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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第93話 面接狂騒曲


 ――此方、容子(まさこ)です。


 異世界?

 今日はちゃう。


 完全に地球編。

 しかも――採用面接地獄。


 改装中の自社ビル。

 一階は店舗予定、二階は事務所、三階は倉庫、四階以上は独身社員寮、最上階が私達の住居。


 まだ内装工事の途中やのに、求人広告を出した結果がこれや。


「姉ちゃん、電話止まらへんけど!?」

「想定内」


 想定内ちゃうやろ。


 姉――宥子(ひろこ)は冷静や。

 商業ギルドとの商談もこなし、建築会社との打ち合わせも進めながら、採用計画を緻密に組み立てている。


 私はというと。


「副社長やで、私」

「肩書きだけな」


 ひどない?


 それでも今回は正式に面接官や。

 アパレル&アクセサリー部門の責任者候補として。


 地球でのビジネスや。

 異世界の魔力も鑑定も使わへん。完全実力勝負。



一日目

 朝九時。

 仮設の受付テーブル。

 リビングを即席面接室に改装。


 応募者、続々到着。


「本日はよろしくお願いします!」


 元気いっぱい。

 緊張で声裏返ってる子もいる。


 私は履歴書を確認しながら、表情・目線・所作を見る。


 縫製歴五年。

 接客三年。

 EC運営経験あり。


 スキルは悪くない。


「うち、立ち上げ段階やから、最初は泥臭いで?」

「覚悟はあります!」


 目が本気。

 キープ。


 姉は淡々と質問を重ねる。


「数字目標に対して、どう動きますか?」

「チーム内の衝突が起きた場合は?」


 圧がすごい。

 完全に経営者の顔。



二日目

 疲労。


 応募者は増える一方。

 SNSで拡散されたらしい。


「やっぱり御社、急成長企業ですよね?」

「将来性を感じて」


 そう言われると悪い気はせえへん。


 でもな。


 夢見がちタイプも多い。


「インフルエンサーになりたいんです!」

「ブランドの顔になりたくて!」


 うちは芸能事務所ちゃう。


「まず裏方からやけど?」

「え……?」


 終了。



三日目

 完全に戦場。


 私の頭はオーバーヒート寸前。


「姉ちゃん、経営ってこんな大変なん?」

「まだ序の口」


 怖。


 それでも、光る人材は確実におる。


 縫製特化型。

 数字に強い管理型。

 SNS戦略に長けた企画型。


 姉が低く呟く。


「この子は本社固定やな」

「この人は将来千葉工場行きやな」


 既に配置計画まで組んでる。


 完成までは在宅歩合制。

 工場完成後は住み込み可。引っ越し代会社持ち。


 条件は破格。



休憩時間

 ソファに沈み込む私。


「もう無理……」

「副社長(笑)」


 やめろその笑い。


 アンナが紅茶を置く。


「ですが順調ですよ。想定より優秀な方が多いです」

「せやけど、疲れるわ……」


 私は天井を見上げる。


 異世界で魔物倒してた方が楽やった気がする。

 あっちは殴れば終わる。

 こっちは人の人生背負う。



最終日夕方

 最後の応募者が帰る。


 静寂。


 やっと終わった。


「どうやった?」

「七割は当たり」


 姉が即答。


 さすが。


「会社、ちゃんと形になりそうやな」

「形にするんや」


 迷いの無い声。


 私はふと笑う。


「姉ちゃんさ、昔より丸くなった?」

「どこが?」


 目、怖いです。



 夜。


 窓の外は大阪の街明かり。


 ここは地球。

 魔法も魔物も関係ない世界。


 でも――戦いはある。


 会社という名の戦場。


「副社長として、ちゃんと働くわ」

「最初からそうして」


 軽口を叩き合いながら、私達は採用リストを最終確認する。


 今日決めた人材が、未来の柱になる。


 異世界で鍛えた度胸も、ここで使う日が来るとは思わんかった。


 でも悪くない。


 地球でも、私達は戦える。


 面接という名の戦場で。


 ――そして明日からは、教育という次の地獄が待っている。

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