第100話 蒼火拡張
色々と苦労している容子です。
セーブとロードは神の恩寵やと思う。
やり直しが利く世界なら、どれだけ楽か。
けれど現実は一発勝負。
だからこそ、動く。
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スラム街で炊き出しを続けながら、怪我人と病人を治療していると、拝まれた。
両手を合わせ、涙目で。
「やめてやめて。拝むなら太陽の女神天照大神でも拝んで」
そう言えば、本当に太陽を拝み出した。
……素直すぎへん?
炊き出しの横では治療班が並行稼働。
治った者が次の患者を連れてくる。
即席の救護所や。
生活魔法が使える者には湯を出させ、アイテムボックスから清潔な布を出す。
軽症は洗浄と薬。
重症はポーションとヒール。
サクラのヒールが冴え渡る。
即席ながら、機能している。
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「教会は頼りにならんのか?」
手伝いのおっさんに聞くと、鼻で笑われた。
「スラムの民に慈悲を与える資格はないってよ」
……馬鹿か。
その瞬間、私は理解した。
ここはこの国最大級のスラム。
これを放置している時点で、国は傾きかけている。
そして教会は腐っている。
あの出来損ない僧侶が生まれる土壌が、よく分かった。
これは宥子に報告せなあかん。
経済だけやない。
政治と宗教も絡む。
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「嬢ちゃん、終わりましたぜ!」
「お疲れさん。これ飲んで休憩し」
蜂蜜入りの温かい牛乳。
「ウメー!」
笑顔。
「手ぇ空いてたら私の家来いや。仕事斡旋したる。肉体労働やけどな」
三食付き。
住み込み可。
安い。
でも今は安定が大事。
不満が爆発する前に、ガス抜き。
媚びではない。
予防や。
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そこへ現れたのが、あの少年。
「病人と怪我人がいる。来られるか?」
「ええで」
即答。
胡散臭い目。
気にせん。
私はキャロルに現場を任せ、イスハパンを残し、布と薬を持って移動。
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道中。
「あんた、お嬢様じゃねぇだろ」
「失礼やな!貴族の令嬢かもしれへんやろ!」
「絶対ない。品がない」
ムカつく。
けど事実は置いとく。
「労働力確保や。姉が会社立ち上げたしな」
少年は黙る。
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廃教会。
入った瞬間、子ども達に襲われた。
甘い。
手加減して制圧。
「善人やと思った?」
ニッコリ。
少年が降参。
「俺の命をやる。他は許してくれ」
「病人どこ?」
ポカーン。
私は本気で治療開始。
温湯で拭き、ヒール、薬。
元気な子には生活魔法の確認。
少年が使える。
指示を出す。
回る。
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一段落後。
「危ないと分かって来た理由は?」
「一つ、慈善。二つ、勝てる自信。三つ、労働力と情報」
直球。
「君はまとめ役やな?」
「そうだ」
「丸ごと面倒見る。衣食住保証。情報と人脈貸して」
疑心暗鬼。
「書面契約も可能やで」
ぽかん顔。
可愛い。
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結果。
子ども二十一名。
姉に内緒で館購入。
曰く付き格安物件。
掃除。
寝床確保。
風呂。
飯。
教育計画。
スキル精査。
青田買い成功。
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だが、問題は別方向から芽吹く。
数日後。
スラムで囁きが広がった。
「太陽の巫女が現れた」
「触れれば治る」
「食を与える慈母」
やめろ。
私は念話で叫ぶ。
『姉、変な噂立ってる』
『内容は?』
『太陽の使徒』
沈黙。
『……火種やな』
宥子の声は冷静。
『放置は危険。利用も危険』
そう。
信仰は力になる。
だが暴走すれば刃。
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館に集めた子ども達が、私を見上げる。
「姉ちゃん、神様なん?」
「違うわ」
即答。
「働かせる鬼や」
笑いが起きる。
安心した顔。
これでええ。
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だが外では違う。
教会が動き始めた。
炊き出し。
治療。
無償奉仕。
そして“太陽”。
自分達の権威を脅かす存在。
潰すか、取り込むか。
選択は近い。
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私は夜空を見る。
太陽は沈んでいる。
神でも巫女でもない。
ただの現実主義者や。
けれど火は広がる。
炊き出しから始まった炎が。
労働力確保のつもりが。
いつの間にか思想に触れている。
「……面倒やな」
でも止めへん。
子ども二十一名。
未来二十一通り。
私は館の灯りを見上げる。
蒼い火は、まだ小さい。
けれど確実に燃え始めている。
炊き出しは慈善。
だがその余波は、宗教と政治を揺らす種になる。
その事実を、私はまだ軽く見ていたのかもしれない。




