第74話 耳飾大騒動
新しく仲間になったパンジー。
元幽霊、現ドモヴォーイ(家の精霊)。
そして現在――完全実体化済み。
体力∞の体力馬鹿である。
「顔は綺麗なんやけど、死んでたさかいなぁ」
思わず昔の名残でそう言ってしまうが、今はちゃんと生身や。触れるし、飯も食うし、風呂にも入れる。便利やな精霊。
顔立ちは完全に私の好みだ。
白磁みたいな肌に整った目鼻立ち。儚げなのに、どこか芯が強い。着せ替えマネキンにするなら最適解。
アンナさんもイザベラも美人やから着飾らせるのは楽しい。
ただしイザベラ、お前の色彩感覚はどうにかせぇ。
朝。
キッチンでオムライスを量産しながら、私は思案する。
パンジーは実体化してから食欲旺盛だ。
精霊なのに、やたら腹が減るらしい。
「精霊もカロリー必要なん?」
「動くとお腹が空きます!」
元気よく答える。
体力∞やのに燃費どうなっとんねん。
売り子をぶっ通しでやらせても倒れへんやろうし、掃除も完璧。実体化させたのは大正解やった。
「飯出来たでー!!」
リビングに声を掛けると、ワラワラ集合。
各自トレイを持って席へ。
「合掌、頂きます」
宥子が手を合わせる。
「「「「頂きます」」」」
パンジーもちゃんと両手を合わせる。
「いただきます!」
そして一口。
「……美味しいです!!」
目を輝かせる。
前は幽霊で味覚も曖昧やったらしいが、実体化してからは味がはっきり分かるらしい。
「こんなに美味しい料理、毎日食べていいんですか!?」
「働いたらな」
「はい! 一生働きます!」
ブラック企業の洗脳みたいな流れやめぇ。
パンジーはもりもり食べ、お代わりまで要求した。
体力∞+大食い。
食費が微妙に怖い。
食事が終わった頃、宥子が唐突に言う。
「イザベラな、不幸666やねん」
「朝から不穏な数字出すな」
「バッドステータスえげつない。何とかするアイテム作って」
さらっと無茶ぶり。
「無理やろ!!」
「好きな素材使ってええから」
素材を餌にされると弱い。
「……へいへい」
洗い物はパンジーが担当。
「任せてください!」
超高速で片付けていく。
皿割らないのが偉い。
私はティムカルテットを連れてアトリエへ。
現在幸運値トップは紅白。
平均化出来ればイザベラの不幸も相殺できるかもしれん。
〈運を分けるアイテム作りたい〉
〈概念が無理ゲーやな〉と赤白。
〈そもそも運って削れるん?〉
分かってる。無謀や。
だが不幸666は放置できん。
「巫女の耳飾りでいくか」
私は阿迦留姫命の加護持ちや。
神系装備ならワンチャンある。
素材展開。
黄金の羽根。
魂の護符。
慰霊の願糸。
ピンクの魔石。
楽白ちゃんの糸。
研磨、溶解、塗布、編み込み。
ワウルだけ鈴仕様。
完成。
ステータス確認。
物防25700
魔防31000
スキル:豪運+1000
「違う、そうじゃない」
〈十分やろ〉
「共有が欲しいんや!」
第二段階。
〈わし等の素材混ぜたら?〉と紅白。
〈身体の一部融合や〉
やってみる。
再錬成。
革、羽根、魔石、願糸、精霊糸を融合。
完成。
ステータス表示。
会心+60%
運共有化
バッドステータス無効化
回避+50%
電光石火
バーストストリーム(20連撃)
冥府の癒し手(HPMP全回復/永続)
「……は?」
運共有は成功。
だが副産物が戦争。
「怒られるやつや」
全員分を持ってリビングへ。
パンジーは既に掃除を終えていた。
「お帰りなさいませ!」
精霊万能すぎる。
「出来たで」
宥子に渡す。
数秒沈黙。
「何これ」
「耳飾り」
「兵器やん」
発狂。
アンナは即計算。
「市場価格、白金貨三百枚超」
イザベラは可愛いしか見てない。
パンジーは
「皆様とお揃いですか!? 嬉しいです!」
純粋。
装着。
空気が変わる。
イザベラの不幸666消失。
全員の幸運値が均される。
パンジーの運200も共有対象。
「体力∞+運共有……最強メイドやん」
「売り子無双出来ますね!」
キラキラしている。
「……成功やな」
「成功やけど過剰火力」
こうして。
パンジーは実体化して飯を食い、
家事をこなし、
戦闘も可能なチート精霊となり、
イザベラの呪いも消え、
私たちはまた一段階おかしくなった。
翌朝。
「この耳飾り、商品化出来る?」
宥子が真顔で言う。
「出来るかボケ」
食費と素材費を計算しながら、私は天井を仰いだ。
平穏な日常は、今日も来ない。




