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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第80話 初買物祭

 姉――宥子(ひろこ)とアンナが別行動。


 


 つまり今この場の引率責任者は、妹の私――容子(まさこ)や。


 


 


 総勢十数名。


 元奴隷ズ+チビ達+おっさんズ。


 


 そして舞台は――地球のショッピングモール。


 


 


「へい! YOU来たぜショッピングモール!」


 


 自動ドアが開いた瞬間、サイエス組が一斉に固まった。


 


 吹き抜け三階建て。


 光沢のある床。


 エスカレーターが静かに動き続け、天井からは巨大なシャンデリア。


 


 


「……城、ですか?」


 


 レナがぽつり。


 


「違うで。買い物するとこや」


 


 


 チルドルは口を半開きにして上を見上げている。


 


 イスハパンは柱を触り、


 


「石ではない……この強度でこの軽さ……」


 


 と、ブツブツ研究モード。


 


 


 アンナなら平然としていたやろうな。


 あれはオリハルコン心臓持ちや。


 


 


「良えか! 今日は私服と寝間着を揃える! 戦闘着しか無いとか論外や!」


 


 


 全員がこくこく頷く。


 


 しかも今日は全員にアイテムボックス付きウェストポーチ支給済み。


 購入品はトイレで収納。


 万引きちゃうで、隠蔽や。


 


 


「気にせんで良えで。あんたらは琴陵(ことおか)家……ちゃう、家族や。遠慮は無しや」


 


 


 マリーが遠慮がちに言う。


 


「ですが……高価な物を……」


 


 


「家族になるのにケチケチしてどうすんの。心が萎縮したままの方が損や」


 


 


 少しだけ、空気が緩む。


 


 


「ほな二人一組! 手ぇ繋いで私の後ろ!」


 


 


 わらわらと組が出来る。


 余った者同士も強制ペア。


 


 


 ◇◇◇


 


 まずは携帯D社。


 


「新規十三名お願いします」


 


 店員さんの笑顔が一瞬固まる。


 


 


 機種選び。


 


 ボブ達おっさんズは新型iPhoneで揃えるらしい。


 


「これなら……武器にもなりそうだ」


 


「ならへんわ」


 


 


 ヘレンは落ち着いた黒。


 レナは淡い水色。


 チルドルは赤。


 


 


「良えか、一生使う気で選べ! 後から変更無し!」


 


 


 数名が慌てて選び直す。


 


 


 開通待ち一時間。


 


 イスハパンは店員に半導体の構造を聞き始めている。


 


 止めへん。


 店員さん頑張れ。


 


 


 契約完了。


 


「トイレ集合、長針が3な! 遅刻したら置いてく!」


 


 


 私は荷物を抱えてトイレへ直行。


 アイテムボックスへ突っ込む。


 


 戻ったら全員揃ってる。


 


 ……私が最後。


 


 ちょっと恥ずい。


 


 


 ◇◇◇


 


 次はチビ組。


 


 チルドルとジャックは格好良い服コーナーへ一直線。


 


 


「これ……勇者みたい?」


 


「勇者はもう卒業や。好きなん選び」


 


 


 下着、靴下、パジャマ。


 


 キャラクターバッグをキラキラ見つめるチルドル。


 


「欲しいなら買い」


 


 


「ありがとうございます!」


 


 


 その笑顔、反則。


 


 


 ◇◇◇


 


「次、女性陣! 男性は壁向いて待機! 覗いたら殺す」


 


 


 下着売り場。


 


「これ可愛い!」


「こっちは大人っぽい……」


 


 


 キャーキャーと盛り上がる声。


 


 でもどこか、私の顔色を伺っている。


 


 


「値段気にせんでええ。似合うかどうかで選び」


 


 


 少しずつ、声が自然になる。


 


 


 服売り場も高速決済。


 


 本当はもっとゆっくり選ばせたい。


 


 けど、まだ緊張してる。


 


 


 ◇◇◇


 


「一旦トイレで収納!」


 


 


 全員が律儀に従う。


 


 


「ほな飯!」


 


 


 フードコート。


 


 ハンバーガー、ラーメン、パスタ、唐揚げ。


 


 


「これは……肉を挟んだパン?」


 


 


 ボブがハンバーガーを観察。


 


「かぶりつきや!」


 


 


 チルドルはポテトに感動。


 


 レナはクレープに目を輝かせ。


 


 


 イスハパンはコーラの炭酸に驚愕。


 


「口内で爆発している……!」


 


 


「それが文明や」


 


 


 奮発した。


 


 アンナの時はこんな感慨無かったけどな。


 


 


 ◇◇◇


 


 食後、男性陣の服。


 


 ハンスは無難な黒。


 


 ニックは爽やか系。


 


 ボブは渋いジャケット。


 


 


「似合っとるで」


 


 


 少し照れるおっさんズ。


 


 


 最終的に両手いっぱいの荷物。


 


 タクシー三台。


 


 


 ◇◇◇


 


 帰宅。


 


 ダイニングに崩れ落ちるサイエス組。


 


「戦場より疲れた……」


 


 ハンスが呻く。


 


 


「魔物より強敵やったやろ」


 


 


 私はテーブルに携帯を並べる。


 


 一台ずつ初期設定。


 


 指紋登録。


 顔認証。


 連絡先に“容子(まさこ)”“宥子(ひろこ)”を登録。


 


 


「これは緊急連絡手段や。迷子、危険、全部これで呼べ」


 


 


 チルドルが恐る恐る画面をタップ。


 


 光る。


 


 


「……魔道具より凄い」


 


 


「魔法ちゃう、科学や」


 


 


 全員に配布完了。


 


 


 リビングには、新しい服の匂い。


 


 少しだけ、家族らしい空気。


 


 


 ふと、思う。


 


 姉の宥子(ひろこ)がこの光景見たら何て言うやろ。


 


 


「甘やかし過ぎや」


 


 って言いそうやな。


 


 


 でもええ。


 


 鎖より、笑顔。


 


 


 ショッピングモールでの初買物は、


 


 物以上に“普通”を買った日やった。


 


 


 そして明日から――


 


 この携帯が鳴るたびに、


 


 地球とサイエス、


 


 二つの世界が動き出すんやろうな。

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