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聖女を処刑した王太子へ。悪役令嬢の私は復讐を遂げます。  作者: 紗月


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4/5

懐想

 「聖女様に何をしている!」

 

 側近の一人がフェルディナンドの持つ剣を叩き落とす。


 「いかに王太子であろうと聖女を手にかけるとは言語道断。その罪はつぐなってもらうぞ」


 その声は側近に忍び込ませたブッフバルトだった。

 彼が予定通り、王太子の罪を断罪してれるだろう。

 極め付きの罪は聖女の殺害だ。


 悲しそうに私を見つめるブッフバルトの瞳が薄れゆく意識の中で最後に見た光景だった。





 五年前、私はフェルディナンドの粛清の網から逃れ、ある男爵領に匿われていた。

 いつか復讐することだけを胸にひっそりと暮らしていたが、ある日、私に聖女の資質が現れた。

 

 名前をリリアーナと偽って教会で鑑定を受けたところ、間違いなく聖女だと認定された。


 その時、悪魔的な復讐方法が私の頭を支配したのだ。

  

 最初の逃亡からずっといっしょにいてくれた騎士のブッフバルトと侍女のマリアにその考えを話した。


 「私は反対です」

 

 二人、そろって反対された。


 「なぜ?これしか確実な方法はないと思うけど」


 「そもそも、何故、復讐する必要があるのです?今のまま、ひっそりと暮らしていくのでは満足できませんか?

 男爵家に養女にしてもらい。どこかの貴族に嫁ぐという方法だってありますよ?」


 マリアの言葉に、きっと私は悲しい目をしていたと思う。


 「それは無理よ。だって、私はレオン様が…」


 私は第二王子のことが未だに忘れられずにいた。

 幼い頃に抱いた恋心だったが、今は思い出補正もあるのか、日に日に増すばかりで衰えることを知らない。


 「彼は未だに行方知れずです。きっともう王太子に亡き者にされています…。お嬢様は取るに足らない相手なので見逃すことはあるでしょうが、第二王子を見逃すはずなんてありません」


 私は苦笑した。

 それはわかっている。

 そんな希望はとうに捨てた。

 あの優しかったレオン様はもうこの世には存在していない。

 でも、実感がないのだ。

 いつか、また会えるような気がしてしまっている。


 そんな日はこないというのに…。


 「それに聖女だと認定されてしまったもの。またどこかに逃げて、今まで以上にひっそりと暮らすか…でも、見つかってしまえば、きっと政治の道具に利用されるだけ。それなら、逆に聖女であることを利用すれば、今の私でもきっとお父様達の仇は取れると思うのよ」


 「王太子は今はクラウディア嬢と婚約してるんですよ?そう、うまくいきますかね?」


 からかうようにブッフバルトは言った。

 彼はいつも、こんな調子だ。私をいつまでも子供だと思っている。


 「大丈夫よ。私は魅力的だもの。ブッフバルト。あなたも私のことが好きでしょ?」


 私がいたずらっぽく笑うと、彼は顔を赤らめた。


 「ふふ、冗談よ。ほんとにブッフバルトはこの手の話には弱いわね」


 「お嬢様、あまり彼をいじめないでください」


 「はいはい、あなたたちはお似合いよ」


 私は二人がこっそり付き合っていることは知っていた。

 五年前にはすでに、そういう関係だったのかはわからないが…。

 でも、うらやましい。


 「私の魅力の話は半分冗談だとしても、きっと彼は聖女を手に入れようとするはず。この国の聖女伝説を信じている人は多いもの」


 「その可能性は、今も生き延びて、国の中枢にいる旦那様の手のもの情報を信じるなら…ですよね?」


 「私は信じているわ。あの王太子のバカさ加減も信じています」


 後半、言いながら私は吹き出してしまった。

 聞いていた二人は呆れている。


 「でも、クラウディア嬢はバカではありませんよ?」


 「そうね、だからこそ、彼から引き離す必要があるわ。彼女との婚約を破棄させ投獄させる」


 ブッフバルトの言葉に私が答える。


 「その後、彼女が本物の聖女で、私は偽物。まんまと騙された、バーカ、バーカ、とでも言えば逆上して襲い掛かってくると思うわ」


 「そんな単純ですかね?それに、いかにその時に俺が近くにいたとしてもお嬢様を守り切れる保証はありません」


 「ええ、覚悟してるわ。私に何かあった時には、あなたが王太子を断罪してちょうだい」


 その言葉を聞いて二人は黙り込んでしまった。

 

 「そこまでして復讐する必要がありますか?それに聖女が死んでしまったら、この国はどうなるんですか?未曾有の災いが襲ってくるっていう話ですよ?」


 マリアが泣いて訴えてくる。

 

 「だって仕方ないじゃない。もう私にはそれしか残ってないもの。それに聖女が死んでも、きっと、またどこかに聖女は現れるわ。聖女の力が生まれつきでないことがその証拠よ」


 「全然、根拠がない証拠じゃないですか!」


 「今まで、この国に大きな災いが起きてないってことは、聖女の力は途切れてないってこと。血筋でもないのだから…そうね、きっと、この間、何かの事情で世に出てなかった聖女が亡くなったのよ。そして、私に聖女の力が現れたんだと思う。わかるのよ、なんとなく」


 「それも聖女の力ですか?」


 怪訝そうな顔をするブッフバルトの言葉に私は頷いた。


 「だから心配しないで、私のやりたいようにやらせて」

 

 説得することをあきらめたのか、それ以上、二人は何も言ってこなかった。

 私は五年間、ずっと復讐することだけを考えて生きてきたのだから。


 「あと…ブッフバルト。後に聖女が現れても、マリアとの婚約は破棄してはダメよ?」


 「な!?」


 「まだ、婚約してません!」


 マリアが真っ赤になって叫んだ。


 

 


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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