下牢。


「……」


鉄格子。


石の床。


小さな窓。


その中。


オラクルは。


座っていた。


「ったく」


尻尾。


ぱたん。


「遅えな」


向かいの牢。


大男が聞く。


「誰か待ってんのか?」


「ああ」


「仲間か?」


「まあな」


「助けに来ると思うか?」


オラクルは。


少し考える。


「来る」


「ずいぶん信用してんだな」


「信用?」


オラクルが。


笑う。


「違えよ」


「じゃあ何だ」


「あいつは」


灰色の耳が。


ぴくり。


「そういう馬鹿なんだ」


その時。


牢の外。


足音。


カツ。


カツ。


カツ。


オラクルが。


顔を上げる。


「……?」


兵士じゃない。


足音が。


軽い。


そして。


鉄格子の前。


黒いフード。


誰かが。


立った。


「誰だ?」


返事。


なし。


「おい」


フードの人物。


懐へ。


手を入れる。


取り出したもの。


一枚。


カード。


真っ白。


何も描かれていない。


オラクルの。


黄色い瞳が。


細くなる。


「……何だ、そりゃ」


フードの人物が。


カードを。


鉄格子へ向けた。


一瞬。


白いカード。


中央。


黒い染み。


広がる。


オラクルの表情が。


変わった。


「おい」


カード。


光る。


「待て」


黒。


白を。


飲み込んでいく。


「何する気だ!」


次の瞬間。


地下牢の灯りが。


すべて。


消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。