表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/120

第85話 北谷大乱戦

 幽霊屋敷の除霊(笑)を終えてからというもの、私は完全に“便利屋二号”と化していた。


 


容子(まさこ)、この見積もりまとめといて」


容子(まさこ)、アンナにこれ持って行って」


容子(まさこ)、温泉の成分表を分かりやすくグラフ化しといてや」


 


 ――私は秘書ではない。


 


 声の主はもちろん姉、宥子(ひろこ)である。温泉付き廃病院という爆弾物件を手に入れて以来、彼女は完全に経営者モードへ突入していた。建築会社、資材業者、内装デザイナー、さらには温泉設備専門業者まで巻き込み、連日商談ラッシュ。


 


 その背後で私は書類と荷物に埋もれている。


 


「……そろそろプッツンいくで?」


 


 頭の上でコロコロしている楽白らくはくちゃんを撫でながら、私は静かに決意した。


 


「おっさんズ、逃げるで」


 


 ジョンとイスパハンが顔を上げ、ボブがびくっと震える。


 


「え、逃亡っすか?」


 


「せや。パワーレベリングや」


 


 アディオス姉。


 


 


 ◇◇◇


 


 目的は明確。


 


 おっさんズの強化。


 


 特にボブ。


 


 あの戦闘恐怖症を何とかせねばならん。レベルは上がっても、メンタルが据わらなければ前衛は任せられない。


 


「冒険者ギルド行くで!」


 


 掲示板を眺める。


 


「北の谷でベビードラゴン十体討伐……まぁ妥当やな」


 


 私単独なら散歩レベル。おっさんパーティなら少し歯応えがある。


 


 だが真の狙いは別。


 


 繁殖期に入り凶暴化したコモドドラゴン討伐依頼。


 


 毒持ち地竜種。報酬高額。


 


 私はそれもこっそり受注した。


 


「ギルドには“たまたま遭遇して倒しました〜”で報告や」


 


 完璧な作戦である。


 


 


「今日は金と経験値荒稼ぎやで!」


 


 気合十分。


 


 


 ◇◇◇


 


 バイク四台で北へ向かう。


 


 道中モンスターは容赦なく轢殺。


 


「ボブ、運転は上手なったな」


 


「そ、そりゃもう!」


 


 だが戦闘になると腰が引ける。


 


 謎である。


 


 


 ◇◇◇


 


 北の谷。


 


 岩だらけの荒野。


 


 ベビードラゴンが群れで現れる。


 


 ジョンとイスパハンは慣れた手つきで斬り伏せる。


 


 ボブだけが叫ぶ。


 


「怖いんすよぉおおお!」


 


「うるさい戦え!!」


 


 私は怒鳴りつつ肉球の斧で真っ二つ。


 


「死ぬ前に復活させたる言うてるやろ!」


 


「死にたくないでずぅうう!」


 


 泣きながらも倒すボブ。


 


 私は腕を組む。


 


「次、一人でやれ」


 


「えぇぇぇ!?」


 


 ジョンとイスパハンを下がらせ、ボブ単独戦闘。


 


 震えながらも撃破。


 


 恐怖と成功体験を繰り返させる教育法である。


 


 


 ◇◇◇


 


 地面が揺れた。


 


 巨大な影。


 


「来たな……私の獲物♡」


 


 コモドドラゴン。


 


 圧倒的な巨体。


 


「ボブ下がれ!」


 


 粘土爆弾炸裂。


 火炎瓶連投。


 


 爆炎の中から咆哮。


 


楽白らくはくちゃん、行くで!」


 


「キャッシャー!」


 


 高速移動で足を粘着固定。尻尾も地面へ縫い止め。


 


「退避!」


 


 フードへ戻る楽白らくはくちゃん。


 


 私はM85連射。


 


 一発が目を貫く。


 


 絶叫。


 


「これを顔面にぶつけろ!」


 


 痺れ薬(狂)+目潰し薬(極)。


 


 直撃。


 


 巨体が崩れ落ちる。


 


 


「今や! 止め刺せ!」


 


 ボブが震えながら斧を振り下ろす。


 


 三十分。


 


 ようやく絶命。


 


 その間、ジョンとイスパハンは羽を丁寧に切り落としていた。


 


「お前ら逞しすぎやろ」


 


 


 ◇◇◇


 


 戦利品確認。


 


 鱗×1251

 尾×1

 羽×2

 胃袋×1

 魔石大(黄)×1

 心臓×1


 


 さらに金貨山盛り。


 


「ヒャッハー!」


 


 全員のレベルが跳ね上がる。


 


 特にボブ。


 


 顔は死んでるが、数値は伸びた。


 


「帰ったら大吟醸や!」


 


「帰りも戦闘っすか……」


 


 当然である。


 


 


 ◇◇◇


 


 帰路。


 


 今度はボブ、自分から前に出た。


 


 震えているが、逃げない。


 


 確実に前進している。


 


 


 街が見えた頃、私は嫌な予感がした。


 


 ギルドで報告。


 


「コモドドラゴン? 遭遇戦で倒しました」


 


 受付嬢、絶句。


 


 追加報酬。


 


 


 外へ出た瞬間。


 


 


「へぇ……楽しそうやな?」


 


 


 腕組みした宥子(ひろこ)が立っていた。


 


 


「素材は半分やで?」


 


 


 満面の笑み。


 


 


 私は天を仰いだ。


 


 


 パワーレベリング成功。


 素材大量。


 おっさんズ成長。


 


 


 だが。


 


 


 一番強いボスは、街中にいる。


 


 


「逃げるか?」


 


 


 ボブの小声。


 


 


 全員一致で首を振った。


 


 


 あれから逃げ切れた者は、いない。


 


 


 ――そして私は悟る。


 


 


 北の谷よりも危険な戦場は、常に身近に存在するのだと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ