救い
私は真っ暗な暗闇の中にいた。
「リディア…」
誰かが私を呼ぶ声がした。
周りを見渡すとぼんやりとした明かりが見え、そこに初老の男女が立っていた。
見覚えがある。懐かしい。そして何より会いたかった顔。
「お父様!お母さま!」
二人の胸に飛び込んだ。
私は彼らに謝らなければならない。
五年間、ずっと後悔していたことだ。
「ごめんなさい!私がレオン様と婚約したいと我儘を言ったばかりに二人を酷い目に会わせてしまった」
その言葉を聞いて、父はやさしい笑みを浮かべた。
「何を言う。謝るのはこちらのほうだ。お前とレオン殿下がお互いに好意を持っていたのはわかっていたよ。それでも親の勝手な意見で婚約を認めなかった。お前にはひどいことをしてしまったと思っているよ」
「そうよ。そんなことより…いえ、これは言っても仕方ないわね…」
母は困ったような顔をしていた。
言いたいことはわかっている。
復讐など考えずに、長く生きてほしかった、そんなところだろう。
でも、私にはそれしかなかった。
それしか考えられなかった。
どうやったら、あの日のことを償えるだろう。
私の我儘をどうやったら、なかったことにできるのだろう…。
もう取り返しがつかないことはわかっているのに…。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
涙が溢れてきて、それだけしか言えなかった。
でも、この言葉を言うために私は五年間を過ごしてきた。
「仕方のない娘だね…」
そう言って、母は優しく微笑んでくれた。
両親の笑顔が私にとっての救い。
「それじゃあ、いこうか。レオン様も待っていてくれているよ」
父の言葉を聞いて、うれしいような、悲しいような複雑な気持ちになった。
いや、でもうれしい気持ちのほうが勝っているかもしれない。
私は胸が高鳴っていくのを感じた。
でも、この気持ちを、もう両親は許してくれているような気がした。
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